所用で出掛けるついでに移動運用をおこなう、通称"ついでSAT"。今回の目的地は諏訪湖でしたが、以前から、春になったら長野県南信地方の「お魚図鑑穴埋め」を考えていたため、良い機会と思い運用を計画しました。

 

以前と違ってリニア衛星が激減しており、使える衛星は実質 RS-44 か JO-97の2つのみ (以前は週末昼間に使えたFO-29も、日照の関係でこのところは"お休み"期間中)。飛来する時間は午前中か夜に限られているため、本務との関係もあり行程をよく考えないといけませんでした。結果的に、"秘境"とされる大鹿村にRS-44の天頂パスが使えるよう計画し、前日の夜から出発して現地付近で待機することにしました。どうせ行くならもう数箇所出たいので、早朝のRS-44(東パス)で1箇所、すぐに移動して大鹿村へ立ち寄り、ついでに特定局のお魚を埋める運用を狙いました。

 

まず午前6時台のRS-44では阿智村から運用しました。狭いPA駐車場からの運用のためモービルホイップ2本(垂直/水平)を自車の屋根に自在雲台付きのマグネット基台で設置し衛星を迎えます。

 

※2本のホイップはそれぞれデュプレクサを介して145M/435Mを分離した後、バンドごとに同軸切替器を経由してリグに繋いであり、up/dn に対する垂直・水平偏波の組み合わせが自由に切り替えられるようにしてあります。感度のそれほど良くないモビホ運用では、偏波の変化への対応もかなり重要な要素です。

 

はたして、RS-44が上がってきた時は垂直が有利に思えましたが、途中から水平の方がよく受信できるようになりました。ここはSSBのお魚対応が主だったため、信号強度は了解度の向上に極めて重要で、デュアル受けにしておいて正解でした。しかし、パスの中程でなんと、すぐ隣に大型トラックがドーンと停まってしまい、以後受信が厳しくなってしまいました。場所を変えたかったのですが、低仰角のパスは時間も短く、幸いloopは取れていたので移動の時間が勿体ないと考え、そのまま運用しました。結果、早朝にもかかわらず ssb 3局、cw は9局と交信することができましたが、(パスの関係で事前に予想はしていましたが)通称「お魚図鑑」からの"消滅"は達成できませんでした。

 

さて、次のパスまでに急いで大鹿村へ移動しなければなりません。次は万全を期すため、三脚を立ててビームアンテナを設置するつもりだったのであまり余裕もなく、PAで用足しを済ませ早々に出発しました。(PAで運用したのも移動を素早くするための小さな工夫です。) 予定した移動時間は50分でしたが、ほぼ予定通りに現地へ到着、RS-44が上がってくるまでに約20分の余裕がありました。手早く三脚を設置し、すばやく設置できる145M用HB9CV(折りたたみ式)と435M用SQスタックを三脚に載せ、2本の同軸ケーブルを引き回したところでまだ5分ほどの余裕があったので、阿智村の運用結果(いわゆる答え合わせ)と大鹿村の運用予告を急いでSNSに送信し、パスを迎えました。

 

 

 

大鹿村はとにかく"秘境"で、谷底の中央部にある少し開けたエリアでも、15-20度くらいは上がらないと衛星がみえません。実際、なかなかloopが取れませんでしたが、いざ見えるようになるとビームのお陰で強力なdnが聞こえるようになりました。CWから始め、早々に"お魚"ターゲット局をクリアし、11qしたところでCQが空ぶったのでSSBへチェンジ。10qしたところで途切れたため、別の周波数で運用している"お魚"ターゲット局を呼びに行き無事交信。元に戻って再びssbで3q、cwに戻って6qしたところでloopが取れなくなりました。ミッションは無事クリアしましたが、せっかくなのでそのあとすぐに飛来したJO-97でも運用し、4q積み増しができました。"秘境"の割には結構できた方ではないかと思います。

 

大鹿村の道の駅から南方向は、こんな景色でした。東西は崖のようにそそり立つ山の稜線が仰角20度以上ある感じでいかにも"秘境"なロケーションでした。

 

 

当初予定はここまででしたが、すぐ隣の中川村が"お魚"なターゲット局がRS-44の次パスでも出られそう、との情報を得たため、"通りすがり運用"を決行。事前のロケハンはしていませんでしたが、自走しているうちに西が開けた高台の適地をみつけ、モビホ2本で運用しました。ターゲット局はAZ270度より南じゃないと衛星が見えないということでパスの後半ギリギリ、低仰角でどうなるかと思いましたがなんとか聞こえ、無事にクリア。cwのみ、トータル10qの出来高でした。

 

途中で立ち寄った公園では桜が満開でした。

 

 

 

運用自体はほぼ予定通りこなすことができましたが、ちょっとした事故もありました。早朝の運用に備え、前夜半に暗闇で電源周りの接続を確認しようとしていたときに何かの接続を間違えたようで、バッテリーを1台ショートさせ"お釈迦"にしてしまいました。はじめはそれに気づかず、リグに繋いでも電源が入らないため、ヒューズ切れ?もしやリグを壊したか?と焦りまくりましたが、電圧計をみてみたら、負荷をかけると電圧が大幅にドロップすることがわかり、バッテリー側の問題とわかりました。リグが壊れたら運用もなにもなくなってしまうので本当に焦りましたが、バッテリ-は幸い2個持参していたため、問題の無い方でなんとか運用をすることができました。

 

接続ミスという、なんとも情けない理由でバッテリーをお釈迦にしたのは残念でしたが、具体的な防止策はあまり思い浮かびません。しっかり「見て」確認、更に、コネクタの色分けをするなどしてミスを防止する、くらいのことでしょうか。ともあれ、電源のとりまわしはもう少し改善が必要と感じました。

 

このあとは"本務"の諏訪湖へ下道で向かい、正午過ぎに現地へ到着。14時台のAO-73で"お魚"ターゲット局を呼んで、激しいQSBの中なんとか交信、"消滅"を達成。気分も良くなったところで、諏訪大社にお詣りし、温泉に浸かって前日からの疲れを流しました。

 

 

 

夕方、帰宅の途についたところで、大手移動局が私の"お魚"ポイントから運用予定との情報を得て急遽、途上の運用ポイントを設定。SAからモビホで迎撃し無事ゲット。自分の運用予定が終わっても、急場に備え、リグのセッティングは帰宅するまでバラすべきではない、という経験則が活きました。出発から帰宅までほぼ24時間、お魚サービスとお魚ゲットで"ついで"の割にはとても充実した1日でした。