日大グループとJAMSATが協力し、JARLが免許人となっていたアマチュア衛星 FO-99 NEXUS が、2023年11月9日午前7時台のパスをもって運用終了となりました。高度が200kmを切ったため、バッテリーモードへの移行コマンドが管制を担う地上局から送信されたとのことです。当日の夕方19時台のパスではとても強力なビーコン信号が聞こえてきましたが、その直後に送信が停止したようです。SPACE-TRACK.ORG ではまだdecayの表示にはなっていませんが、降下のペースから推測すれば、いまごろ大気圏に再突入し燃え尽きたと想像されます。

 

NEXUS衛星は 2019年1月18日に内之浦のJAXA宇宙空間観測所からイプシロンロケット4号機で他のいくつかの衛星と共に打ち上げられました。その中には後にFO-98が付与されるOrigamiSat-1(2022年4月29日頃に大気圏再突入したと推定)も含まれていました。2つのアマチュア衛星が日本のロケット発射台から打ち上がったのは久し振りのことで、ビーコン信号(BC)等がアマチュア無線のバンドで受信できると聞いて、2018年9月にアマチュア無線を再開したばかりの私は大変興味が湧きました。打ち上げ直後に初めて日本上空を通るパスの時はCWが受信できるハンディ機(TH-F7)を手に持ち、空全体がみえる畑の真ん中に行って、少し長めのホイップアンテナを振り回してBCの受信を試み、元気な音が聞こえてきたときはとても感激したのを憶えています。当時の受信はこんな感じ(2019年2月4日夜のパス, wavファイル)でした。

 

その後1年間は日大グループのミッションが行われ、2020年3月にはフルサクセスを達成したことが報告されました。その間、部分的な中継器の開放やデジトーカ・SSTVの送出なども行われ、何度も受信をしました。その後、管制が日大からJAMSATへ移管され、毎週末に中継器が運用されるようになりました。また、日曜日の夜のパスはデジトーカーまたはSSTVの送出というパターンで受信ファンへのサービスも継続されました。私が受信したSSTV画像の一部を受信記録としてここに掲示しておきます。

 


 

私が衛星通信、つまり中継器へ向けて「送信」もするようになったのは2021年3月以後のことですので、初めてFO-99の中継器にアクセスしたのはその3月27日のことでした。ログによれば、衛星常連の2局とCWモードにて交信に成功しています。その後も多数の局と交信を重ねましたが、2023年11月8日の朝のパスで2局とCWモードにて交信したのが最後となりました。この2年半の間に、のべ471QSOを行うことが出来ました。

 

いつからかはっきりしませんが、この衛星は段々と回転が速くなっていったようで、中継器やBC,SSTVなどのシグナルはかなり強い周期的変動(QSB)を伴っていました。ピークではかなり強いシグナルを受信できましたが、落ち込んだときはまったくといっていいほどレベルが落ち、難儀したこともありました。弱小設備しかもたない当局では、SSTVの画像はいつも縞模様やカラーノイズが入ったものになってしまいましたが、それでも、衛星からの電波を直接受信して復調するという作業は毎週のように楽しむことができました。また、朝夕の他の衛星が来ない空白の時間を埋めてくれる貴重な衛星でもありました。

 

わずか4年10ヶ月で軌道高度低下のため運用終了に至ってしまったのは大変残念でしたが、ある意味では私を衛星通信に誘ってくれた、とても思い出深い衛星でした。運用に携わられた日大グループ、JAMSATの関係者に感謝致します。