ちょっとした"事件"があったので、これを機会に最近のリニア衛星の状況をまとめておきたいと思います。

 

昨2022年の夏~2023年冬頃は使用可能なリニア衛星が多数あり、アマチュア・サテライト通信界も大盛況でしたが、その後、櫛の歯が欠けるように次々と使えない衛星が出てきて、先月中旬に大気圏突入した EO-88 無きあとは平日に通常使える衛星が とうとう RS-44 と JO-97 の二つだけ、という状況になってしまいました。有名サテライターのJO2ASQ氏や私自身の記録を参考にすると、こんな状況です。

 

【2022年12月以降に使えなくなった衛星】

・CAS-4A  (元々間欠動作→2022/12/31以後、ほぼ終日停止

・XW-2C   (2023/2/中旬以後 超間欠動作)

・HO-119  (2023/3/15頃  大気圏再突入で消滅)

・FO-118  (2023/4/8 頃 中継器停止・故障?)

・XW-2A  (2023/4/22 大気圏再突入で消滅)

・CAS-4B (2023/5/26頃 中継器停止・以後気まぐれに起動するもほぼ終日停止

・EO-88   (元々夜間のみ動作 → 2023/7/19 大気圏再突入で消滅)

 

【使える衛星】 

・RS-44  (高度が高く、遠距離通信が可能なLEO)

・JO-97(午前パスは途中で弱くなる)

・FO-99(土・日・祝日のみ, 衛星の回転?でQSB強くパス時間も短い)

・FO-29(土・日の管制局がONするパス限定、動けば比較的安定した動作)

 

この夏の各移動局遠征も、使えるパスが少なく、"早回り" ができない状況で計画には苦労されたことと思います。8/11-13はこれらの4つの衛星がほぼフルに使えたため助かりましたが、14以後は平日ということで実質2つの衛星しか使えず、お目当ての移動局を呼ぶ方もかなり必死にならざるを得ない状況でした。

 

一方、8/1頃から、FO-29がスケジュールされていないタイミングでonになっていることがある、という報告が相次ぎ、動作に注目していましたが、どうやら日照の関係で充分な電力が供給されているときは、地上のコマンドに寄らず"勝手に" on になっているようです。結果的に、早朝のパスの一部や日中の本来 on 予定では無いパスも一部が on の状態で上ってくる形になり、動作していることをいち早く確認しては、移動各局が"お試し" あるいは "オマケ" の運用サービスをする、という状況になっています。

 

そんな中、8/13の深夜にRS-44が突然停止する、という"事件"がありました。ちょうど日本上空を通るパスが3回あり、1回目の東寄り低高度のパスは問題無かったのですが、2回目の天頂を通る好パスで、BCもループのダウンリンクも全く聞こえない、という報告がリアルタイムに伝わり、衝撃が走りました。過去にほとんど停止したことが無く、安定した衛星だったので、この突然の停止には私も驚かされ、また、稀少なリニア衛星が失われてしまうのかと、暗澹たる気持ちになりました。

 

AMSATのステータス 報告ページには、世界に先駆けて私が1番に "Not Heard" を報告したところ、その後続々と同様の報告が相次ぎました。3回目のパスも丹念に受信を試みましたがやはり無音で、これは一大事であると感じました。

 

その後もパスのたびに受信を試みましたが無音のまま、いよいよダメかと思った3日目、たまたま受信できた CAS-4B の報告を上げようとこのページを開いたら、なんとRS-44に "Heard" の報告が! その後、X(Twitter)でも同様の報告が上がり、無事に復活したことを知りました。

(ここ数日のSTATUS の様子です↓)

 

このときちょうど管制局の上を通り、地上からの on に成功したものと推察されますが、この3日間、これからどうやって "追っかけ" や "移動SAT運用" をすればいいのかと頭が痛い状況だったので、その後の日本上空パスでビーコンを確認したときは本当にホッとしました。

 

こんな状況ですが、週末限定とはいえ、日本の衛星が2つ頑張ってくれているのは嬉しい限りです。

 

FO-29 は打ち上げから27年、今日 8/17 が「生誕祭」の日と聞いています。現在も稼働中のアマチュア・リニア衛星としては、AO-07 の次に古参の衛星ではないかと思いますが、これからもできるだけ頑張ってくれたらいいなと思います。

 

FO-99 は、私がこの衛星界隈に興味をもつきっかけとなった衛星の一つなのでいろいろと勝手な思い入れもあるのですが、実はだんだん高度が下がってきて、あと半年くらいしたら大気圏に再突入してしまうかもしれないようです。姿勢制御ができない仕様のため衛星が回転し、それに伴って激しいQSBがあり、なかなか"じゃじゃ馬"な衛星ですが、使える間はそれも含めて楽しませて貰おうと思っています。