前回に続き、今回はリアルグラウンドの設定で、CPの配置を変えたらどうなるか調べてみます。こんどは、給電点を1mに設定し、CPの「形」を変えてみます。まず、設定が分かりやすいよう、アンテナ全体を0m面から2m分持ち上げました。その他のパラメータは前回と同一です。

 

[CP: 5m x 4本, L=45.7μH, 地上高2m]

 

この状態で地上高0mとして計算したところ、前回と同じ値、R=21.52, -8.73, SWR=2.41 が得られました。そこでつぎに、カウンターポイズを垂れ下がらせたような状態を再現してみます。

 

[CP: 5m x 4本, L=45.7μH, 地上高2m, CP垂れ下げ]

 

1本のCPの全長は5mでかわらないように設定しましたので、上から見たフットプリントは折り曲げた分だけ少し小さくなります。この状態で計算すると、R=27.0, X=66.8, SWR=5.52, Ga=-6.6 となりました。正のリアクタンス分が大幅に増え、同調点が低い周波数にずれたようです。この傾向は、(1)で紹介した実験とは逆の方向です。実験では、ほとんどのセッティングで元の同調周波数より高い周波数にズレていました。ということは、CPの変化の方向性が現実と違っているか、シミュレーション上の精度の問題がありそうです。いろいろやってみると、地面とエレメントを近づけ過ぎる(<0.1m)と、相互作用を過大評価してしまうようでした。そこで、地面を這わせる高さを0.1mにして再度計算してみます。

 

[CP: 5m x 4本, L=45.7μH, 地上高2m, CP垂れ下げ2]

 

この結果、R=25.6, X=-32.54, SWR=2.96 という値が得られました。横にまっすぐ張った時に比べて負のリアクタンス分が大きくなり、高い周波数に同調することがわかります。実験の傾向はこれで再現できそうです。

 

このときの同調周波数は 7.10MHz 付近で、 R=25.8, X=-0.1, SWR=1.93 まで追い込むことができました。そこで同調周波数を7.05MHzにするためエレメント長を調整したところ、全長を 1.41m → 1.433m とすることでR=25.7, X=-0.4, SWR=1.95 になりました。2.3cm の延長なら、市販のアンテナの調整シロとして問題なさそうです。ただ、何らかの理由で以前にエレメントをカットしてしまっていると、これだけ延ばすのは難しいかもしれません。このときGa は -7.5 dBi となっていました。

 

ではここから更に、CPの本数を減らしてみます。4本あったものを2本に減らしました。周波数は再び 7.05MHz です。

 

[CP: 5m x 2本, L=45.7μH, 地上高2m, CP垂れ下げ2]

 

すると予想通り、R=25.6 はほぼ動きませんが、X=-123.1, SWR=13.3 と大幅に"短い"アンテナになり、同調周波数は 7.24MHz 付近で SWR=1.88 となりました。

 

それでは最後にCPを1本にして、CPの長さを調整して7.05MHzに同調させてみます。

 

[CP: 約10m x 1本, L=45.7μH, 地上高2m, CP垂れ下げ2]

 

CPの長さは全体で 9.53m で同調する結果になりました。ここでおもしろいことがでてきました。放射パターンをみると、CPの方向にビームが出ているのです。

 

 

どうやら、CPが実質的にDPの片側エレメントのように作用しているようです。本当にこんなパターンになるのなら面白いと思いましたが、これは実験してみないとなんともわかりません。結果的に、Gaの値は -3.66dBi となかなかの値になりましたが、超短縮アンテナに長いCPを付けて運用する場合はCPを張る方向にも気をつけた方がいいのかもしれません。それともう一つ。この形、何か最近みたような・・あっ、この前解析したVCHアンテナ! 上と下の配置の比率こそ違いますが、やってることはほぼ同じ。つまり、垂直部を減らして水平部を増やすと、結構強いビームパターンが出る・・?これはちょっと実験してみたくなりました。(長さ 10m のCPを4方向いずれも張れるような環境を探さないといけませんが・・・hi)

 

以上をまとめるとこんな感じになるでしょうか。

 

・今回解析した結果では、CPは地面と相互作用しながら「アンテナの一部」として機能していることがわかりました。CPの長さは波長に対してそれほど敏感では無い、とよく言われますが、それはあながち間違いでは無いものの、同調周波数にはそれなりに影響すると考えられます。特に、地面との高さの関係は割と重要と思われます。

 

・CPに必要な本数や長さ、張る方向などは、もともとそのアンテナがどういう環境を想定してつくられているかによるようです。メーカーが推奨する方法、あるいはオプション品として販売しているCPの構造などを参考にすると良い結果が得られやすいのではないかと思います。

 

・今回はインピーダンス・マッチングについては無視し、同調(リアクタンス分をゼロにする)だけで解析してきました。しかし市販のアンテナには、放射抵抗Rを想定したCマッチング回路として給電部にコンデンサが並列にとりつけてある可能性が高く、そのため、CPを含めたアンテナ全体の放射抵抗がその想定より大きくズレた値になっているとマッチング回路で補正仕切れず、SWRが思ったように下がらない、ということが起こり得るようです。そのような場合は、CPの長さや張り方を調整し、所定の放射抵抗に近づくよう再度調整する必要があるでしょう。

 

最後にお断りですが、この解析は、素人考えで、かつ、特定のシミュレータ(MMANA-GAL)のみを用いて行ったものであり、結果についてはあくまでも参考として観て頂ければ幸いです。