SNSをみていると,主としてビギナーや若い方から「○○をやったら,無線で叱られた」とか「△△は□□するものだと習ったが,違うと言われた」とかいった声がよく聴かれます.長年の慣習で,OMと呼ばれる方々が守ろうとしているしきたりや暗黙のルールであったり,国際的には全く違う扱いなのに日本だけで独自に解釈された用語であったり,その対立の要因は様々ですが,あまりにも繰り返し似たような疑問や嘆きが繰り返されるので,どんなことが問題となりやすいのか,一度整理しておこうと思い立ちました.

 

ここでは,私が目にしたことのある「問題」をとりあえず並べてみたいと思います.ただ「並べる」だけであって,個々の「問題」に"正解"を与えるものではありません.あくまでも,こういうことがよく問題にされやすいから気をつけて,というような意味合いです.

 

・「正しい」フォネティック

ITU/無線局運用規則のフォネティック以外のフォネティックを使用することの是非.J: ジャパン をはじめとして,H:ハワイ,I:イタリー,N:ナンシー, Q:クイーン など.また,発音の変化(F:ふぉっくすろっと, J:じゅりえいと,P:ぽーちかる,Q:きゅーべっく  など)に対しても様々な意見がみられる.

 

・QRP 運用

QRPの定義(現代では一般に5W以下とされるが1W以下と定義する方も),QRP運用そのものを批判する方の存在,コールサインの後に /QRP を付けることの是非,などがしばしば議論の対象となる.

 

・海上移動の際の /MM 標識

/MM (Maritime Mobile) は「公海上」でしか使うべきでない,という一部意見が存在し,運用中にクレームを受ける,といった事案の存在.

 

・"不適切"な用語・いいまわし

呼び出し周波数を使用する際の「メイン借ります」,自局コールサインアナウンスの際の「こちらのコールは・・」といった"不必要な" 発話に対する問題意識.RSレポートを送出する際に「ごじゅうきゅう(59)」あるいは「ごときゅう(5と9)」と表現することの是非,交信終了時に送出する 88 (エイティ・エイト)は誰が誰に対して使うべきか(国際的な慣習と日本の古い慣習との差違)といった問題.他に,「漢字解釈」「よろしくどうぞ」「ごサービス」「おとりあげ」「ログイン」といった出所不明の用語,本来の意味とは離れた意味で用いられるQ符号(QRAなど)についての問題意識もしばしば登場する.

(2023.8.6追記) V/UHF帯のFMでの交信において、CQ運用局がその運用を終わる時に「(この周波数を)オープンします」というのは適切か、といった話題。「(運用を)クローズします」が正しいという意見、オープンは「空ける」の意味で使われている習慣的な用法で問題無いとする意見、どちらでも良い・どちらも言うべきで無い・どうでもよい、など諸説あり。

 

・各バンドに存在する"暗黙の" 慣習

50MHz帯の運用実態(SSB帯域でもCW交信が普通に行われる・いわゆる"DXウインドウ"の存在,など),3.5MHz帯におけるSSBの"3kHzステップ"の是非など.JARLの推奨するデジタルモードの呼び出し周波数をそれ以外の用途で使って良いか,なども含まれる.最近話題の IC-905 を巡っては,SHFバンドに馴染みの無い"新参者"が入ってくることへの懸念(拒否感)を顕わにする既存局がいる,という話題も.


・呼び出し周波数の使用方法

通常FM交信が行われる帯域に指定されている「呼び出し周波数」において,FM以外のモードや他バンドへのQSYを伴うCQ呼び出しを行うことの是非.また,法的には明示的に許可されているF2A(トーン信号によるモールス信号)による呼び出し等の是非.また,コンテストの際に呼び出し周波数で "CQ コンテスト" を出す是非などもしばしば議論となる.さらに「CQ ローカル」といった謎呼び出しの"ローカル"の範囲や意味は特に初心者には理解し難いといった意見がある.

 

・QSLカードの発行

近年増加しているJARL非会員等の「ノーカード」QSO,ビューローの転送遅れ問題,電子QSLの活用,などの問題.電子QSLの交換が可能にもかかわらず紙QSLを無条件で発行する,あるいは相手に要求する,といった問題も含む.

 

・パイルの際の運用

CQを出して複数局に同時に呼ばれた際,「A局さん,B局さん,C局さん取れました.順番にお呼びしますのでご待機下さい.A局さんどうぞ」などとアナウンスして相手局を指名し「待たせる」行為など.逆に,パイルでピックアップされた際に,相手局に運用地やオペレータ名などをしつこく聞き出す行為など.

 

・コンテスト時の交信方法

いわゆる「コンテスター」と呼ばれるコンテストに熟練した運用者が好む速やかで冗長性を排した交信方法に対する,カジュアル参加者・初心者の意識とのギャップ.

 

・無線従事者資格に関わる話題

いわゆる「マウント取り」に利用されやすい話題.上級資格所持者が初級資格所持者やビギナーを「資格」の点から蔑んだり馬鹿にしたりする,資格を取得した時期により試験内容が異なることをネタとして,知識レベルや実力について"相応でない"といった非難をする,初級資格では出せない空中線電力やバンドの自慢をしたり,無理に上級資格を取ることを勧めたりする,など.電気通信術の実技試験が廃止されて以後の資格取得者に対して電信による交信をしない(できない)ことを非難する,上級資格を取得しようと努力している人に対して侮辱的な発言をする,などもこの話題に含まれる.(2023.03.05 追記)

 

まだまだあると思いますが,見かけたら随時追記していきたいと思います.また,いずれはこれらの問題に対するSNS上の反応・意見等もまとめていけたらと思って居ます.