製作して1年くらい使用している、Moxon型の2エレ八木の詳細を紹介します。構造は次の図のようになっています。正確に言うと、145M帯がMoxonアンテナ、435M帯は普通の2エレ八木アンテナとなります。435M帯の輻射エレメントは直接給電されてはおらず、145M帯の給電エレメント(輻射器)に寄生する、いわゆるパラスティックエレメントです。

 

エレメントの配置(概観)

このアンテナを145MHzで解析すると、つぎのようなビームパターンと特性になります。解析には "MMANA" という著名なソフトウエアを使用しています。

 

145M帯の特性

 

一方、435MHzで解析すると、次の図のようになります。

 

435M帯の特性

 

いずれも水平に置いたときの、水平面と垂直面のパターンを表しています。特に垂直面のパターンが、ビーム方向へ半円状に出ていることがわかります。したがって、このパターンを衛星の軌道面に合わせてやると、ほぼ地平線を上がってきたときから下りて去っていくときまでを満遍なくカバーできると期待できます。ほとんど天頂を通る、いわゆる"天頂パス"のときは、真上に向けて、軌道面に対し垂直に設置してやれば良いわけです。この場合、偏波面は考慮していませんが、多くの場合それで上手くいきます。

 

435M帯の追加のエレメントは、導波器として設置するか、反射器として設置するか、選択の余地があります。MMANAによる解析の結果、反射器として設置した方が、FB比が高く、サイドロープも小さくなることがわかったので、私は反射器として設置しました。この設置は、145Mの特性にはほとんど影響を与えないようです。

 

なぜ普通の八木型ではなくMoxon型を選択したのか、という点については以下のような理由があります。

・Moxonにすることで、インピーダンスを50Ωに近づけることが容易となる。

・折り曲げることにより横幅が短縮でき、狭い場所での設置が楽になる。

・ビームパターンがより半円型に近づく。

・サイドのゲインが普通の2エレより高い。

これらのことは、折曲げの利点を除き、すべてMMANAによる解析により判明したことです。実機による完全な実証には至っていませんが、ビームパターンなどについては、定性的に充分満足のいく結果を得ています。