メシア的感動のアンビリバボー傑作選 “黒いポール・ポッツ” ニール・E・ボイドの奇跡 第4話 | メシアのモノローグ~集え!ワールド・ルネッサンスの光の使徒たち~

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混迷をくり返す世界を救うべく、ひとりでも多くの日本人が現代に生を受けた意味に気づかなければなりません。世界を救うのはあなたの覚醒にかかっているのです……。

 ある日の教室でのこと。授業が終わると先生がニールをはじめとする生徒たちに告げた。

 

 
 「はーい、みんな静かに。今度の定例オペラ会の配役を発表する」

 

 
 目を輝かせて小さくガッツポーズするニール。成績からいってニールに主役級の役が与えられるのは当然だったからだ。

 

 
 しかし、先生の口から出た名前は予想とはまったくちがうものだった。

 

 
 「主役はクリストファー、相手役アドリアーナ」

 

 
 席を立ち上がって狂喜乱舞するニールの周りの生徒たち。ほかの生徒たちが重要な役を与えられる中、ニールに割り当てられたのはほとんどの出番のない脇役であった。

 

 
 ニールは廊下で先生に問い詰める。

 

 
 「どうして主役が僕じゃないんですか?」

 

 
 先生はきっぱりといった。

 

 
 「ニール、この演目の主役は白人だからだ」

 

 
 絶句するニール……。

 

 
 ヨーロッパの文化であるオペラの演目は重要な役は白人ばかり。どれだけ実力があっても、黒人のニールに演じられる役はほとんどなかったのだ。

 

 
 「クソッ。ここまできたのに。もうおしまいだ……」

 

 
 肩を落として落ち込むニールに声をかける人物がいた。

 

 
 「バーカ。ったく、なにいってんの?まだはじまってもないでしょ?」

 

 
 白人の恋人のヘザーだった。

 

 
 「ヘザー……」

 

 
 「歌は目で聴くものじゃないの。そうでしょ?」

 

 
 ヘザーとは音楽のサークルで知り合った。黒人であることなど気にせず、ニールの才能を純粋に認めてくれる女性であった。

 

 
 ヘザーの励ましもあり、ニールはそれからも必死に歌を磨き続けていった。が、そんな矢先のことだった。

 

 
 レッスン中、ニールは喉になにか違和感を覚えたのだ。無理がたたって喉に声帯ポリープができていたのである。

 

 
 「もううたえないんですか?」

 

 
 深刻な様子のニールの質問に、担当医師は軽く微笑んでいった。

 

 
 「手術をしなくても、半年くらいうたうのをやめればすぐに治りますよ」

 

 
 「そんな……半年も……」

 

 
 医師は気軽にいったつもりだったが、それはニールにとっては致命的な宣告だった。なぜなら音大の留年を意味するからだ。ニールにその学費を払える余裕などなかった……。

 

 

 

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