私はずっと以前、とある将棋グルッぽで次のような質問をしたことがあります。
「東大将棋のよちよち歩きレベルにも100回挑んで100回とも手も足も出ません。勝つためになにかコツがあるんでしょうか?」
すると私のこの質問に━━
「入門書を1冊ボロボロになるまで読むといいですよ」
「プロ棋士の棋譜を並べて技を真似るとか」
「詰将棋と棋譜並べをやっていけば強くなれると思いますよ」
━━といったアドバイスをしてくれる人が30人ほどあらわれました。
しかし、彼らの中に東大将棋のよちよち歩きレベルに勝てる人は何人くらいいるのでしょうか?将棋がそこそこ強くなってきた今思い返すと、このような疑問が湧いてくるのです。
東大将棋のよちよち歩きレベルとは、名前こそ“よちよち歩き”ではあるものの、駒の動かし方と初歩的な戦術を覚えたくらいでは勝つことなど不可能なほど強いのです。そのため今思うと、私自身かなりマヌケな質問をしていたようです。
「東大将棋のよちよち歩きレベルに勝てるようになるにはなにかコツがあるんでしょうか?」
これはたとえるならば左ジャブと右ストレートしかボクシングの知識がない人が、『4回戦ボーイに勝ちたいんですけどなにかコツがあるんでしょうか?』と訊いているようなものです(笑)
4回戦ボーイとはいえ、プロボクサーはプロボクサーです。素人がちょっとコツを覚えたくらいで勝てるわけありません。かつての私はそんなことすらわからない次元だったのです。
しかし、そんな私の質問のマヌケさに気づけた人がひとりもいず、30人ほどの人たちが親切に真面目なアドバイスをしたのです。
しかし、その親切で真面目なアドバイスのほとんどが、単なる知ったかぶりだったらしいことがようやくわかってきました。
東大将棋のよちよち歩きレベルは、ちょっとコツを覚えたくらいでは勝つことなど不可能です。それだというのに『コツがあるんでしょうか?』と質問した私に『詰将棋をやれ』だの『入門書を読め』だのといったアドバイスをする人がたくさんあらわれました。
もしも私の質問が『将棋が上達するにはなにをすればいいでしょうか?』といったものだったならば、『入門書を読め』『棋譜並べをしろ』といったアドバイスでも一応合格といえるでしょう。しかし私の質問はメチャクチャ強い東大将棋のよちよち歩きレベルに勝てるようになる方法なのです。くり返すように、これで私にアドバイスをした人たちがただの知ったかぶりだったらしいことが判明しました。
私にアドバイスをした30人ほどの人たち。彼らの中に東大将棋のよちよち歩きレベルに勝てる人は、おそらく5人もいないことでしょう。