セイシちゃんの両親をどうやって見つけ出せばいいのか?ハンキャスターを中心にスタッフルームで緊急ミーティングが開かれていた。
そのとき、ハンキャスターがルーム内の異変に気づく。
「あれ、タイディレクターがまだきてないみたいだけど?」
実はまだ状況を知らないスタッフも存在していたのだ。
と、そのとき、カメラマンの男性が次のような案を出した。
「そうだ!あの手紙を公開しましょうよ。番組で呼びかければ情報が得られるかもしれない」
なるほどと感じる案ではあったが、ハンキャスターは反対をした。彼女はいう。
「実の両親が広場の断橋にこなかった可能性があるからです。10年がたったんです。様々な事情があったかもしれませんし、この手紙のことさえもう忘れてしまいたいのかもしれません。それなのにテレビで放送したら相手を傷つけてしまいます」
まずは両親がきていたことを確認する必要があったというわけなのだ。
「そもそもハンさんは見なかったのかい?」
スタッフの問いかけにハンキャスターは答える。
「人の記憶ってあいまいなのよね。思い出せないわ。私たちが到着したのは午後の1時頃だったし……」
カメラマンの男性がいう。
「念のため俺が撮影した映像を全部見たけど、それらしき人は……」
と、そのとき、ひとりの女性がスタッフルームに入ってきた。それに気づいたカメラマンの男性がいう。
「お、今頃やってきやがった」
遅れてきたのは女性ディレクターのタイ・ヒョウカン。彼女は疲れた様子で椅子に腰を下ろす。
「どこで油売ってたんだ?」
「ちゃんと働いてましたよ」
そんなタイディレクターにハンキャスターがいう。
「こっちはたいへんだったのよ、いったいなにやってたの?」
「撮影ですよ。街行くカップに最近の恋愛事情を聞きまくってたんですけど、おもしろい話もロマンティックなエピソードもなにもなし……」そしてタイディレクターはカバンの中の1本のビデオテープを取り出し、ほかのスタッフに向かっていった。「ねえ、このテープ、もう消去しちゃっていいわ」
スタッフがタイディレクターからテープを受け取り、ゴミ箱に向かって歩を進め出す。その様子を見終えてハンキャスターが口を開いた。
「……ハァ、続けましょうか?」
「あの場所ならって期待してたのに……」
タイディレクターのこの言葉がひっかかったハンキャスターはタイディレクターにたずねる。
「え?あなた、どこで撮影してたの?」
「断橋からはじめて繁華街のほうへ」
断橋━━この言葉にスタッフ一同が驚愕する。
「いつから!?断橋でいつから撮影してたの!?」
ハンキャスターの問いにタイディレクターが答える。
「午前中ですけど」
タイディレクターに『消去していい』と渡されたテープをゴミ箱に捨てようとするスタッフをハンキャスターが大声で止める。
「ちょっと待った!!」