『あんなにおもしろい番組だったのに、まったくなんで終わってしまったんだろう……』とため息をつきながら思い出してしまうテレビ番組が、誰もがひとつかふたつはあると思う。私にもなぜ終わってしまったのか謎でならないテレビ番組がふたつほどある。
まずは日本テレビで放送されていた『進め!電波少年』だ。
私の10代はもはや電波少年とともにあったといってもよく、毎週土曜の夜に電波少年を見るために1週間を必死に生きていたといっても過言ではない。そのくらい電波少年は当時の私の最大の娯楽のひとつだったのである。
そんな電波少年があるとき、深夜からゴールデンに移行した。
『ついに世間も電波少年のおもしろさを理解したようだな』と微笑ましい気持ちになったのも束の間、ゴールデンに移行してから間もなく電波少年は最終回をむかえてしまったのだ。
『電波少年を10年間、応援ありがとうございました』と涙ぐみながらいう松本明子の姿がこのうえなく切なかった。
ところで、なぜ電波少年は終わってしまったのか?理由は視聴率があまりにも悪すぎるからだ。
では、なぜ視聴率があまりに悪かったのか?理由は番組があまりにつまらなかったからだろう。
しかし『ちょっと待ってくれ』といいたい。電波少年のどこがつまらなかったというのか?
当時の電波少年のコーナーは、たしか女の子のアイドルを太らせる日本ポッチャリ党、それから自分で寿司のねたを海で釣って寿司を食べなければならないというものと、ホームレスのおじさんを社長に育て上げるというものだったと記憶している。
どのコーナーもこのうえなくくだらなくておもしろく、あるときは感動もあり、毎週ぜったいに見落とすことができない傑作番組だった。それだいうのに、なぜ、なぜ電波少年は終わってしまったのだろうか……?
理由は、あまりに高度なくだらない笑いのセンスに、大衆の脳が追いつくことができなかったためである。そのために視聴率が伸びず、最終回をむかえざるをえなくなってしまったのだ。
そういえば最終回には、番組の大ファンという松任谷由美が駆けつけていた。彼女は電波少年の高度なくだらない笑いのセンスを理解できていたのである。
松任谷由美の存在が、当惑を極めていた私の頭に濃厚な安堵を与えてくれたものだった。
なぜか終わってしまった超おもしろ番組━━ふたつ目はテレビ朝日の深夜に放送されていた『虎ノ門』である。
厳密には『虎ノ門』の朝まで生どっちのコーナーを目当てに見ていたのだが、朝まで生どっちのコーナーがやがて消えてなくなると同時に、私の胸は莫大な疑念に支配されるようになっていった。
もはや『なぜ朝まで生どっちが終わってしまったのか?』どころの騒ぎではない。『なぜ朝まで生どっちがひとつの番組として独立してゴールデンで放送されないのか?』である。
朝まで生どっちも電波少年と同様にくだらない笑いであり、私の笑いのつぼをこれでもかというほどパーフェクトなまでに押しまくるものだった。
そんな夢のようなコーナーがなぜひとつの番組として独立せず、さらにゴールデンで放送されないのか?私は延々と延々と当惑の宇宙を彷徨い続けるだけだった。
おそらく、これからも電波少年や『虎ノ門』的な雰囲気のバラエティー番組ははじまると思う。
そのときは全国の視聴者たちよ。ぜひともくだらない笑いを理解できるだけの高度な知能とセンスを獲得し、番組が終わらないように努力してもらいたい。