北海道新聞デジタル ニュースサイトに乗っている記事の抜粋ですが

 

推し活熱く 駅に応援広告、観光名所ライトアップ ルーツは韓国<デジタル発>

 

2023.12.27 16:00 北海道新聞デジタル

 

アイドルやアニメキャラなどを熱心に応援する「推し活」。

ライブに行ったり、仲間同士で音楽や映像を楽んだりしむといった

活動だけではありません。

最近、目立つのは、駅構内などの目立つ場所に

「推し」を応援する広告を出したり、

「推し」をイメージさせる色で建物をライトアップするなど、

推しへの思いを形にして広くPRすることです。

こうした活動に込められた熱い思いを探りました。(報道センター 光嶋るい)

 

 

札幌駅構内に貼られたポスター(読者提供)/©ANYCOLOR, Inc.

 

 花束を抱えてほほ笑む男性のイラストに

「HAPPY BIRTHDAY」(パッビーバースディー・お誕生日おめでとう)の文字。

JR札幌駅の東改札口に近い構内の掲示板に、

10月下旬の1週間、B0判(約1m×約1.5m)の大きなポスターが張り出されました。

 周囲に並ぶ動画配信サービスの広告や、道内で行われるイベントのポスターとは

異なった雰囲気です。

ポスターは企業が商品や催しを宣伝しているのものではありません。

描かれているのは、バーチャルユーチューバー(Vチューバー)の

グループ「にじさんじ」に所属する甲斐田晴(かいだ はる)さん。

10月25日の甲斐田さんの誕生日を祝うため、ファン有志が出した広告です。

応援広告と呼ばれています。

 

 JR札幌駅構内の広告を管理するJR北海道ソリューションズ(札幌)によると、

札幌駅構内では、ファンによる応援広告が2、3年ほど前に登場しました。

 

■クラウドファンディングで70万円

 今回の応援広告を企画したのは東京、神奈川、広島、大分に、住む甲斐田さんのファンの4人。

4人はSNSやイベントを通して意気投合しました。

「にじさんじ」の別のメンバーのファンが出した広告に刺激を受け、

自分たちも出すことにしました。

 それぞれが自分の暮らす地域で推しの広告が見られるように、

広告を出せる場所や費用を調べました。

広告のイラストは、甲斐田さんを描いてSNSに投稿しているイラストレーターに

依頼することにしました。

こうしたイラストレーターは「絵師」と呼ばれています。

 応援広告を出すには広告費以外にも「推し」の所属事務所など関係団体に

申請して許可を得るなどの手続きが必要です。

 4人は、こうした必要な手続きを代行する代理店を、利用する経費などを含め

た広告を出す費用を確保するため、他のファンにも協力してもらおうと考えました。

50万円を目標にクラウドファンディング(CF)を行ったところ、予想以上の反響がありました。

集まったのは、目標を上回る約70万円。

CFは1口1,500円で、複数口を申し込むと広告と、

同じイラストがもらえる特典を設けていたため、1人で3口以上申し込む人も目立ちました。

 急きょ別の絵師にもイラストを依頼して広告を増やし、

札幌、新潟など計8カ所で広告を出しました。

 

 

各地の広告の前で写真を撮影する人や、立ち止まって見入る人がいました。

「感動した」「(立ち止まる人がいて)誇らしかった」-。

広告を出した4人は反響を喜びました。

大分に住むりつさん(21)=ハンドルネーム=は

「自分の地元に推しの広告が出ることなんてまずないこと。

家族も誘って何度も通いました」とうれしそうに話します。

 X(旧ツイッター)やインスタグラムなどのSNSには、

応援広告がある場所を訪れて、推しのテーマカラーのペンライトやグッズなどとともに

記念撮影したファンの投稿が多くあります。

甲斐田さんのポスターの写真をSNSに投稿した

道内在住の女子高生(17)は「道内ではにじさんじのイベントが少ない。

自分の目で、推しに関わる企画を見られてすごくうれしい」と話します。

 

■推しがいるからがんばれる

 推しへの思いを形にして広く発信することは、どういうことを意味するのでしょうか。

 りつさんは「人気が出ることで活動の幅が広がる」と説明します。

甲斐田さんは20年にVチューバーとして活動を始めました。

ファンが増えたことが、ホールでのライブやCDのリリースなど、

ユーチューブにとどまらず、より大きなステージでの活動につながりました。

りつさんは「自分たちの発信が(甲斐田さんを)知るきっかけを増やし、

さらに活動が広がれば。推しがいるから頑張れる」と話します。

 

 

応援広告の発祥は韓国とされています。

ファンが自主的にお金を出し合って街頭ビジョンやバス停などに、広告を出します。

誕生日に合わせて行うことが多いことから、

「センイル(韓国語で誕生日の意味)広告」と呼ばれています。

韓国では、ファンは推しの写真を自由に広告に使うことができます。

所属事務所もPRの一環として黙認しているそうです。

 そんな応援広告文化が日本に上陸したのは2019年。

アイドルを発掘する韓国発の公開オーディション番組

「PRODUCE 101(プロデュース・ワンオーワン)」の

日本版が始まったことがきっかけです。

韓国でアイドルを目指す練習生は、ファンが広告を出すことによって

広く知られるようになりました。こうした仕組みが日本にも持ち込まれました。

日本では韓国に比べて所属事務所などによる

肖像権の管理が厳格であることから、番組側が番組ロゴや写真など、

応援広告で使える素材を無償で配布した上でルールも作りました。

 

■応援広告巡りも楽しみの一つ

 当時は駅や電車内の広告は、企業が出すものと考えられていました。

2022年に応援広告を受け付ける専用サイトを立ち上げた

広告代理店のジェイアール東日本企画(東京)の河原千紘さんは、

「当時は社内でも『なぜ個人が広告を出すのか?』と言われ、

理解を得ることが大変でした」と振り返ります。

 ファンからの申し込みやSNSでの反響も大きかったことで、

企業から広告の掲示スペースなどを「応援広告に活用してもらえないか」と

問い合わせが寄せられるようになったそうです。

 同社も芸能事務所に広告を出す許可申請をファンに代わって行ったり、

事務所と連携して特定の有名人の応援広告の申込窓口を

設けたりするなど、応援広告を一つのビジネスとして力を入れ始めました。

 

声優の石川夏織さんの5周年を祝って東京都内を走るアドトラック

(ジェイアール東日本企画提供写真)

 

 自身もK-POP(ケーポップ 韓国のアイドル歌謡)に

「推し」がいるという河原さん。

応援広告の面白さは「広告を出すことで終わりではない」ところにあると言います。

 複数の地点に出された広告を見て回る「応援広告巡り」という

言葉が生まれましたし、推しのためにアイデアを出し合って広告を作るという、

今までになかったファンの間での交流にもつながっています。

 このほかにも応援広告の魅力はあります。

 河原さんは「応援広告に対して、推しがSNSで反応してくれるという

SNS時代ならではのコミュニケーションもある」と話します。

誕生日を祝い、全国に応援広告が出された甲斐田さんも

「色々なところに出してくださっているみたいで感謝」とファンへの

思いをXに投稿しました。

 

 

■サッカーやバレーボールも応援

 韓国から始まった応援広告ですが

、同社に申し込みがある応援広告の対象は、

韓国のアイドルや歌手よりも、日本で活動するアーティストや

Vチューバ―が多くを占めているといいます。

チームの協力を得て、サッカーJリーグやバレーボールの

応援広告の受け付けを始めるなど、

推しの対象は歌手やアイドルだけにとどまりません。

 「応援広告」は人を呼び寄せる資源にもなっています。

「応援広告で地域を盛り上げることができる」と指摘するのは、

札幌市内の街頭ビジョンなどを管理する

「メガ・コーポレーション」(札幌)の松崎哲也さんです。

 同社では22年から「応援広告」の受け付けに力を入れ始め、

札幌駅の南口にある札幌駅前ビジョンや、

札幌 狸小路(たぬきこうじ)商店街にある6基連動の狸(たぬき)ビジョンでの

掲示に対応しています。

 推しの認知度を高めるため、大きな都市で広告を出したいという

要望もあるそうですが、「ゆかりの地」で出したいという声も少なくありません。

松崎さんは「応援広告を地元で流すことができれば、

本人にも喜びはあると思う」と話します。

10月には、札幌市出身のアイドルグループ「乃木坂46」の

メンバー金川紗耶さんの誕生日を祝うファンからのメッセージを流しました。

 

 

 

 広告を出すには対象とする人・物への許可取りが欠かせませんし、

そもそも広告を出す場所がなければ始まりません。

松崎さんによると、地方ほどその受け皿が少ないため、協力してくれる企業などとの

連携を探っているといいます。

「推しはアイドルを連想してしまいますが、市町村のゆるキャラ、愛してやまない

ご当地グルメなど、対象は無限にあります。

応援広告を活用し、好きを伝えてほしい」と話しています。

推し活には、いろいろな対象と可能性がありそうです。

 

 

次のページに私の感想を書きます

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