北海道新聞に載っている記事ですが
笑顔満載ワゴン、最終列車まで JR車内販売、3月廃止
2019.02.21 08:11
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/278845?rct=n_topic
2月末の廃止を前に、特急列車内で車内販売を行う松浦はるかさん。
商品を満載したワゴンは重さ約100㎏にもなり、
慣れないうちは乗務後、階段を下りるのにも苦労するという=20午前9時(中本翔撮影)
JR北海道の特急列車と北海道新幹線の車内販売が、今月末と3月15日にそれぞれ最後の営業を終え、
道内の定期列車の車内販売は全て姿を消す。
国鉄時代も含め親しまれてきた特急の車内販売は、温かいコーヒーや地元名物の駅弁で
観光客やビジネス客にひとときの癒やしを提供してきたが、年間1億~3億円の赤字が続き、
人手不足も追い打ちをかけた。
客室乗務員は廃止に複雑な気持ちを抱きながらも
「最後までしっかりしたサービスを」と誓う。
「温かい飲み物はいかがでしょうか」。
札幌発函館行きスーパー北斗で、客室乗務員の松浦はるかさん(38)が
ワゴンを押しながら乗客に声を掛ける。
学生時代に飲食店で働いて接客の魅力に気付き、2001年に憧れだった客室乗務員として
JR北海道に採用された。
お客さまとの会話はとにかく楽しい。廃止は残念でならない」と話す。
車内販売は、国鉄民営化を経て一時中断したが、JR北海道になってからは札幌~釧路間の
特急スーパーおおぞらで1997年に開始。
以降、函館、網走、稚内、帯広の各方面の特急で導入され、2001年度には約8億円を売り上げた。
ただ、コンビニエンスストアやペットボトル飲料の普及で乗車前に弁当や飲み物を買う乗客が増え、
17年度の売り上げは4分の1の約2億円に落ち込んだ。
経営難による合理化と人手不足も加わり、JRは15年から車内販売を縮小してきたが今年1月、
全面廃止を決めた。
島田修社長は今月14日の記者会見で「利用促進に大きく貢献したが、利用が大幅に減少し、
見直さざるを得ない」と述べた。
客室乗務員1期生の日妻明香(ひづまさやか)さん(45)は、ここ10年ほどの利用減を肌で感じてきた。
渡島管内長万部町名物の駅弁「かにめし」の予約はピークの半分以下。
「廃止は会社の判断だからやむを得ないと自分に言い聞かせている」と言う。
一方で「客室乗務員は存在自体がサービス。
車内販売がなくなり、列車で過ごす時間が味気なくならないか」と案じる。
28日は、車内販売を行う最後の列車に乗務する予定だ。
「お客さまに泣き顔は見せたくない。
惜しまれるようなサービスを最後まで果たします」
現在25人いる客室乗務員について、JRは「希望者は雇用に努める」としている。
車内販売の廃止・縮小は道外でも相次ぐ。
JR東日本は、北海道新幹線の新青森~新函館北斗間の車内販売を3月15日限りで廃止し、
東京~新青森間は商品を減らすと発表したばかり。
JR四国は特急列車で、JR九州も九州新幹線でそれぞれ3月に廃止する。
いずれも利用の減少を理由としている。
■「長時間乗車時つらい」「残念」
広い道内は特急列車の乗車時間が長く、駅での停車時間は短い。
出発前に食べ物や飲み物を買い損ねると、最も長い区間では5時間以上も飲食できない事態となる。
残りわずかとなった札幌~函館間の車内販売を利用した乗客は
「長時間飲み物も口にできないのはつらい」と不満を漏らした。
「大きな荷物を持って売店で買い物をするのは大変。
車内販売は重宝していたのに」。
20日の特急スーパー北斗6号で、コーヒーと新聞を買った、札幌市南区の女性(70)は話した。
現在、唯一の車内販売が行われているスーパー北斗は幌から函館まで3時間40分前後。
車内販売がなくなる3月以降は、車内で弁当も飲み物も買えない。
JRは「試験的に設置したが利用が少なかった」として、廃止後も車内に自動販売機を置かない方針だ。
観光で札幌から函館に向かっていた英国の大学教員ピーター・ロリングズさんは、
水を買い求め「少し高いけど、長距離列車ではありがたいですね」と話す。
既に車内販売が廃止された
特急オホーツクは札幌~網走間で5時間半、
特急宗谷は札幌~稚内間で5時間10分かかる。
車内販売愛好者で、道内でも約50回利用したという
千葉県の清水ひろしさん(55)は「北海道には売店のない駅も多く、
長時間乗る特急で車内販売がないのは非常につらい。
単価の高い商品の取り扱いや車内販売の民間委託など、全廃の前にJR北海道が
取り組むべきことはあった」と指摘する。
JRによると、車内販売を終了すると発表した1月24日以降、
「残念だ」「これからはどこで弁当を買えばいいのか」などの意見や問い合わせが15件寄せられているという。
(吉田隆久)