「予備動作」とは、
野球のピッチングやボクシングのパンチなど、加速度的な動作を行う際に、
スピードや威力出すために一旦逆方向へ身体を動かして反動をつけたり、
末端部を加速するのためにその基点となる体幹部分の筋肉に力を入れたりというように、
目的地とする動きの前に顕れる「動きの起こり」のことてす。
この動きがあることで、「タメ」を作って大きな力を発揮することが出来たりするわけですが、
格闘技や球技などでは、この予備動作から相手に動きの方向やタイミングを予測されて捕捉されたり、攻撃を躱されたりすることにもなります。
つまり、スポーツにおいては、相手の予備動作をよく見て、動きを予測することと同時に、
自分の予備動作は出来る限り小さくして、相手に動きを読まれないように、素早く動けるようになることが成否のカギになるいうことが言えるでしょう。
乗馬においても、相手となる馬の「予備動作」を感知することが、
望まない方向への動きをブロックし、あるいは、馬に蹴られたり、噛まれたり、踏まれたりすることを防ぐためのコツであることは、
経験のある方ならよくご存知だと思いますし、
馬の動きに遅れずに随伴するためには、出来るだけ予備動作の小さな効率的な動きを行うことがポイントになります。
古来、武術の世界ではそのような、相手に動きを読まれず、かつ相手の攻撃に素早く対応する方法、といったことが研究されてきたわけですが、
その代表的なものが、地面を足で蹴らない、身体を波のようにうねらせない(捻らない)といった身体の使い方だと言って良いでしょう。
近年、「ナンバ走り」や、「古武術介護」、一本歯の下駄や『牧神の蹄』、あるいは「ヒモトレ」など、
日本古来の身体の使い方をスポーツや日常生活に活かそうというような研究や講習会などが各地で盛んに行われるようになってきていますが、
それらにも共通する「動きの原理」を
馬術にも応用してみることで、
馬の性質や動き方の特性に添った、無理のない随伴の動作や、明確で馬にとって理解しやすい「プレッシャー&リリース」を実現出来れば、
より人馬に優しい、気持ちの良い乗馬を楽しみことにも繋がるのではないかと思います。