2014サッカーW杯をテレビ観戦【6】- 07/13 - ~ミネイランの惨劇~ | 藤坂託実の、世界に幸Ale♪

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間が開いてしまいました。2つの準決勝と3位決定戦が終わりました。


・・・さて、まずは準決勝ですが、
何と表現すれば良いのでしょう?(笑)

プロのサッカージャーナリストですら言葉を見つけるのに苦労した事態なのです。



準決勝の結果はこうでした。
第1試合(9日)◆ブラジル:1 - 7:ドイツ◆
第2試合(10日)◆オランダ:0 (2 PK 4) 0:アルゼンチン◆


グループリーグ初戦のスペイン-オランダ戦でスペインが1-5で敗れたことが世界に衝撃をもたらしましたが、今思えばあれは単なる序章に過ぎなかったのですね。
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第1試合。得点経過を単純に書いていくと、

トーマス ミュラー (前半11分)
ミロスラフ クローゼ (前半23分)
トニ クロース (前半24分)
トニ クロース (前半26分)
サミ ケディラ (前半29分)
アンドレ シュールレ (後半24分)
アンドレ シュールレ (後半34分)
オスカル (後半45分)


最後のオスカルだけがブラジル、後は全てドイツです。


最初こそホームのブラジルのイケイケムードだったものの、ミュラーに決められて少しシュンとなってしまったか。しかしまだこの時までは、セレソンの魂に軽くヒビが入ったぐらいでした。ブラジルのサポーターの表情もまだ覇気は充分でした。あの、『魔の6分間』までは・・・・・・


この後は動画ハイライト番組でもご覧ください。
電光石火の如く点が入っていく様子に、ブラジルの選手たちも、サポーターたちも、さらにはドイツの選手たちまでも喜びつつもどこか信じられないような感覚に陥っていた6分間でした。

「サッカー王国」の名をほしいままにしていたブラジルの姿はどこへやら。何をすればいいのか、自分たちが何者だったかも一瞬にして喪失してしまったその姿は、私たちが知っているブラジルの姿ではなかった。



世界は、あたかも見てはいけないものを見てしまったかのように唖然としてしまいました。
(ドイツ人とアルゼンチン人を除いて)


前半が終了し、後半に入っても気を引き締めて臨むのがドイツらしいところ。
決勝戦に備えて力を温存しながらも緩んだ守備は見せず、途中出場のシュールレが2点決める容赦のなさ。
終了間際、ブラジルに1点を決められた時のGKノイアーの憮然とした表情は、私の思ったような「1点くらいプレゼントしてあげたら?」みたいな甘っちょろさを微塵も感じさせない冷徹さがにじみ出ていてドキッとしちゃいました。


この1-7の敗戦は、ブラジルでは今後100年語られる「負の歴史」になることでしょう。
すでにスタジアムの名前にちなんで『ミネイランの惨劇』と呼ばれているそうですが。
そもそもサッカーという競技で7点というスコア自体が稀有で、とてつもない弱いチーム(状態)でなければそんな失点は普通あり得ません。
そんな「7失点」という屈辱的失点を「サッカー王国」が犯すとは世界中の誰も思いもしないので、この日のツイッターのツイート数が世界中で爆発的に増えたというのも頷けます。




この時点でドイツが決勝進出、ブラジルは3位決定戦にまわる事が決定。
はっきり言ってこの敗戦は、ブラジルにとってはすぐにリフレッシュするのは不可能です。


この歴史的大惨敗は、ブラジル国民のアイデンティティーをも一気に崩落させてしまいました。


1950年の『マラカナンの悲劇』がよく引き合いに出されますが、その時は地元開催のブラジルが決勝リーグ最終戦でウルグアイとマラカナンスタジアムで対戦。引き分け以上で優勝だったのが、ブラジルは1点リードするも終了前に2点取られて逆転負け。
20万人のブラジルサポーターたちが詰めかけたマラカナンスタジアムはパニック状態に陥って、二人がショック死、二人がその場で自殺、20人以上が失神。スタジアム内でそんな状態だったので、ブラジル全土での混乱ぶりもとてつもないものだったと想像します。
ブラジルサッカーの最大の悪夢と語り継がれ、ブラジル代表はこの試合を境目にユニフォームの色を一新。当時の白からカナリアイエローに変更され今に至ります。2014年の今大会はその悲劇を払拭して輝かしい地元での優勝を唯一の目標としていました。



そんな中でこの1-7。それも善戦の末ではなく、誇りの欠片も感じない惨敗に国民は泣き崩れ、暴れだし、放火事件も続発する事態になっています。死者・自殺者が出たというニュースを現時点で耳にしていないのが、不幸中の幸いといったところでしょう。やはり1950年と現在では経済状況やサッカーに対する価値観も同じではないはずなので。

しかしながら、セレソン(seleção。英語のselection)という言葉通り全国民を代表して選ばれたチームが闘志も見せられずこのザマなので、ブラジル国民の自尊心は大いに傷つけられました。それが『惨劇』という言葉で表現され、皮肉にも「マラカナンの悲劇」を望まぬ形で払拭する試合になってしまいました。




残された3位決定戦で、セレソンはどのような闘いをして国民にメッセージを送るのでしょうか。