ここの所なんだかどうにも他人様の表現活動に湧き上がるような興味が持てなくなってしまいました。なのでこちらのシリーズも随分ご無沙汰で申し訳ございません。以前と同様日頃から相当な数の映画・音楽に触れているのですが、それを受け取る私の心の構えが明らかに変化したのです。

 ある作品の構想に着手したからなのだと思います。「X OUT」「TRIO」を書いた後も生き続けた私の人生に意味はあったのか、思考の到達点は本当にそこで良かったのか、もう一度だけ、一切の妥協抜きで極限まで考え詰める作品をどうしても書かなければと心が叫んでいるのです。必ず書いて、こちらのブログで公開します。数年かかると思います。それまでは、もっと身近で読みやすい楽しめるものを公開していけたらと思います。笑えること、楽しいことも人生の大切な要素だと思いますので。

 というわけで、他人様の作品に勝手なことを言うだけのお気楽シリーズ、復活です!

 

 

・ イコライザー (1,2,3)

 

 アメリカのTVシリーズを映画化した勧善懲悪のクライムアクションです。主人公の裏の顔であるアクションシーンはもちろん素晴らしいのですが、私的には、表の顔の倫理的道徳的な平和な市民としての振る舞いにより深い魅力を感じるのです。日本のドラマ史に燦然と輝く名作中の名作「必殺シリーズ」の中村主水と比べると、表の顔の人間味の描き方に笑っちゃうくらいの大きな差異があり、お国柄や時代の違いに思いを巡らす鑑賞法もお薦めできそうです。

 「EQUALIZER」には、「平等・同等にする人」の他に「ピストル・棍棒・ナイフなどの武器」という意味もあるとのこと。平等には武力が付き物なのですねぇ・・・。

 4月1日、渋谷 eggman にてあるオーディションの決勝ライブ審査が開催されました。最終審査まで勝ち抜いたバンドが全国各地から集まり順番に演奏をして審査を受けました。結果発表は後日、12日。優勝したのは、決勝ライブ審査に参加していなかったアーティストでした。狐につままれたような謎の優勝発表。誰もが知る超大手携帯会社と誰もが知る超大手芸能事務所が堂々とやっていることなのだから、それでなんの問題もないのでしょう。ないのでしょうが、やっぱりモヤモヤしてしまうのです。「モヤモヤ」は最大限抑えた言い方です。全参加者の情熱も思いも時間も労力も踏み付けにする権力と同じ地平に立ちたくない私なりの最大限抑えた言い方です。愚弄された当事者たちが数人を除きなぜかそこまで怒りを露にしていないのだから、私がとやかく言うことでもありません。が、イコライザーにお願いして、武力以外の平和なやり方で優しく成敗して欲しいとつい思ってしまうのは身勝手な罪なのでしょうか?

 

 

・ 警部補アニカ ~海上殺人捜査ファイル~

 

 イギリスのドラマです。ジャンルで分ければ「クライムサスペンス」になるようですが、私は「コメディ」として大いに楽しんで観ています。とにかくセリフのセンスが素晴らしい。ユーモアを大事な文化とする環境でしか熟成しない味わいに溢れています。特にシーズン2の前半3作などは、登場人物みんなのセリフがことごとく質の高いユーモアで彩られていて、いくらなんでもこんな人たちどこにもいないだろうとバカな子供みたいな感想しか出て来ない自分が恥ずかしくなってしまうほど。何なら親子・家族の葛藤的な影を帯びたくだりなどまったく要らないから、その見事なユーモアのセンスで徹頭徹尾笑わせてよとつい思ってしまうのはやっぱり身勝手な罪なのでしょうか?罪じゃないよね。バカな大人なだけW。

 

 

・ アナザーストーリーズ 運命の分岐点

 越境する紅テント ~唐十郎の大冒険~

 

 唐さんのことを初めて知ったのはこの番組にも出演している村松友視さんのエッセイでした。劇団の公演で札幌にいる唐さんを訪ねた村松さん。宿舎での朝、布団の中で腹這いの唐さんがカギ型に曲げた指をミカンの缶詰に突っ込み掘り出したミカンを食べている。唐さんから渡された缶詰に同じように指を突っ込みミカンを掻き出し食べる村松さん。その描写がなんとも印象的で、まるで自分が見た光景のような不思議な色合いの記憶として今も私の心に残っています。

 初めて歌舞伎町をゆっくり歩いた時。ガラケーの時代から今に至るまで一度も携帯を持ったことがない私はもちろん手ぶら。土地勘のないあの街をとにかくふらふら行き当たりばったり歩いていました。「ここがゴールデン街か」「ここが吉本本社か」 お上りさん丸出しでキョロキョロ歩くうち、路地の奥に小さな朱塗りの鳥居を見つけました。「こんなとこに神社があるんだなぁ」 吸い込まれるように鳥居をくぐり境内へ。そこが紅テントで有名な花園神社でした。私が境内に立ち入ったその瞬間、それまで穏やかに晴れ渡っていた天空が一天にわかにかき曇り真っ黒な雨雲が空を塞ぎ横殴りの激しい激しい雨と風。たまらず本殿脇の軒先に駆け込み雨風を凌ぐこと約1分。噓のように再び晴れ渡り眩しい光に溢れる空を見上げ、「今のって何?神様、怒ってる?」 後で調べた所、それは大歓迎の印なのだそう。とっくの昔に神が死んでからこの世に生を受けた私なので、どんな神様も信仰することはなく思考の対象として向き合うだけなのですが、こういうエピソードは大好物。それからは歌舞伎町を訪れる度に花園神社へのお参りを続けています。信じてないのにお参りはする。典型的ないい加減な日本人W。今後は唐さんのご冥福もお祈りするようにします。安らかにお眠り下さい。

 

 

・ 咲回り  奴居イチヂク

 

 You Tubeで観られるMVです。

 4月29日、新宿SAMURAIで初めて生のステージを観て圧倒されました。ラップバトルをきっかけにメディアで注目されるようになった彼ですが、ラップだけではなく、ミュージシャンとしての総合的な才能が一目で分かるくらいとにかく物凄い。4月19日にこちらのブログで公開した「私、衝動の味方です」に書いた「音楽の才能」における紛う方なき天才が奴居イチヂクです。楽曲の独創性や文学性の高さ、刃物のようなボーカルを自在に操る歌唱力の見事な完成度などはネット検索でも分かるのですが、生のステージからは彼の持って生まれた人の目を惹き付ける独特の輝きがしっかりと伝わって来ました。人前に立つ者なら誰でも欲しがる輝きを、努力や工夫をどれだけ重ねてもそれでは手に入らない輝きを、ごく僅かな選ばれし者しかそもそも持つことができない貴重な輝きを、彼は確かにその身にまとわせ見る者にギラギラと突き刺していました。この日初共演した長嶋水徳さん、客席に来ていた春ねむりさんにもその魅力はもちろん伝わっていて、この二人と絡んだいろんな計画がすでに動き出しているとの噂もチラホラ。今後の活躍がとにかく楽しみなのですが、私が見聞きした素敵なエピソードを2つ。

 4月29日のライブの後、歌舞伎町の道端、「路上喫煙禁止」の張り紙の真下で思いきりタバコを吹かし地べたに座り込み顔を寄せ合いヒソヒソコソコソ何やら悪巧みをする奴居イチヂクと長嶋水徳。初対面とは思えないオーラの似通い方。パンク映画のワンシーンのような絵になり過ぎる光景に思わず見惚れてシビレてしまいました。

 そしてイチヂクさん。以前ライブを終えた歌田真紀さんに「カッコ良かったです!」と感想を伝えた所、「ハア !?」と凄まれギロリと睨み付けられとても悲しい思いをしたとのこと。歌田さんの洗礼を受けたのですねW。誰もが通る道だから大丈夫WWW。それにショックを受ける繊細さもイチヂクさんの大きな武器です。最高です!

 

 奴居イチヂク、歌田真紀、長嶋水徳。この時代に生きる天才たち。負けないように凡人の私も頑張ります。次回は「砂のメタル (5)」。急展開が!?