もしもロックが

圧倒的多数から零れ落ちる弱く小さな一人のものならば

一人であることを武器にできない

一人ぼっちの一人のものならば

 

もしもロックが

声を発する力を奪われたその耳に届く救いだとしたら

声無きことを伝える術の無い

暗闇に届く救いだとしたら

 

薄暗い下校時のプラットホームで震え崩れる足を支えてくれる

湧き上がる恐怖に縮こまり凍りつく毛布の中に射し込んでくれる

仮の笑顔を振りまく仮の生活を所詮仮だと吹き飛ばしてくれる

溢れる涙をせき止めず乾かさず認め受け止め包んでくれる

 

やりたいことを

やってくれる

自分の代わりに

やってくれる

 

睨みつけ嘲笑う顔を 顔を その無意味さで塗り潰してくれる

がんじがらめの鎖を一つにまとめ一刀両断解き放ってくれる

不動のはずの岩盤を持ち上げその下から引きずり出してくれる

届かないはずの星を指で突っつき不可能は無いと笑ってくれる

いつもどこででも 守ってくれる

怖じ気づく心を鼓舞してくれる

たとえ負けようと 今日は負けようと

それは負けではないと言ってくれる

勝ちも負けも超えたその遥か先

真の価値を 意味を 教えてくれる

 

本当は

そうじゃないのに

本当は

そんな人じゃないのに

 

本当は誰よりも弱く弱く

臆病で繊細で傷つきやすく

そよ風を恐れ物陰に潜む

さざ波に青ざめのたうち回る

皆が発散し あるいは忘れ

身をかわし生きてゆく闇をすべて

その内に内に呑み込んで溜め込んで

自分に自分が斬りつけられる

誰にも見られず 血塗れになる

誰にも知られず 血達磨になる

それでも笑う

それでも届ける

他の誰かを解き放ち続ける

 

それがロックなら

 

それがロックなら

 

ロックとは

 

あなたのことだ

 

長嶋水徳 - serval DOG -

 

 

 

                        了