創作の合間の息抜き企画のくせに早すぎる第三弾。その理由は最後の記事にあり。

 また2月10日公開の当ブログで取り上げさせて頂いた「ナワリヌイ」が3月13日(日本時間)第95回アカデミー賞にて最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞されました。Congratulations!

 

 

 ・ ドラゴン怒りの鉄拳

 

 毛沢東が感動して涙を流したことで有名ですが、それとはきっと違う理由で私もこの映画に感動いたします。1987年の2月、丸々ひと月ジャマイカを放浪したことがあるのですが、道ですれ違う現地の人たちに何度ブルース・リーのポーズでお道化られたかわかりません。極めて珍しい東洋人に対するアピールとして、彼らが選んだのは没後久しいスクリーンのヒーロー、ブルース・リーでした。東洋人=ブルース・リー。他の誰でもないのです。何が彼らの心に届くのだろう。何が彼らの心を掴むのだろう。フォルムの色気?ムーヴの美しさ?狂気にも通じる速度と破壊力?ブルース・リー映画の最高傑作であろうこの作品。国境・人種・文化・年代という、人が囚われがちな諸々を今も飛び越え続け破壊し続ける彼のエネルギーではち切れているのです。抗日の英雄?その解釈に流される涙を遥かに超えて今日も怪鳥音は世界中で鳴り響くのです。アチョーッッ!!

 

 

 ・ ダウン・バイ・ロー

 

 ニューヨーク滞在中にこの映画の封切りがあり、NYUで映画を勉強していた友人に誘われ公開初日に観に行きました。前作「ストレンジャー・ザン・パラダイス」が大成功していたジム・ジャームッシュ監督。会場全体が「おらが街のヒーロー凱旋」の空気に満ちていて、こんな大都会にもこの種の湿度があるんだなと不思議な感覚に包まれた記憶があります。肝心の映画の記憶はまったく無いのにW。一緒にいた友人は興奮してアパートに戻るなり学友に電話をかけ観てきたばかりの内容について熱心に説明をしていました。きっとそういう映画なのでしょう。将来のビジョンを持ち勉強の対象として映画を観る人たちにとっては刺激的な。将来のビジョンとも勉強とも縁がなかった私にはちょっと手が届かない高尚な文化。それもまた有り。なんだって有り。

 

 

 ・ シド・アンド・ナンシー

 

 これもニューヨーク滞在中に映画館で観ました。そしてこれもその時の記憶がほぼありません。難しかったからではなく、客席でコカインをやり過ぎて通路に卒倒したからでありますW。帰国後改めて観直したのですが、ぼんやり残る記憶の中のスクリーンに目の前の液晶画面が追いついていかない。まるで別の映画を観ているよう。映画は所詮データの組み合わせ。どこでどう映しても同じもの。ただ、それを観るのは人間なのです。常に移ろい同じではいられない、その時その時がそれぞれすべての厄介な流動物、人間なのです。その人間が作り人間が観る映画。固定した感想をどれだけ書いてもその手から映画はするりと逃げていくのです。

 

 

 ・ ゴッホ 最期の手紙

 

 20年ちょっと前、私が住む街にゴッホ展がやって参りました。生まれたばかりの娘をベビーカーに乗せ会場を訪れた私。初めて見る本物のゴッホ。目を惹かれたのは、その絵の具の異様なボリューム、立体感でした。まるでショートケーキの表面に搾り出された生クリームのように、盛り上がり突き立ち垂れ下がり渦を巻く色彩の肉塊に釘付けとなり、ひたすら真横から絵の具の凹凸を覗き込む私の様子が余程不審だったのでしょう、気づけば二人の警備員さんにピッタリマークをして頂き、ほったらかしにしていたベビーカーに戻り逃げるように会場を後にした私でした。この人の人気、きっと絵画そのものの魅力以上に、その生涯のあり方に理由があるのではと感じます。生きている間には認められなかった。死後正当な評価を世間がしてくれる。そんなストーリーに自分を重ね慰められる人たちが無数にいるのでしょう。私には、世間の評価云々なんかより、彼と弟テオとの関係が羨ましくてしょうがない。たまらない。こんな支持者が、こんな味方が、この世に一人でもいてくれたなら。ゴッホ、充分幸せだったじゃん。

 

 

 ・ 少女乱反射    長嶋水徳 - serval DOG -

 

 YouTubeで観られるMVです。コメント欄にもある通り、いつ大ブレイクしてもおかしくない名曲の数々を作り続けている類い稀な天才なのですが、なぜかいまいち導火線に火が灯らない。ライブのお客さんの半数以上がプロのミュージシャンと音楽関係者という風景が当たり前になってきた"玄人殺し″。ほんのちょっとしたきっかけを境に、小さなライブハウスでは見ることができない巨大な存在に登りつめていくのでしょう。5月4日、新宿 Marble。彼女が高校時代から大好きだった「CIVILIAN」さんとの初共演。大爆発前の胎動を楽しみに、間近に観られる機会を逃さぬように、私も会場に馳せ参じます。「少女乱反射」「GOFLL」「エンブレム」をカラオケで歌える日も遠くないでしょう。JUST BRING IT!JABRONI BEATING!あなたを弾き出してきたクソ世間に、あなたを踏みつけてきたクソ常識に、奴らが言い訳できない正攻法で、正面突破で、喰らわせてやれ!!!