あなたの最期を 最期にはさせない

 

あなたはとても優しかったから

人の苦しみが 心の痛みが

自分のことのようにわかったから

自分のためのはずのその決断も

自分のためだけにできはしなかった

海を渡ったその地に溢れる光は

思い描いた光とは違った

海を渡った先に元の場所があった

何も変わらない 逃れられない

焦りと苛立ちに追い立てられる

時は流れ去る 金は無くなる

あなたは黙って 誰にも黙って

外へ飛び出した 今度こその外へ

焦りと苛立ちはその濃密な

実感の地でさえあなたを追い立てた

一瞬ごとの日常を乗り切るだけで

精魂尽き果てる実感の地で

あなたはその外を 外を 求めた

「I NEED GO」

行かなきゃならない

 

あなたはたったひとりだった

あなたを守るものは何もなかった

あなたを外へ駆り立てたものには

理由がなかった 正義がなかった

人を納得させる何もなかった

皆が怒り 呆れ 無視し 嗤った

あなたを切り捨てた

あなたを殺した

あなたは 誰も想像さえできない

その恐怖の中で 謝った

引き攣る声で 消え入る声で

あなたは「すみませんでした」と謝った

そのあなたを皆が打ち据えた

殺した後まで

あなたを殺した

 

あなたはたったひとりだった

たったひとりのぼくにはそれがわかる

外は いつもたったひとりなのだ

たったひとりにしか それはわからない

たったひとりだから ぼくとあなたは違う

ぼくの外と あなたの外は違う

あなたのことは決してわからない

だからこうして書くことしかできない

 

香田証生さん

ぼくはあなたを

決して忘れない

書き続けます

 

 

                                  

                                      了