Iさんはアメリカで心理学の博士号を取った才媛だ。だんな様の赴任で一緒に日本に来て、日本語の勉強に燃えていた。

教科書をいくつか見せたときにもローマ字版を押しのけて「かな版」を希望した。「強制的にでも使わないと覚えないでしょ」と言いながら。

そのやる気が嬉しかった。頭もいいから平仮名もすぐ覚えるだろうと期待もしていた。


それから半年。Iさんのレッスンを担当している講師が質問してきた。「ご自分でかな版の教科書を選んだんですが、最近になってローマ字の教科書がいいって言い出したんですよ。追加で買っても予算は大丈夫でしょうか」

同じアルファベットが使えるスペイン語などのヨーロッパ言語を外国語や第二言語として学んだ経験のある人たちが見積もる日本語習得への甘さが原因だろうか。

予算の問題はないけれど、ここでもう少し踏ん張ってほしいなあと思う。