兵庫西宮の岡田山にはヴォーリズ設計の大学3キャンパスがあります。
(関西学院大学上ヶ原キャンパス、神戸女学院、旧聖和大学(現関学聖和キャンパス))
そこに足を踏み入れると、設計者ヴォーリズの思いを今に感じ取れ、
またそれを大切にし続ける関係者の方々がおられ、両者のつながりを肌で感じることができます。
また、ヴォーリズ建築に緑溢れるキャンパスには別世界のような環境よさを感じます。
 
■竣工時期
3つのキャンパスが、4年ほどの期間に集中して竣工しています。
近接する地域にでもあり、何らかの関連性があるのだろうな、と思います。
・1929年(昭和4年):関西学院大学(現上ヶ原キャンパス)[築95年]
・1932年(昭和7年):旧聖和大学(現関学聖和キャンパス)[築92年]
・1933年(昭和8年):神戸女学院[築91年]
 
■3キャンパスに共通するものは、
所有者の大学をはじめ関係者の方々に共感され、築90年を超える教育施設が、大切に維持して現役施設として使われていることです。
また、チャペルなどには照明の細やかなデザインがされ、ガラスをつうじた柔らかい光が差し込んで優しい気持ちを感じることも、このヴォーリズ建築に共通しています。
 
◼︎(1)関学上ヶ原キャンパス
1929年、芝川家の果樹園だった場所に神戸原田の森にあったキャンパスが移転されました。
後方にあるかぶと山への軸線を背景に設計された正面の時計台は、関学のシンボルで、とても美しいです!
登録有形文化財に指定されています。
重要文化財クラスの建物だと思います。
当時の学生2000名に対して、現在は1.7万人。
その後、現在まで増改築を重ねて、今の大キャンパスになっています。
ヴォーリズが逝去した後も、1959年までヴォーリズ設計事務所が建築設計をされていたそうですが、
その後は日本設計に変わって、スパニッシュミッションのデザインを継承して今に至っています。
 
□時計台
竣工時に時計がなかったそうですが、施工者の竹中工務店の寄付で時計が設置されたそうです。
建物左右両サイド部は、戦後の増築。
 
□ソウルチャペル
戦後の1959年竣工で、ヴォーリズ末期の建築です。
訪問した日も、同窓生の結婚式の準備中でした。

 

 

□法学部

 

□住宅5棟
当時の宣教師の住まい。
同じ外観の建物5棟が残っています。
ひとつの図面を元にして、同じモジュールにて複数棟建てたものと思います。
このあたりの合理性にもヴォーリズ建築らしさを思います。

 

□関学中高学校
現中高学校で唯一残るヴォーリズ建築。
木造の大きなトラス、大きな照明器具が目に入ります。

内庭から。

 

︎■(2)旧聖和大学(現関西学院大学聖和キャンパス(教育学部))
現キャンパスで唯一残る、ヴォーリズ設計の建物。
関学上ヶ原キャンパスの法学部に外観が似ています。

階段まわりに、ヴォーリズらしいデザインがみられます。

 

□チャペル

 

◼︎(3)神戸女学院
1933年(昭和8年)竣工で、築91年。
12棟が重要文化財となり、現役の学舎として利用されています。
 
第二次世界大戦と阪神淡路大震災という二つの大禍をくぐり抜けて、
竣工時のオリジナルな原型を内部までほぼ保ち残されながら、今なお神戸女学院の教育施設として、大切に使用されています。
90年間教育施設として使われ、今後も残していかれるこの姿がすごな、と思います。
 
先に竣工した、
関学、旧聖和大学から、内外装の材料・デザインの密度などグレードがグッと上がります。
それが現在12棟の重要文化財として、今に残るひとつの理由かもしれません。
 
□チャペル
天井材(テックス)は、現行法規では耐火上NGですが、
重要文化財指定されており、そのまま残されています。
 
□渡り廊下
高い天井からのトップライトに明るい内装材が、
軽やかな雰囲気を出しています。

重厚ながらも雰囲気ある、階段まわり。

 

□ソウルチャペル
木のトラスに高天井。

西日からのオレンジ光が柔らかくとても優しいです。

ヴォーリズの思いを感じるものです。

 

□図書館
機能性と美しさをかな備えた、北側採光の建物。
外装の大きな窓建具は、竣工時のスチールからアルミサッシに改修されていました。
気密性等の理由から、現実的な選択をされたものと思います。

 

正形建物の上に、勾配屋根の建物がのった外観デザイン。

ヴォーリズ建築では、珍しいかたちのように思います。

 

◻︎体育館

現役の体育館。

 

◻︎住宅

ヴォーリズがたくさん残した住宅建築のなかで、グレード高くつくられています。