なまこ壁は、平瓦を45度回転して壁に貼り付け、瓦の間を漆喰で目地止めしたもの。
目地が海の生き物「なまこ」のように盛り上げるスタイルからその名称があります。
防火性、保温性、保湿性に優れ、台風などの強風に強いことが特徴。
全国的には高知や伊豆半島、倉敷などに見られます。
明治時代から昭和初期まで日本の各地で見られた外壁工法です。
今回、伊豆半島の松崎町、子浦町、下田などをたずねました。

■松崎町
なまこ壁の建物が多くのこる松崎。
今も190棟余り残っていて、独特の趣があります。
ただ、建物は点在していて、
連続する町並みとしては残っていません。
むかしはどのような町並みだったのだろうか、と想像をします。
以前はなまこ壁の建物がたくさんあったそうで、多くは取り壊され、現代的な建物になっています。
理由は、
維持補修に手間がかかり、その結果コスト高く、簡単に補修できないため。
補修されずに
放置されたままの建物もたくさんある様子です。
建物が減り修理する機会が減り、漆喰職人さんの技術継承も課題になっています。

現存するなまこ壁の建物は、松崎町が所有管理し、貴重な地域資源を残そうとされています。
一方で、これらを生かした町の活性化を合わせて行うことが、課題でおられるのだろう、と感じました。

◇旧依田邸
中庭を囲んでつくられたなまこ壁建築があまりにも美しいものです。
松崎町に移管され、公開管理しておられます。
◇山光荘
昭和41年開業の旅館。
入江長八の漆喰が土蔵や漆喰蔵などがあり、
長八の宿としても知られる宿です。
長八作の漆喰土蔵。
◇近藤邸
近藤平八郎の生家。
通称なまこ壁通りと呼ばれています。
◇中澤邸
明治初期築の呉服商建築。
祖先は、戦国時代に武田に攻撃された松崎に逃れてきた方。
木炭を船で清水、江戸に送り財産を蓄えた豪邸が多かったそうです。
松崎町に移管され、公開管理を行なっておられます。

蔵の建具の漆喰デザイン。
◇岩科学校
伊豆のなまこ壁建築での唯一の重要文化財。

二階壁の長八デザインの漆喰壁が美しすぎるものです。

■下田
幕末にペリーが来航した後、開港し、
日本最初の外国人が自由に出入りした町。
アメリカ領事館が設けられた最初の町でもあります。
伊豆急が東京から直結していることもあり、伊豆の中で開発が進んだ町です。
このため、スクラップアンドビルドが行われ、今は松崎町以上になまこ壁建築はわずかしか残されていません。

◇旧澤村邸
大正期の個人建築。
下田市唯一の公開建築で、市が譲り受け管理されています。
◇なまこ壁の家
今も住宅として使われています。
◇安直楼
悲しい歴史が伝えられる伊豆のお吉が、晩年に開いた小料理屋。
大正時代はこのような屋根瓦の町並みです。
なまこ壁建築も多く見られたことと思います。
残された今の建物を、何とか後世に繋いでいきたい思いです。

高知吉良川の土佐漆喰建築