常滑陶芸研究所、陶器の町常滑の高台にある、公共建築です。
設計は昭和のモダニズム建築家 堀口捨己。
1961年(昭和36年)竣工で築60年を感じさせないモダンな建築です。
外装や屋上の劣化進行が少ないことにも驚きます。
伊奈製陶(現LIXIL)の創業者伊奈長三郎氏が、同社の株式15万株を常滑市に寄附し、その資金で建てられました。
伊奈氏が、実質的なオーナーだったことと思います。
繊細さ、光、和洋の融合、モダニズムデザインなどなど、堀口捨己の意匠が濃縮されたような建物です。
■外観
大きく張り出した屋根とエントランスの庇。
安定感を感じます。
モダニズム建築なのに、シンメトリー(左右対称)でないところに、日本建築のエキスをデザインされているように思えます。
外観は遠目からは白色ですが、近くで見ると小口タイルの紫色。部分的にグラデーションにて貼り付けられていて、日本的な繊細さを感じます。
本格的な数奇屋茶室が設けられています。
実は隣接した応接室と一体になっていて、隣は赤い床とソファが大胆です。
思い切った色づかいから、和洋のデザイン融合にチャレンジされ、馴染んでいます。
■エントランスホールの天井照明
天井カバーや天井面のカラーリングにさりげないデザイン。
見上げて気づく箇所で、
普通に出入りすると見過ごしてしまいそうです。
ただし、吹き抜けなので、照明器具の交換は大変そうです。
■展示室、光の取り入れ
木壁に銀色の着色をしていて、常滑陶器に映える色としたそうです。
展示室には四面のコーナーにトップライトがあり、照明を消しても明るさがあり、光の存在を感じるものです。
バルコニー屋根からのこもれ光にも日本人の感性を意識しているよう思います。
■階段
外部も内部も浮かせた階段。
モダニズム建築らしさです。
■竣工から60年たって
建物所有は常滑市ですが、
寄付を現金ではなく株式で受けたため、今もその運用で建物の維持管理がされているそうです。
施設運営する方々には、
60年たった今もオーナー伊奈氏の思いが届いており、また設計者堀口捨己を慕っておられ、とても幸せな建築だと思います。
施設名は研究所のままですが、現在は陶芸技術者を養成する施設として、常滑の文化継承する施設となっています。
この点においても、今は亡きオーナーや設計者の思いが届き、継承されており、幸せな建築だと言えます。
■屋上から
翼のような躍動感ある、トップライトがあります。
タイルが劣化から剥がれて、タイルのひとつひとつのすがたを見ることができます。
常滑のやきもの窯の煙突が見えます。