片山東熊設計の建築を訪ねて、新宿御苑の旧洋館御休所へ。
御苑内に静かに佇んでいます。

明治29年(1896)に天皇や皇族が新宿御苑内の温室で植物を観賞する際の休憩所として創建されました。
設計は宮内省匠寮の片山東熊。
19世紀後半にアメリカの住宅を中心に流行したスティックスタイルを基調とした洋風建築。
重厚さではない軽やかなデザインに、休憩所としてのこの建物の意味合いが分かるように思います。

□歴史
当初は皇族が温室を訪れる際の休憩施設でしたが、増築が繰り返され、大正13年(1924年)にほぼ現在の姿となっています。
ゴルフやテニスのためのクラブ・ハウスとして使われた時代もあったそうです。
昭和20年(1945年)の東京大空襲で焼失を免れたことが幸いでした。
戦後、管理事務所として使われ、
平成13年(2001年)に保存・改修工事を行い、同年に重要文化財(建造物)に指定されています。

□新築時の片山東熊のオリジナルデザイン
紫色箇所が新築時。

新築時の立面図面を重ねてみると、片山東熊のオリジナル箇所がよく分かります。
※新築時図面「新宿御苑内新築休憩所五拾分之壱之図」(宮内庁HPより)


一見した感じ、当初設計と増築部の違いがなく違和感なくひとつの建物になっています。

宮内省匠寮の増築担当設計者が片山のオリジナルデザインを忠実に継承したことが伺えます。

この外壁部などは、増築時のデザイン。

フランス建築を志向した片山が、このようになアメリカンスタイルのデザインも行い、当時の情報環境のなか、かなりの学びをしていたことが分かりるものでもあります。