古民家「まろや」紹介の続編です。

まろやは、大正14年(1925年)に、木をうまく使って建てらた古民家です。
95年だった今も、ほとんど当時のままの姿で残されています。
現オーナーに伺ったお話しから、その理由が分かります。


□まず、建築時のこと
建設当時の建主はこの地域で林業営んでおられた方で、家族でお住まいだったそうです。
前回紹介しましたように、ふんだんによい木材が使われています。お仕事柄か、木への思いやこだわりを持って家づくりをしたことが伺えます。
それも品よく、今でいえば、建築家がデザインしたような住まい。
現オーナーのことばをお借りすると「禁欲的な建物」。

建築主が、思い入れある建物をつくったことが、今に残された1つめのポイントです。



□その後、娘さんが大切に住んだ
建主のお父さんが亡くなられた後は、
娘さんが長くお住まいになり、築60年となる平成初期ごろまで、住み続けられたようです。

木建具をサッシに変えることなく、キッチンやリビングを洋式スタイルに改装することなく、建設当時そのまま使われています。
お父さんの思いを大切にされたのでしょうか?厳格だったそうなお父さんに敬意を払われたのでしょうか?
何れにしても、お父さんへの思いを感じて、建物を大切にされたのではないか、と思います。

今に残された2つめのポイントです。


□さらにその後、空き家だった
娘さんがお亡くなりになられたあとは、30年間空き家で、誰も住んでいなかったそうです。

取り壊されることなく、空き家だったことが、今に残された、3つ目のポイントです。

□そして、今のオーナーとの出会い
そこに現れたのが、今のオーナー。
東京にお住まいだった当時、移住をお考えになり、最初のネット検索でヒットしたのが、今の古民家だったそうです。

建築士でもあるオーナーのことばでは、「禁欲的なデザインの建物が気に入った」とのこと。
95年前の建主の思いと共鳴するものがあったのでは、と推測します。
縁というもの、また運命のようなものを感じます。

今のオーナーとの出会いがあったことことが、今に残された4つ目のポイントです。

京都の重要文化財 聴竹居が今に残された理由と共通するものがあります。

※聴竹居
さらに、30年使われていなかったのに、外部建具は円滑な開閉がされ、ゆがみがなく構造体がしっかりしていたことも安心であったとのこと。
新築時に、腕のよい大工さんにより、しっかりと建てたことも理由です。

□そして、これから
今のオーナーは、
「次の世代に喜ばれるものを残したい。」
「恥ずかしくないものを残したい。」
と話され、

また、
「同じすがたで続けることだけが、建物の持続可能ではなく、建物を生かした新たな使い方も大切」
とも話されています。

価値ある建物が、活用されながら次世代に引き継がれていく、その過程を見るような思いでした。

□まろや