大阪堺にある、ヴォーリズ設計の「富久邸」です。
ヴォーリズは、昭和初期に活躍した米国人建築家。
心斎橋大丸、関西学院大学、神戸女学院などの洋風建築を今に残しています。
関西人には馴染みのある建築です。
そのなか、珍しい和風建築です。
木造住宅で、85年間残されていることも貴重です。
長く残されているのは、相続されたお孫さんが建物に対しての何らかの思いれがあったのではないか、と感じています。
また、今そのお孫さんが、賃貸に出されていて(※②)、
「ヴォーリズ設計」がブランドになっていることも、
建物が存続できる理由のひとつではないか、と思います。
■建物の特徴です。
室内は建築当時のまま残っている部分が多く、
建築当時から実際に使われていた机や椅子、収納などの家具も残されているそうです。
縁側で庭を眺める気持良さや随所に設けられた建具や天井の細工は必見、とのHPでのコメントです。
写真の天井細工、建具のデザインからも、日本人とは少しちがった雰囲気を感じます。
■建築年
1933年(昭和8年)新築、築85年、戸建て住宅
⇒登録有形文化財の登録をされておられないようですが、申請すると登録できる建物だと思います。
■建築主、建物所有者
現オーナーの祖父がヴォーリズに依頼して建築
現在はシェアハウスなどの賃貸建物として使用、建物所有者は住んでおられないようです。
■設計者
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(※①)
■現所有者の思い(書籍「幸せな名建築たち」より(※③))
ヴォーリズのことは知らず、名建築との認識はなかった。
住んでいたおばあさんも同様だったので、外部建具を木建具からアルミサッシに変える残念な改修を行なわれた。
お父さんが早くに亡くなられたので、おばあさんから相続を受けた。
お父さんが相続していたら、壊していたのではないか、と思う。
→[コメント]相続されたお孫さんが、建物に対して、何らかの思い入れがあったことを語間から感じます。
大規模な建物でなかったので、相続税の対応ができたが、大規模な住宅では相続税の関係から建物所有することは、困難ではないか、と思う。
→[コメント]個人住宅が長年残るためには、確かに相続が課題です。
□※①ウィリアム・メレル・ヴォーリズ:http://www.vories.co.jp/vories/
□※②富久邸賃貸案内:http://www.tatodesign.jp/room/detail.html?houseno=678
□※③幸せな名建築たち:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784621303061