鰆と菊芋とグリュンホイザー
本来は閑散期である筈の11月に入っても、相変わらず稼業に忙殺される日々が続いている。
文句を言ったら罰が当たるかもしれないが、このままでは身体を壊してしまいそうなのが悩みの種である。
そんな疲労蓄積の折、タイミング良く恒例の息抜きの機会がやって来た。
届いたばかりのリースリングを1本引っ提げて、すっかり短くなった日を惜しむように某所へと車を走らせる。
「秋の日はつるべ落とし」とはよく言ったもので、通い慣れた宿に着いた頃には辺りは既に薄暮な雰囲気。
水平線に沈みゆく夕陽を眺めつつ幾ばくかの旅情にでも浸りたいところだったが
残念ながらお天道様の姿はどこにも無く(註・日没時間は16時54分)、旅情ではなく温泉に浸かるしかなかった。
ひと汗流した後は、2日前に長旅を終えたばかりでボトル虐待も甚だしいけれど...これで乾杯。
食事は例によって、おすましと握りでスタート。
今夜のネタは足赤海老。思わず異口同音に唸る、「うっま~!」。
お愉しみのカルパッチョは、天然平目とモンゴイカのタルタル。自家製の玄米バゲットとともに。
さて、今夜の相棒はコレ。
マキシミン・グリュンハウスの2022年産グリュンホイザー「1G」リースリング・トロッケン。
このヴィンテージから導入されたカテゴリーで、フランスワインで言うところの「プルミエ・クリュ」。
もちろん葡萄は3つの畑(いずれもVDPグローセラーゲ、特級畑)からのものなので
単なるオルツヴァイン(村名)とは別格に扱って良し、って事なのだろう。
2022 Gruenhaeuser 1G Riesling Qualitaetswein trocken
Weingut Maximin Gruenhaus (Mertesdorf/Ruwer)
A P Nr 3 536 014 11 23,Alc 12%vol
お次は、鰆のソテー 菊芋のソース。
これがグリュンホイザーと合う合う...リースリングが菊芋のソースとこれほど見事にマリアージュするとは驚き。
鰆の火入れも絶妙。添えられたディルも良い仕事してます。
ムラサキガニと菊菜の自家製パスタ...これもグリュンホイザーとバッチリ。
続いて、鹿肉のカツレツと人参、柚子酵母のカンパーニュ。これまたリースリングと好相性。
ところで今夜のリースリング...注ぐとグラス壁に細かい気泡がビッシリ付着し、舌にも極軽い微炭酸の刺激。
酸と鉱物の、果実味控えめなバランス。桃な感じは出そうで結局出なかったが
ここまですべての料理を見事に引き立てると同時に、自身もしっかりリースリングらしさを主張。
ボトルシックの真っ只中に在りながら、ここまでのエレガンス...素晴らしい。
イトヨリのロースト、ルタバガのソース。
メインの淡路ビーフには、さすがに白であるリースリングではナンだったが
この辺になるともうかなりお腹が膨れていて、相性なんてどうでもよろしい。お肉は唯々柔らかくて美味しい。
ゴルゴンゾーラのソースは鉄板。
そして、椎茸と淡路米のリゾット。この季節、温かいのは心身に沁みる。
デザートは、ガトーショコラと柿のジェラート。紅茶とともに。
今夜も竹中シェフの料理は素晴らしく、流石の一言。
地元産のいろんな食材が一皿一皿見事な作品に仕上げられていて、一瞬たりとも食べる者を飽きさせない。
そんな中で強いて今夜のベストを挙げるとすれば...やっぱり「鰆と菊芋」かな。
そしてグリュンホイザーもコンディションが良いとは言えない中、精一杯頑張ってくれて大満足である。
いつもなら部屋に帰ってそのまま布団にダイビングするところを
逆流性食道炎予防の観点から2時間は寝るのを我慢して、その後ようやく幸せな眠りに就いたのであった。