日時計と天国
零細とは言え経営者なのでまだまだ片付けるべき雑用は山ほどあれど、一応表向きには今日が仕事納め。
振り返ってみれば、大して何も記憶に残っていないほどあっと言う間に駆け抜けた2019年だったけれど
飲食の面では、寿司や和食とともに日本酒を口にする機会が多くなった煽りでリースリング修行が滞っている。
年越し前にとりあえず今年中にやっておきたかった「モーゼル・お隣さん飲み比べ」だけでも片付けておこう。
ヴェーレナー・ゾンネンウーア（Wehlener Sonnenuhr）と、グラーヒャー・ヒンメルライヒ（Graacher Himmelreich）。
いずれ劣らぬ銘醸畑だが、両畑に区画を所有している一流の生産者となれば
古くはドクター・ローゼン、あとはマルクス・モリトールとシュロス・リーザーぐらいのものだろうか。
そんなリーザー（トーマス・ハーク）が畑のどこら辺の区画を所有しているのかは知らないが
ワイン地図上では両畑はまさにお隣さんである。2017年産のGGで飲み比べてみたが、違いは一目瞭然。
ヴェーレナー・ゾンネンウーア（Wehlener Sonnenuhr）・・・数ある「日時計」の中でも最も名高い畑。
総面積44.3ha。生粋のデボンシーファー風化土壌で、岩石の比率が高く（50%以上）、土壌の深さは中程度。
畑の上縁にある森が水の良好な供給源になっているという。（地図→★）
グラーヒャー・ヒンメルライヒ（Graacher Himmelreich）・・・「天国」の名に相応しい急斜面の畑。（地図→★）
総面積56.7ha。デボンシーファー風化物から成る深い土壌で、粘土含量が低く、部分的に青色シーファーが貫く。
Weinatlas Deutschland, Hallwag 2007, P51より
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2017 Wehlener Sonnenuhr Riesling trocken Grosses Gewaechs
Weingut Schloss Lieser （Lieser/Mosel）
A P Nr 2 589 314 25 18，Alc 12.5%vol，28.00€
緑色がかった輝きのあるレモンイエロー。アプリコットやマンゴーを思わせる果実香に
フローラルとは行かないまでも微妙に華やかなニュアンス。香りは奥行きがあって桃の香りもあり。
口当たりは伸びではなくボリュームのある酸。酸は余韻にたなびく。
果実味はスマートだが相対的にやや大柄で、モーゼル産にしては妥協の無いと言うか、破格の辛口仕立て。
味覚（舌）に対するミネラル味の主張は大人しいが
嗅覚にはシーファー感満載でテロワール感がガンガン伝わって来る感じ。
白桃とまでは行かないが、桃と鉱物のフレーヴァーが秀逸。
このニュアンスに富んだシーファー風味はGGに相応しい風格と言える。
抜栓2日目。酸が大人しくなったせいか全体に落ち着いて、相変わらず鉱物的だが
よくあるシーファー的な土臭さとは無縁のネラルウォーター的な味わい。89→88/100
（過去のヴィンテージ→2016年産）
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2017 Graacher Himmelreich Riesling trocken Grosses Gewaechs
Weingut Schloss Lieser （Lieser/Mosel）
A P Nr 2 589 314 22 18，Alc 12%vol，28.00€
緑色がかったレモンイエロー。熟したリンゴや黄桃を思わせる果実香。相対的に香りが平面的に広がるイメージ。
アタックはまずシャープで伸びの良い発散系の酸、そして果実味はスマートで残糖がしっかり絞られている印象。
そのせいか重心高めで、GGの割に飲み口が軽やか。酸と一体感があるせいかミネラル味の直截な主張は乏しく
金属的で酸主体の、透明感は有るもののちょっと拍子抜けするぐらいアッサリとした味筋。
抜栓直後は明らかに「日時計」に後れを取ってしまったが、時間と共に巻き返しはあるか？
抜栓2日目。果実味はやや肉付きを増し、逆に酸は引っ込んでやけに畏まった味わい。
ミネラル感も地味で、全然シーファーっぽくなくてかえって垢抜けている。
まぁ味わい自体が柑橘系なのでモーゼル産だろうとは判るが
それにしてもリーザーの「天国」はアッサリしている、いや、し過ぎだろ。
抜栓3日目。ようやく土臭いシーファー香が少し立って来た。
果実味もふっくらとしてバランスは良いが、逆に没個性的。ミネラル感が大人しいのが物足りなさの故か。