美魔女は喧嘩せず
冷奴、とろろ、ホウレン草のお浸し、そして鱧の湯引きに刺身の盛り合わせ...と来れば
いつになく日本酒を飲む機会が増えている最近なら当然そうすべきところを
「楽をせず」リースリングを合わせる。これを酔狂と言わずして何と言おう...まだ酔ってないけど。
2002年産のマキシミン・グリュンホイザー・アプツベルク・リースリング・シュペートレーゼ・トロッケン、瓶熟16年。
まだ結構緑の色調が感じられる明るめのレモンイエロー。グラス底には細かい気泡がビッシリ。
よもや2002年産とは思えない若々しい外観である。
香りの方はと言えば、微かに熟成香らしい片鱗は感じられるものの
アプリコットや白桃を感じさせる果実香と上品なペトロール感、清涼感のある香り。予想を大きく裏切る芳香。
口当たりは実に柔らかく、果実味はスマートで軽やか、酸はスーッとエレガントに伸びてフェードアウトしていく。
アフターに軽い残糖感。ミネラル味はいったいどこに溶け込んだのか、混然一体。
そうこうしているうちにグラスの中は湿った木や土の香りに満たされてくる。
「香り重め、飲み口軽やか」な不思議なバランス。味わい的にもまだもっと寝かせれば、より面白いと思う。
軽めながらも飲む度にいつも残糖を感じる。軽い蜂蜜感と軽い熟成感の同居したような余韻が長い。
時間が経つと少し酸が前に出て、程好く力強さも加わる。それにしても若い、不思議なリースリングである。
まるで美魔女、とはウチの嫁さんの言。
尤も今夜の「和」な小鉢メニュー、特に刺身とはまったく喧嘩はしないが、特別相性が良いとも言えず。
「和食との親和性」という点ではもちろん日本酒に全然敵わないけれど、まぁそこそこ健闘はしていると思う。
過去、15年半前と11年半前に2度開けているが、いずれの際も「酸の質の良さ」が強く印象に残っていて
瓶詰めから16年を経てのこの見事な熟成(まだ途上?)は
今ではあまり表立って主張する事も無くなったかもしれない酸...やはりこの秀逸な酸の賜物なのだと思う。
最後の1本は還暦を過ぎてからでも開けようか、元気でいればの話だが。87/100
2002 Maximin Gruenhaeuser Abtsberg Riesling Spaetlese trocken
C. von Schubert'schen Shlosskellerei (Mertesdorf/Ruwer)
A P Nr 3 536 014-25-03,Alc 10.5%vol,12.90€