驚愕のマルティン・ヴァスマー | 緑家のリースリング日記 ~Probieren geht über Studieren~

驚愕のマルティン・ヴァスマー

今秋の新規開拓のテーマは、バーデンのシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)。
先日はオルテナウ地区のダンナー醸造所を試してみたが、残念ながら個人的な嗜好からはズレていた。
今回はグッと南へ下がって、マルクグレーフラーラント地区のマルティン・ヴァスマー醸造所だ。
もちろん飲むのは初めて。2010年産のマルクグレーフラーラント・シュペートブルグンダー・トロッケン。

実はこの「ヴァスマー」。
畏兄weingauさんが時々近所のスーパーで買って開けては重宝がっておられるのを記事で拝見して以来
名前だけは知っていたのだが、いざ飲む段になってから当該の記事を確認してみたところ...あらら?
weingauさんが飲んでおられたのはヴァスマーはヴァスマーでもマルティンじゃなくフリッツ、全く別の蔵でした。
ま、いいや。どっちにしても初めてなんだから。地図で調べてみるとすぐ近所みたいなので、親戚かな?


やや赤紫色がかった暗い色調のルビー。
なめし革系の香りが主体で、黒系のサクランボや木苺が少々、次第にビターチョコや香木の香りがメインとなる。
口当たりは程好い肉付きの果実味と、凝縮感のある見事な酸とが非常にバランス良し。お~っ、コレ美味いなぁ。
バリックも適度に効いており、タンニンも程好く溶け込んでいて見事に纏まっている。
それでもやはり酸が頭半分ほど抜きん出ている感じは、さすがに2010年産である。余韻はアッサリ。

それにしても9ユーロ弱で、この飲み応えと言うか満足感、それなりの高級感はいったい何なのか。
まぁヴィンテージの良さはあるにしても、これはかなりの掘り出し物に違いない。
決してブルゴーニュのピノ・ノワールのように洗練されてはいないが
鋭利な酸を身に纏ったブル・ピノのような、少々御高くとまった感じもしなくて、ド素人にも親しみ易い素朴さ。
それでも3杯目に入るとちょっと飲み飽きするような気がしないでもないのは、やはり価格相応か。

1日とばして翌々日。赤系果実のリッチな香り。相変わらずキリッとした酸に、実入りのしっかりとした赤果実。
タンニンもこなれ過ぎず、心地良い塩梅の収斂味もある。
おまけに程好くバリックも効いているが、決して過剰にはならないこのバランスの良さ。
「おぬし、上のキュヴェとエチケットを貼り間違えられただけなんだろう?」
思わずそう詰め寄りたくなるぐらいの、芳醇な「準」裾モノである。87/100


いやぁ、久しぶりに掘り出し物に巡り会った気がするな~。
まぁ元々ゴーミヨー誌では3つ房評価(最高は5つ房)なので、取り立てて騒ぐ程のEntdeckung(発見)でもないが
10ユーロ足らずの日常消費用レンジでのこの中身は、ハッキリ言って衝撃である。
とは言え大騒ぎするのは、もう1本、一緒に買ってある上のキュヴェを試してからにしよう。

因みにドイツのこんなマイナーな赤、もちろん日本には未入荷だろうと思っていたら
なんと大分県の竹田市がバート・クロッツィンゲン市との姉妹都市交流の一環として直輸入しているとのこと。
(註・輸入されているシュペートブルグンダーは、これとは違って一番ベーシックなものらしい)

ヴァスマー醸造所のHPにはなんと日本語版もあって、何故なんだろうと不思議に思っていたのだが
なるほど、そういう縁があったって訳か(平成元年かららしい)。
日独交流はこんなところにも根付いているんだという事実を、恥ずかしながら改めて思い知った次第である。

2010 Markgraeflerland Spaetburgunder Qualitaetswein Rotwein trocken
Weingut Martin Wassmer (Bad Krozingen-Schlatt/Baden)

A P Nr 3402 11 12,Alc 13.5%vol,8.57€