雑色砂岩と貝殻石灰 | 緑家のリースリング日記 ~Probieren geht über Studieren~

雑色砂岩と貝殻石灰

ワインの味わいには、その葡萄が育った畑の土壌や気候といった物理的環境が反映されるものである。

もちろん葡萄品種の違いや、生産者がどのような考えの下に葡萄の世話をしてどのようにそれを収穫し

そしてどのような手法でもってそれをワインにして瓶詰めしたのかという人為的な要素もまた

ワインの味わいを大きく左右する。

ワインの楽しみ方には、ワインそれ自体の美味しさを味わったり食事に合わせたりする面白さに加えて

このような複雑な要素の絡み合ったパズルに挑むような楽しみ方、つまり謎解きの側面もある。


とは言え、その年のその場所の気候なんていうのは一言で簡単に片付けられるものではないし

栽培や醸造過程に於ける生産者サイドの手法なんてものを素人が云々するのもおこがましい。

そこへ行くと「畑の土壌」というのは(出来る出来ないは別にして)シンプルな単語をいくつか並べるだけで

ワインの大まかな味筋を特定出来そうな響きが感じられる点で、非常に魅力的である。

食事しながらでも常にリースリングを楽しんでいたい、と踏み入れたこの辛口リースリングの世界だが

今やこの「畑の土壌」の謎解きの面白さにドップリと浸かって、ますます深みに嵌って行くばかりである。


さてそうやって少しばかり場数を踏んで来ると、いったい自分が今どれ位のモノなのかを確かめたくなる。

生産年や生産地域、生産者、カテゴリーなどの条件を揃えて、異なる要素は極力少ない方が良い。

そんなボトルをブラインドで開け、嗅覚と味覚、そして想像力をフルに稼働してどれがどれかを利き分ける。

そんな体系が自分の中に構築出来たらなんと素晴らしいことだろう。いや、何より恰好良いじゃないの。

当たった際の爽快感や変な優越感はますます杯を進ませ、外れれば外れたで凹んでヤケ酒を煽る。

一見認知症の予防に良さそうな遊びであるが、脳細胞がアルコールで破壊されてりゃぁ世話はない。


前置きがずいぶん長くなったが、今日のテーマは「土壌の石灰がリースリングの味をどう変えるか」。

これは最近頭の片隅のどこかに常に引っ掛かっている「謎」なのである。題材はレープホルツ醸造所

2011年産のフォム・ブントザントシュタイン(雑色砂岩)Sと、フォム・ムッシェルカルク(貝殻石灰)S。

実はこれ、週末のワイン会の予行演習なのである。


新・緑家のリースリング日記


まず一方から。


緑がかったレモンイエロー。香りは熟したアプリコット系だが閉じ気味で、ややケミカルなニュアンスあり。

スワーリングすると僅かなペトロール感。飲んだ第一印象は、シャープで角の立った切れ味鋭い酸。

こういうのを粉っぽいと表現するのだろうか、その粉っぽいミネラルと酸が合わさってなかなかの収斂味。

果実味は細身。少々ギクシャクしたバランス感でアルコールも立って感じられる。


もう一方と比べると、相対的にドライな味筋。ただ、酸が立ちゃ良いかと言われればそうでもない。

例年飲んでいる雑色砂岩S(→2009年産2010年産 )に比べると面白味に欠ける印象で

尖ったこっちがてっきり貝殻石灰の方かと思ったが...なんとこれこそ雑色砂岩なのであった。( ̄□ ̄;)!!


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翌日はクリーミーな香り。若干フルーティーと言うか、果実味の乗り方で僅かにこっちの方が勝っている。

つまり相対的に肉付きが良い印象で、初日の印象とは逆。

これが3日目になるとアフターにベタッと来る残糖感が目立ち、果実味はサッパリと淡白。

うーん、一体どっちが本来の姿なんだ?余計に混乱してしまった。85/100


2011 Riesling Spaetlese trocken ‘S‘ -vom Buntsandstein-

Weingut Oekonomierat Rebholz (Siebeldingen/Pfalz)

A P Nr 5 069 105 007 12,Alc 12.5%vol,16.80€



もちろんもう一方の方もすっかり勘違いしてしまった訳で...


色はこちらも緑がかったレモンイエローで、差はほとんど判らない。グラス壁に細かい気泡が目立つ。

香りはアプリコットに仄かなナッツ感とフローラルなニュアンス。こちらは丸みを帯びた輪郭の酸。

そのせいか果実味も相対的にふっくらと感じられる。サクサクした淡白なミネラル。

バランスは取れていてこちらの方が美味しいと感じるが、確かに比べて飲むとシャープさには欠ける印象。


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翌日。香りはややクリーミーだが微かにペトロール感。酸もミネラルも相対的に刺々しい。

果実味が淡白なぶん骨格が剥き出しの感あり。開けた当日と印象が逆転しているのは前述の通り。

3日目になるとまた果実に膨らみ感が戻っている。微かにピーチ感あり。

確かに比較ではこっちの方が好印象だが、今のところレープホルツの2011年産はかなり拍子抜けやなぁ。

86/100


2011 Riesling Spaetlese trocken ‘S‘ -vom Muschelkalk-

Weingut Oekonomierat Rebholz (Siebeldingen/Pfalz)

A P Nr 5 069 105 023 12,Alc 13%vol,16.80€


結局、貝殻石灰土壌のリースリングの方が美味しいのだろうか?石灰とはいったい何奴???σ(^_^;)