アナログ親爺の銘酒 | 緑家のリースリング日記 ~Probieren geht über Studieren~

アナログ親爺の銘酒

時間がある時にネットでいろんなサイトを覗くが、相変わらずドイツワインに関する情報は古いものが多い。

ましてや信頼出来る情報が日本語で得られるところなんて本当に1つか2つ、数えるほどしかない。

結局現地のジャーナリズムや愛好家の情報を拾うしかないが、一番確かなのは生産者の発信する情報なので

何かにつけ醸造所のHPを頼りにすることが多い。HPさえあれば通常はワインリストの請求から注文、

訪問の予約、そして各種質問に至るまでメール1本で事足りる。まったく便利な世の中になったものである。


だがその手がまるで通じないアナログな親爺さんもちょくちょくいる訳で

アンスガー・クリュッセラートさんなんかはその好例だろう。ついこないだまではHPもなければメールも通じない。

やっと最近HPだけは出来た ようだが、果たしてちゃんと機能しているのだろうか。

なんとか運良く入手ルートを確保したから良いようなものの、あまりドイツのネット上でも流通してないようなので

彼のリースリングは、直接現地にでも出向かない限りなかなか口にする事が出来ない隠れた名品である。


VDPに加盟していない事が影響しているのかもしれないが、とにかく高品質な割には知名度は高くない。

ご本人の殊更積極的に売ろうともしない至ってマイペースな様子を見ると

さすがにこれだけの逸品、既に充分顧客は付いており、放っておいても売れてしまうのだろう。

ボルドーやブルゴーニュのように、将来どこぞの大国の成金達が目を付けて高騰しない事を願うばかりである。

今夜は辛口のトップキュヴェ、トリッテンハイマー・アポテーケ・トロッケンの2010年産を開けることにした。


新・緑家のリースリング日記


色は僅かに緑がかったレモンイエロー。香りは熟したリンゴや桃、アプリコット、花梨、仄かに蜂蜜感があって

香りに奥行きがある。アタックの酸は意外に柔らかく、乾いた石っぽいミネラル味との小ぢんまりとした一体感。

果実味はこれまた香りからは意外なほど小柄で、ただギュッと密に身が詰まった感覚。

黄~白桃のフレーヴァーが嬉しい。全体としては均整が取れているが、小柄な酒躯。とにかく香りが深い。

時間とともに熟したパイナップルやバナナが顔を覗かせ、味わいにも凝縮感が増すのはいつものパターン。

ほんのり蜂蜜の余韻が持続する。徐々に酸が本領を発揮。これに呼応するかの如く果実味も凝縮感を増す。

程好い酸、程好い果実味、そして程好いミネラル。いや~素晴らしい辛口リースリングである。


翌日は酸が引っ込んで果実味主体のバランス。ミネラルが後ろに控えたままなのが意外。

いつもならグッと焦げ臭いシーファー味が幅を利かせる筈なのだが、2010年産は例年に増してバランスが良い。

強いて言えば、2日目はやや水っぽいところが見え隠れするようなしないような。90/100

(過去のヴィンテージはこちら→2008年産2009年産

2010 Trittenheimer Apotheke Riesling Qualitaetswein trocken

Weingut Ansgar Cluesserath (Tritteheim/Mosel)

A P Nr 2 607 269 10 11,Alc 12%vol,16.90€