瓶詰め2年にしての飲み頃感
今頃ドイツ各地の醸造所では、2010年産リースリングの瓶詰め作業に慌しいところが多いに違いない。
もちろん瓶詰めどころか、もう既に売り出されている新酒も見かけないことはないが
あいにく贔屓にしている生産者はリリースの遅いところが多い。
シュロス・ザールシュタイン醸造所 なんて、今時分きっと瓶詰め真っ只中なのではなかろうか。
ふとワイン庫を覗いてみると、2008年産のQbAトロッケンがあと1本だけ残っている。もう飲み切ってしまおう。
1年半ほど前 に飲んだ際には「こりゃまだ置いとかんとイカンなぁ」と考え、そのまま放置してあったのだが
瓶詰め2年ならもうよかろう。それに新しいヴィンテージを仕入れるには保管場所も確保しなきゃいけないし。
淡黄緑色。地味な果実香は青リンゴや梨を思わせる。シャープな酸はほどほどに攻撃的でスーッと良く伸びる。
果実味は細身だが決して痩せておらず、平板ながらも密度の濃いミネラル。なかなかまとまりが良くなっている。
もちろん当初のぎこちないまでのフレッシュ感であるとか、躍動感などといったものは薄れており
時折感じられる梅の花や塩ビ系の黄昏チックな香りが、時の流れの速さを物語っているようでちょっと寂しい。
それでも飲むほどに酸の凝縮感は強烈でさすがは2008年産、ボトル半分も飲めば胃がキュルキュルし始めた。
やはり酸の強さは傑出しており、これほどまでにインパクトのある酸はやはり近年では2008年が断トツであろう。
翌日は全体にやや丸みを帯びて柔らかくなり、それでいて元気さも健在。
新鮮さが薄れたところを割り引いても、2年前 や1年半前と比べてなお飲み頃感あり。85/100
酸フェチにとって瓶詰め2年で漸く飲み頃という感じだから、一般感覚ではまだまだ取っ付き難いかもしれない。
いずれにしても「QbAには将来性が無い」などと物知り顔に吹聴するなど愚の骨頂で、こんな例外もあるのだ。
ただ、たかがこの酸の強い生産年に於いて、安価なQbAの飲み頃をこうやって2年後と特定出来たとして
毎年リーズナブルな価格でその生産年の特徴を反映した若々しい新酒が売り出されて来る訳であるから
大して意味が無いとも言える。
「今年は酸が強いから飲み頃は再来年かなぁ」とか、「今年は果実味が勝つからここらしくないなぁ」とか
ぶつくさ言いながら1年程で飲み切ってしまうのが、このクラスのリースリングの正しい飲み方なのかもしれない。
2008 Riesling Qualitaetswein trocken
Weingut Schloss Saarstein (Serrig/Saar)
A P Nr 3 555 014 04 09,Alc 11.5%vol,6.30€