2010年の〆はフォン・ヴィニングで | 緑家のリースリング日記 ~Probieren geht über Studieren~

2010年の〆はフォン・ヴィニングで

大晦日の今日は本当に寒かった。

日頃大半の時間を室内で過ごしているせいか寒波と言ってもさほどピンと来ないのだが、今日の寒さは堪えた。

特に買い出しを済ませて帰りに寄ったお墓周りの掃除の際、痛くて指がちぎれるかと思うほど水の冷たいこと。

そんな訳で帰宅した頃には身体も芯から冷えて、最後の大掃除をする気力などすっかり失せてしまっていた。

幸い嫁さんの許しも出たので書斎の掃除は寒波が緩んでからという事にして、早々と今年最後の晩酌に突入。


2010年の最後に開けるのは、プファルツのフォン・ヴィニング醸造所 のケーニヒスバッハー・エルベルク辛口。

御存知の向きもおられるかと思うが、名門ドクター・ダインハート醸造所は2007年の終わりにオーナーが代わり

2009年からはフォン・ヴィニングvon Winningと改称されて新たな経営者の下、醸造所は再スタートしている。

エチケットも斬新なデザインに一新され、以前ののどかな風景柄を知る者は一抹の寂しさを感じないでもないが

リストには「ダインハート」ブランドと「ヴィニング」ブランドの物が混在しており、僅かにその名残を留めている。

両者がどのように差別化されているのかは知らないが、前者に比べて後者の値付けが高くなっていることから

醸造所自体が今後高級化路線を歩む方針であることは明らかである。ダインハート醸造所のワインと言えば

品質に比してかなり割安感があったものだが、残念ながらそれは過去の話となりつつあるようである。


新・緑家のリースリング日記


立派なGGタイプのボトル。淡黄緑色。熟したアプリコット、完熟バナナ、パイナップルなど芳醇な果実香。

穏やかな酸は意外に伸びが良く量感豊か。果実味はやや重心が低くドッシリと。この果実味に埋没しつつも

砂を噛むようなミネラル味。アフターにややカテキンっぽい渋味あり。味わい全体としては凝縮感に欠けるが

熟した果実と重量感のあるミネラルの組み合わせ。保水力に富んだ重い泥灰岩土壌を良く反映した味わい。

軽くローストアーモンドの香り。時間が経つと仄かにフローラルな香りと樽っぽい湿った木のニュアンスが加わる。

86/100


ダインハート時代に比べて収量を絞ったのだろうか、以前の良い意味での軽さが影を潜めたかの印象を受ける。

それでもほんのりと燻製っぽさを湛えた、地酒の趣のある優しい飲み口にはあまり変化はないようである。

気軽にフラッと立ち寄れば、気さくな醸造親方が冗談を交えつつ客を楽しませてくれる大衆酒場のような試飲室。

そんな開放的な雰囲気は経営者やスタッフが新しくなっても変わらず残っているのだろうか。そんな事をふと思う。


そう言えば過去に訪問したところで、現在では経営者が代わって別の醸造所になってしまったところとしては

この旧ダインハート醸造所 の他にザールのベルト・ジモン醸造所 (現ドクター・ジーメンス醸造所)もそうである。

奇しくも両醸造所ともに造り手の温かい人柄に触れることが出来、非常に居心地の良い試飲をさせてもらった

思い出深い生産者である。当時は近い将来売却されてその歴史が塗り替えられるなんて予想もしない事であり

今頃あの人達はどうしているんだろうかなんて、新しいエチケットを眺める度にリースリングのミネラル味にも似た

ちょっとホロ苦い感傷に浸ったりもするのである。


2009 Koenigsbacher Oelberg Riesling Qualitaetswein trocken

Weingut von Winning (Deidesheim/Pfalz)

A P Nr 5 106 327 059 10,Alc 12.5%vol,12.62€