前回、愛着理論とアートのカンファレンスの記事の中で、ジョン・ボルビィの愛着理論(Attachment Theory)は、イギリスのアート心理療法で多く取り入れられている事を書きました。このジョン・ボルビィの愛着理論は、イギリスの心理療法にも多く取り入れられているのですが、実際メンタルヘルスにどのように役立つのかを説明したいと思います。
愛着理論は、1950年代ジョン・ボルビーによって、ダーウィンのような動物の行動を観察した動物行動学をヒントに、母と幼児の心の関連性を観察し、どのように親子の絆が情緒の発達するかを考えました。行動学と、基の心理療法とは分野が異なるため、当時の心理療法士からは異端児扱いされていたみたいですが、現在のイギリスの心理療法士や心理カウンセリングを提供する慈善団体やソーシャルワークのトレーニング等で多く取り入れられている理論であると思います。
自分の身に危険を案じて不安を感じた時や、辛い時、あなたはどのように安心感や安全を得ようとしますか?この安心感を得るために、どのような行動に出るのでしょう?
大人になっても、子供時代に得た行動が基になって、現在の行動に反映される場合も多いと考えて、不安な状況に対応する行動にまず気づいてあげる事が大事ととらえます。
そして、どのようにこの行動や対応の仕方に工夫をしたら、より健康的に安心感を求める行動を体験できるか、というのを探ってみたりします。
ある人は、親しい感情を伝える事や、助けが必要な時にお互い頼りあったりする事ができて、自己や対人関係にたいして、ポジティブなイメージをもっているので、一人になった時や、他人に受け入れてもらえない状況でもあまり気にしない行動パターン(安心型 /secure)がみられるようです。
また、ある人は、親密な対人関係を求めている反面、親しい関係の中で価値観や親密度のズレに不快・不安になり、相手からの反応や受容などを多く求める行動パターン(不安型 /anxious–preoccupied)がみられる事があります。自己や対人関係にたいして、安心型の人よりもややネガティブなイメージをもち、自己イメージの方が対人関係のイメージより低いです。相手からの反応が足りないと、自己イメージに悪影響し、高ぶった感情を表したり衝動的な行動がみられるようです。
また、ひとりでも平気で、自立精神が強く、大変な時でも自分でなんでもこなす事が大事と感じる人は、他人が助けを求めた時に自分に頼られる事があっても、他人に頼る事は自立を妨げると感じる事から愛着を回避する行動パターン(退去-回避 /dismissive–avoidant)がみられることがあります。基の愛着対象(母)から安らぎを受け入られなかった体験から、対人関係の必要性に否定的だったり、愛着をはぐくむような感情を表すのを抑えたりするようです。自己イメージは高い反面、対人関係のイメージは低いです。
性的虐待など、対人関係にかかわるトラウマを経験された方に多く、親密な対人関係は不快なのに、親密になりたい反面、親しくなりすぎると相手に傷つけられるという不安から、信用できないまま、相手に頼ってしまう行動パターン(恐れ-回避 /fearful–avoidant)。退去-回避の人のように感情表現を抑えて、自己と対人関係にの両方に対してネガティブなイメージ強く、愛着をはぐくむ行動を疑ってしまうようです。
この愛着理論をセラピーに取り入れた時にどうなるかを端的にまとめると、
自己イメージや対人関係のイメージが低くなっている部分や不安な状況に対応する行動に気づく そして、セラピストとの対話ややりとりを通じて、辛い、不安な状況に対して一緒に向き合い、いたわる体験をする この経験を重ねていくうちに、すこしずつ自己イメージや対人関係のイメージがポジティブな方向へ向かっていく 不安になった時、安心型のパターンに近い対応方法(earned secure)を身に着ける事で、生活の中でのメンタルヘルスの改善になっていく どうでしょうか?
感情を言葉に表すのが苦手で難しいけれど、今の辛い状況からの解放感、安心感を体験してみたい方は、アートなど、言葉以外の「イメージ」で表現しながら、一緒に辛い気持ちをいたわってみませんか?
ロンドンの、フィンチリーセントラルのコンサルティングルームで、お待ちしております。
JPArtTherapy.uk | ゼントナーみちよ 英国アートセラピー協会公認アートセラピストhttp://www.jparttherapy.uk/index_jp.html
コンサルティングルームのご近所、アベニューハウスの庭園で冬の朝日を浴びる