皆さんにも心から尊敬できる恩師と呼べる存在はいらっしゃるでしょうか。
私にはFIRE前のお仕事でお世話になった、人生観にも大きな影響を与えることになった一人の師がいます。
その方は業務上のあるプロジェクトをきっかけに懇意にしていただくようになりました。
地方の国立大教授で、人望もあつく、学部長を歴任されたいわゆる人格者です。
ただご本人は「自分の研究室があるだけでありがたい」と控えめに笑うような、地位や名誉に無頓着な方でした。
理工学の研究者でありながらビジネスにも精通し、学内のみならず行政や民間企業にも驚くほど広い人脈を持っておられました。
何より、誰に対しても決して偉ぶることがありません。
好奇心旺盛で、どんな些細なことでも「それは面白いね」と目を輝かせ、遊びにも全力で取り組む。
最新のブームに至るまで幅広く情報を網羅されているその探究心にはいつも圧倒されるばかりでした。
先生のコミュニケーションには、相手の心を動かし、自然と前向きにさせる美しい「型」がありました。
私の説明や提案に対しても先生は常に4つのステップで向き合ってくださいました。
1. 常に「感謝」の気持ちを伝える:どのような提案であってもまずは「とてもわかりやすく説明してくれてありがとう」という感謝の言葉から始まります。この一言で、こちらの緊張は解け、対等な対話の土壌が整うのを感じました。
2. 丁寧な「確認と質問」:単に聞き流すのではなく「ここはどういう意味かな?」「この部分をもっと詳しく知りたい」といった、純粋な好奇心に基づいた質問を投げかけられます。説明が足りない部分を優しく埋めてくださるような問いかけでした。
3. 決して否定せず「異なる視点」を提示する:私の話を否定することは絶対にありませんでした。「その考えは面白いね。別の角度から見るとこんな可能性もあるんじゃないかな」と私の視界を広げるようなアイデアや気づきを与えてくださるのです。
4. 具体的な「サポート」の提示:対話の締めくくりには必ず「私にできることはあるかな」と手を差し伸べてくださいました。豊富な人脈の中から「この人を紹介しようか」と具体的なアクションを提示してくださるその姿勢には毎回深く感銘しました。
全力でぶつかってくるなら同じだけの熱量で返すのが礼儀とばかりに何事にも真剣に向き合ってくれました。
プロジェクトを通じて未熟だった私をどれほど成長させてくれたか、その価値は計り知れません。
やがて部署も変わりプロジェクトを後輩に引き継いだ後も、出張でその地域を訪れるたび先生にご連絡を差しあげていました。
その都度、ほんの僅かな時間でも多忙を極めるスケジュールを割いて談笑にお付き合いくださる、そんな方でした。
そのお人柄を通じて、知的好奇心を持ち続けること、他者の意見を尊重すること、そして惜しみなく力を貸すことなど、人としてあるべき姿勢を学ばせていただいたと思っています。
出会いは偶然の産物。
その時、その場所で生業を得たからこそ繋がったこ゚縁。
これまでの半生で一人でも心から尊敬できる存在に出会えたことに私は大きな価値を感じていますし感謝しています。
お粗末さまでした。
