因幡の白兎のブログ -3ページ目

因幡の白兎のブログ

日本古代史、神話から日本の古代の真実を紐解きたいと思っております。


太陽風が支配する太陽圏の境界、ヘリオポーズを越え、星と星の間の空間へ進むボイジャー。太陽系の外へ向かう探査機の旅は、私たち人類の知識の境界をも少しずつ広げています。

1.私たちは、太陽系のどこに住んでいるのだろう

夜空を見上げると、無数の星が輝いています。

その星々の一つが、私たちの太陽です。

太陽の周りには、地球をはじめとする惑星が回り、小惑星や彗星など、さまざまな天体が存在しています。これらをまとめて、私たちは太陽系と呼んでいます。

地球は、その太陽系の中にある小さな惑星です。

しかし、太陽系は惑星の軌道だけで終わっているわけではありません。太陽からは、太陽風と呼ばれる電気を帯びた粒子の流れが絶えず吹き出しています。

この太陽風は、宇宙空間へ広がり、太陽の周囲に大きな領域を形づくっています。

その領域を太陽圏と呼びます。

では、太陽圏の外側には、何があるのでしょうか。

その問いに、実際の旅を通して答えを届けてくれている探査機があります。

ボイジャー1号と2号です。

2.1977年、二つの探査機が旅立った

ボイジャー1号と2号は、1977年に相次いで打ち上げられました。

目的は、木星や土星など、太陽系の外側にある惑星を詳しく調べることでした。

人類はそれまでにも宇宙へ探査機を送り出していましたが、ボイジャー計画は、遠くの惑星を訪れ、その姿や環境を直接調べる大きな挑戦でした。

探査機は木星や土星に接近し、地球から望遠鏡で見るだけでは分からなかった特徴を観測しました。

木星の大気の模様、土星の壮大な環、衛星の地形や表面の様子。

遠い世界の姿が、次々と地球へ送られてきたのです。

さらに、惑星の重力を利用して進行方向や速度を変える「スイングバイ」という技術も、探査機の旅を支えました。

惑星の重力をうまく利用することで、燃料を節約しながら、より遠くの宇宙へ向かうことができるのです。

こうしてボイジャーは、当初の惑星探査を超えて、太陽系の外縁へと向かう長い旅を続けることになりました。

3.太陽圏には、目に見えない境界がある

太陽は光を放つだけでなく、太陽風も吹き出しています。

太陽風は、太陽から遠ざかるにつれて周囲の星間空間の影響を受け、やがて勢いを失っていきます。

その先には、太陽風の影響が強く及ぶ領域と、星と星の間に広がる物質が存在する領域との境界があります。

これが「ヘリオポーズ」と呼ばれる場所です。

ボイジャー1号は2012年、ボイジャー2号は2018年に、このヘリオポーズを越えたと考えられています。

これは、人類が送り出した探査機が、太陽圏の外側にある星間空間へ到達したことを意味します。

ただし、ここで注意したいことがあります。

太陽圏の境界を越えたからといって、太陽の重力が及ばなくなったわけではありません。

太陽圏は、主に太陽風と星間空間との関係によって形づくられる領域です。一方、太陽の重力が支配する範囲は、それよりはるかに遠くまで及びます。

この二つは、同じものではないのです。

4.太陽系を出るとは、どういうことなのか

私たちは日常的に「太陽系の外へ出る」と表現します。

しかし、太陽系の外縁には、はっきりした壁や門があるわけではありません。

太陽から遠ざかるにつれて、太陽の影響は少しずつ弱くなり、周囲の星々や星間空間の影響が重要になっていきます。

太陽の重力にゆるく結びついた彗星などが存在すると考えられる、オールトの雲という広大な領域もあります。その広がりは十分には分かっておらず、太陽系の重力的な領域をどこまでと考えるかによって、「太陽系の端」の意味も変わってきます。

つまり、ヘリオポーズを越えたことと、太陽の重力圏を完全に抜けたことは別の話なのです。

ボイジャーは太陽圏の外へ出ましたが、太陽の重力の影響が及ぶ広大な空間を、なお進み続けています。

宇宙には、人間が地図に引くような明確な境界線が、必ずしも存在するわけではありません。

境界とは何か。どこまでを一つの世界と呼ぶのか。

ボイジャーの旅は、そうした問いまで私たちに投げかけています。

5.太陽系の外にも、何もないわけではない

星と星の間の空間というと、何もない真っ暗な世界を想像するかもしれません。

しかし、星間空間にも、希薄なガスや塵、磁場、宇宙線などが存在しています。

地球の大気と比べれば、物質の密度は極めて低いものです。それでも、完全な空白ではありません。

ボイジャーは、搭載された観測機器を使い、星間空間の粒子や磁場などについて貴重なデータを送り続けてきました。

地球にいる私たちは、遠い星間空間へ直接出かけていくことはできません。

それでも、探査機を送り出し、そこから届く信号を読み解くことで、私たちの住む太陽系の外側がどのような環境なのかを知ることができます。

それは、人類の「見る力」が、地球の表面や望遠鏡の視界を越えて、実際に探査機を送り込んだ場所へ広がったということでもあります。

6.何百億kmの彼方から、今も信号が届く

ボイジャーは、地球から何百億kmも離れた場所を旅しています。

そこから送られる電波は、地球に届くまで長い時間をかけて宇宙空間を進みます。信号は極めて弱くなりますが、地球の巨大なアンテナと精密な受信技術によって、今も通信が続けられています。

第5回で考えたように、これは単に送信機の出力が大きいから実現できることではありません。

電波を効率よく送り出すアンテナ、探査機の向きを保つ技術、地球側の巨大な受信設備、そして微弱な信号から情報を取り出す技術。それらが一体となって、遠い探査機と地球を結んでいます。

かつて10Wの無線機で遠くの人と交信された経験をお持ちの方なら、電波が目に見えない空間を越えて届くことの不思議さを、身近に感じられるのではないでしょうか。

アマチュア無線とボイジャーの通信は、周波数やアンテナ、電波の伝わり方も大きく異なります。それでも、見えない電波を使って遠くの相手とつながろうとする点には、共通するものがあります。

ボイジャーの信号は、遠い世界から届く、科学のためのメッセージです。

その信号を受け取ることで、私たちは自分たちの住む太陽系の姿を、少しずつ理解していくことができます。

おわりに――境界の向こうに広がる世界

1977年に地球を旅立ったボイジャーは、惑星を訪れ、太陽圏の境界を越え、星間空間へと進みました。

その旅は、人類が宇宙について知る範囲を大きく広げました。

けれども、ボイジャーが到達した場所は、宇宙全体から見れば、まだほんの一角にすぎません。

太陽系の外には無数の星があり、その星々の周りにも、惑星が存在する可能性があります。さらに、その先には銀河が広がり、銀河の外にも、想像を超える宇宙が広がっています。

私たちは、そのすべてを知っているわけではありません。

だからこそ、知ろうとするのです。

生命が周囲の世界を感じ取り、人類が望遠鏡を作り、電波を使い、探査機を宇宙へ送り出してきた。その歩みは、未知の世界を知りたいという思いに支えられてきました。

ボイジャーの旅は、単に遠くへ進む旅ではありません。

それは、人類の知識の境界を少しずつ押し広げる旅でもあります。

次回は、ボイジャーに搭載された「ゴールデンレコード」について考えてみたいと思います。

人類はなぜ、遠い宇宙へ向かう探査機に、地球の音や画像を記録したレコードを載せたのでしょうか。

そこには、科学技術だけでは語り尽くせない、人類の思いが込められているのです。