新型コロナとの共存に必要な厳しくも重要な現実を直視する | 上祐史浩

上祐史浩

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新型コロナとの共存に必要な

厳しくも重要な現実を直視する

 

 

 皆が今、新型コロナウイルスとの共存と主張する。しかし、共存という言葉が先行していて、その具体的な意味は必ずしも明確ではない。

 

 率直に言えば、最初は緊急事態宣言で外出自粛・休業要請をしたものの、経済的な問題で続けることは出来ず、経済活動を再開せざるを得なくなった時から「共存」ということが言われ始めたと思う。

 

 しかし、いざ経済活動を再開してみると、同時に検査を拡大したこともあり、死亡者・重傷者は急増していないものの、PCR検査で、陽性と判明した人の数は過去最大となった。

 

 第一波の時とは検査数が異なるので、実際に今が過去最大の感染者数なのかは分からないが、入院者が急増し、重傷者もじわりと増えてきたのは確かな状況の中で、目指すべき新型コロナとの共存の具体的な意味が問われていると思う。

 

 具体的な「共存」の意味の候補としては、医療崩壊を起こさない範囲で、一定数の感染者を受容して、経済活動の停止なしにやっていく社会を作るということだろう。

 

 そして、最もわかりやすい表現としては、既に人類社会が共存していると言うことが出来る季節性インフルエンザや、肺炎を引き起こす肺炎球菌感染症といった既存の感染症と同じように扱っていくことだと思う。

 

 そして、あまり明確には言われないが、この前提として、専門家のトップの人(例えば阪大の宮坂教授)たちが既に言い出しているように、新型コロナのワクチンが開発できても、それが絶対的な決め手にならないという可能性がある。

 

 様々な感染症の中には、一度ワクチン接種すれば一生予防できる「強いワクチン」もある。しかし、インフルエンザや肺炎球菌感染症のワクチンは、ご存知の通り、接種しても100%予防できるわけではなく、感染の確率を下げられるものである、

 

 しかも、寿命があって何度も接種が必要である(インフルエンザは毎年必要で、肺炎球菌のワクチンは寿命が5年)。
更に、インフルエンザは変異するので、多種のワクチンの開発とその接種が必要である(現在四種のワクチンを同時に摂取している)。こうしたワクチンを宮坂教授は「弱いワクチン」と表現している。

 

 新型コロナのワクチンも、これまでの研究報告から見れば、絶対的なものにはなりにくい。抗体のでき方が遅く、弱く、寿命があるという報告が多く、そのため、ワクチンが開発できても寿命があると思われる。すると、何度も打つ必要がある可能性があり、大量に安く生産する必要が生じる。

 

 更に、新型コロナも感染が拡大する中で、変異をしているので、将来的にはインフルエンザと同じように、多種のワクチン開発が必要になるかもしれない。こうして、総合的に見て、新型コロナに関しては、強いワクチンは期待しずらく、弱いワクチンになる可能性がある。

 

 その結果として、毎年インフルエンザを直接の死因とする死亡者が3000人強、インフルエンザをきっかけに肺炎などの別の病気になって死亡するインフルエンザ関連死を含めると約1万人が死亡していると推計されている。

 

 また、肺炎球菌は、毎年約10万人が死亡する肺炎の2割弱の原因になっている。いずれも死亡するのは、高齢者が約9割だという。
 
 そうすると、新型コロナとの共存とは、単に医療崩壊を防ぐだけではなく、感染した場合に重症化・死亡する恐れがある感染弱者の保護に最大限努めつつも、インフルや肺炎球菌と同じように、一定数の死亡者は、社会として受容することを意味することになる。

 

 一定数の犠牲者が出ても、インフルや肺炎のように、経済活動を止めないということは、交通事故で毎年数千人の死亡者が出ても、車両の使用を止めないことと同じというと、分かりやすいかもしれない。止めるメリットより止めるデメリットの方が大きいからだ。

 

 よって、今後予想されるやむを得ない新型コロナ死亡者数が、インフルや肺炎球菌や交通事故の死亡者数と比較してどのくらい者になるかがポイントとなる。これを試算したのが高橋泰教授である。

 

 教授は、欧米では既に広く感染が広がっていることや、最近感染が判明した日本人の多くが無症状や軽症であることから、既に数割の日本人は新型コロナの感染を経験しているが、自然免疫等で感染を排除していると推定した。

 

 それに基づいて今後予想される新型コロナウイルスの死亡者数は、毎年のインフルや交通事故の死亡者並みの3800人と試算した。詳細はこちら:https://toyokeizai.net/articles/-/363402

 

 肺炎では高齢者中心に、毎年10万人が死亡している。癌・脳血管疾患・心臓病では、それよりはるかに多くの人が、やはり高齢者を中心に死亡している。

 

 一方、新型コロナ対策で経済が悪化して失業者が増えれば、自殺者が増えるという見方もある。その場合、過去の統計データから試算すると、失業者1%増に対して、数千人の自殺者増となるという。

 

※参考情報:
https://www.landerblue.co.jp/51382/
http://agora-web.jp/archives/2047170.html
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61429?page=3

 

 この視点は、突き詰めれば、人は、必ずなんかの理由で死ぬものだという諦観・無常観に基づくものだろう。

 現場の医師の中にも、今回の新型コロナ問題に関しては、高齢者の死亡原因が新型コロナに変わるだけではないか、という見方をする人がいると言う。

 

 少々乱暴な見方で反発を感じる人もいるかもしれないが、冷静に数字を見れば、コロナで死ななければインフルで、肺炎球菌で、結核で死ぬかもしれないと思われる事実もある。

 

 ウイルス干渉と言って、異なる感染症には同時にかからないという現象があるとされているが、今年のインフルの感染者は例年に比べて大幅に少なく、それが新型コロナの流行によるものではという専門家の見解がある(京大の上久保教授など)。

 

※参考情報
https://diamond.jp/articles/-/238988?page=7
https://www.youtube.com/watch?v=hF0HBmIFWMs

 

 更に、実際に今年前半の日本の死亡者総数は、新型コロナの問題があっても、欧米とは異なって平年を下回っている事実がある(下記参考情報の参照。新型コロナ対策による衛生環境の向上なども原因と推測されているが)。

 

※参考情報:https://gemmed.ghc-j.com/?p=34726

 

 そして、大局的に見れば、現代社会に新型感染症が続発している根本原因は、経済的な利益のために無秩序な自然開発や野生動物の売買をしことだ。生息地を奪われたコロナウイルスが、変異して人間の体を新たな住処としようとしたのである(さもなければコロナは絶滅することになる)。

 

 このように、新型コロナを含めた新型感染症に対して、人類社会側に大きな原罪があるならば、個々の犠牲者の方の存在は大変痛ましいことであるが、社会全体としては、ワクチン開発等の最大限の対策を取っても避けられない被害は、それを甘受すべき道理があると考える必要もあるではないか。

 

 こうして一定の犠牲者を甘受する必要を考えると、それを最小限にするために、問題の根本原因の解消に対して、しっかり目を向ける必要性も理解されると思う。

 

 すなわち、社会全体としては、経済的な利益ばかりを重視した無秩序な自然開発を抑制すること。そして、個々人としては、同じように快楽の過剰な追及のため、生活習慣を乱して自然免疫の低下を招くことをなるべく慎むことだ。

 

 新型コロナが教えることとして、私たちの日々の生き方・行動が、新型感染症の発生・流行・被害と、密接不可分にかかわりあっている世界に住んでいるということだと思う。

 

※注
 日本人の抗体検査では、陽性反応の人が数%から1%以下であるが、今現在の抗体検査では、日本人の感染経験は判明せず、実際には、数割ないし大半の日本人が、既に感染経験があり、免疫があるという主張がある(前出の高橋泰教授や京都大学の上久保教授など)。
 その理由の推定としては、➀自然免疫等で感染を退けた場合は、抗体が作られる必要がないので、その人に抗体がなくても、感染経験がないと言えないこと(高橋教授)、②抗体の有無(陽性・陰性)を判断する基準であるカットオフ値が不合理に高すぎて、誤って陰性と判断される可能性があること(上久保教授)などがある。
 免疫学も発展途上であり、抗体だけを免疫力と考える考え方は古い免疫の考え方であると阪大の宮坂教授も述べている。

 

 

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※ご参考

ヨーガは、免疫力を含めた健康の増進に役立つという研究報告をご紹介します。

 

➀「米国精神医学誌」研究報告
 
https://funq.jp/yogini/article/563776/ 
②「カウンセリング研究」学会誌の研究論文
 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cou/44/2/44_110/_pdf 
③「国際行動医学会」研究論文
 
https://www.futek.co.jp/achievement/pdf/yoganokokyuu.pdf
④「大阪経大論集」(大阪経済大学の研究論文)
 
https://is.gd/IkTvdC 
⑤「社会医学研究」学会の研究論文
 
http://jssm.umin.jp/report/no36-1/36_1_08.pdf 
⑦厚生労働省HP:ヨーガと感染症:肺結核
 
https://www.ejim.ncgg.go.jp/doc/pdf/yoga/1-kansensyou-1.pdf
⑧厚生労働省HP:ヨーガと感染症:HIV
 
https://www.ejim.ncgg.go.jp/doc/pdf/yoga/1-kansensyou-2.pdf
⑨米国ハーバード大・メディカルスクールの研究
 
https://is.gd/y6k6VO 
⑩その他のヨーガに効果の資料
 
https://is.gd/ZHE1Kw

 

 なお、本稿は、ヨーガ・瞑想の実践による新型コロナの感染予防効果を調査した研究を紹介したり、その効果を保証するものではありませんので、ご注意ください。