犯罪と社会と心の問題 第1回 はじめに | 上祐史浩

上祐史浩

オフィシャルブログ ―― 21世紀の思想の創造

                       犯罪と社会と心の問題 第1回
           はじめに 最近の状況に思うこと


 今年は、サリン事件から20年でしたが、その後も、事件関連も出版や、特異な精神状態による犯罪に関する出版や死刑の執行などが続き、犯罪と社会に関して、いろいろと思うことがありました。

 ここに書くことは、自分の体験に基づき、ずっと考えてきたことですが、今まで書くことを控えてきたことです。その理由の一つは、オウムの過去の罪のために「お前がそれを言うな」とか、といった見られ方をすることです。

 しかし、最近、酒鬼薔薇聖斗と自称した元少年が出版した「絶歌」と題する本に関して、精神病理的な犯罪の原因の研究と被害者遺族の賠償の促進に関して、ツィッターで思うことを書いたところ、「お前が」という書き込みが一件はあったものの、その一方で、多くの方のリツィートしていただき、さらには、ウキペディアなどにも引用されました。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%B6%E6%AD%8C

 そこで、経験がある者だからこそ分かるのではなどと思われ、私の考えを知りたい方も少なからずいらっしゃると思いました。それに加え、最近の状況に「このままでは」などと思いが相当強くなってきたので、あえて書くことにしました。  

 まず、私の立場ですが、私は、地下鉄や松本のサリン事件という戦後史上最大の凶悪犯罪をなしたオウム真理教の最高幹部の一人でしたが、その犯罪に関与した者が死刑や無期判決を受ける中で、様々な理由で重大事件に直接関与はせずに、偽証罪で3年の刑を受けて服役・出所しました。

 その後、2007年にアレフ(旧オウム真理教)を脱会し、今現在、宗教ではなく、仏教哲学や心理学を学ぶ教室である「ひかりの輪」の代表を務めています(詳しくは。http://www.joyu.jp/hikarinowa/overview/

 また、ひかりの輪を創設したメンバーは、2007年までは、アレフに在籍しており、その前の2000年に、オウム事件の被害者団体と賠償契約を締結した経緯があり、脱会後はオウムの教義・教材を一切捨てて新しい道を歩んでいますが、その証とするためにも、ひかりの輪として、改めて賠償契約を締結して実行しています(詳しくは、http://hikarinowa.net/public-info/recompense/)。

 また、適切・適法な団体の運営のために、2011年に、外部監査委員会を設置しています(松本サリン事件の被害者遺族であり、長野公安委員会の河野義行氏に委員長に就任していただきました。http://hikarinowa-gaibukansa.jp/

 さて、なぜ私が重大事件に関与しなかったのかは、教祖(麻原彰晃)が絶対的な立場にあり、その指示を受けて弟子たちが犯罪を犯す構造だったがゆえに、自分でもよくわかりません。自分の性格や教祖の思惑など、いろいろなことが言われています(例えば、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E7%A5%90%E5%8F%B2%E6%B5%A9)。

 細かいことはともかく、私は、結果として重大犯罪の直接関与者にはなりませんでしたが、犯罪を肯定する思想をもった教祖・教団を信じ、その最高幹部の一人だったものとして、重大な道義的な責任を有する立場です。とお

 また、その教団自体は脱会しましたが、上記の経緯によって、依然として、その事件の賠償を実行する団体の代表を務めており、その意味で、加害者側団体の代表とも見られる立場にあります。こうした意味で、重大犯罪の直接加害者ではありませんが、私ほど、それに近い立場にいる(と見られている)人は、なかなかいらっしゃらないように思います。

 さて、次回から、本論に入らせていただきたいと思いますが、その前に、本日、6月27日は、松本サリン事件から21年目となります。

 そこで、団体として、本日付で賠償金の一部をお支払いしたことをご報告すると共に、被害者遺族の方々に改めて深くお詫び申し上げ、亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。