心の安定のための思考法 第11回 どうしたら心を変えることができるか | 上祐史浩

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       心の安定のための思考法 第11回
     どうしたら心の持ち方を変えることができるか
  
 
 心の持ち方を変えることで、様々な苦しみがなくなるとお話してきました。具体的には、卑屈、コンプレックス、妬み、不安・恐怖、怒り、独りよがりな優越感などが和らぎます。そして、落ちついた、広がった、温かい意識に変わっていきます。
 
 しかし、言われてすぐに、これが出来るならば、悩む人など一人もいません。問題は、心の持ち方を変えれば良いとして、どうしたら(なるべく早く)そうできるか、ということでしょう。
 

 まず、心の持ち方が、なかなか変えられない理由は、今までの悪習慣によるものです。仏教では、その人が、これまでに繰り返しなしてきた行為によって形成された精神的な傾向を「業(カルマン)」と言います(と私は解釈しています)。
 
 これを修正するには、悪い精神的な傾向を相殺する、良い精神的な傾向を形成する「良い習慣」が必要です。この良い習慣とは、いろいろなものがあります。そして、その代表的なものが、良い物の考え方を繰り返し練習することです。
 
 心の持ち方と物の考え方は深く連動しています。よい物の考え方を繰り返し、自分に言い聞かせるなどをすることで、徐々に良い心の働きを作っていくということです。

 
 しかし、物の考え方の習慣だけがポイントではありません。物の考え方を変えようとすれば、物の考え方と連動しているものも変える方が、そうでない場合よりも、速やかに変えることができます。
 
 そして、物の考え方と連動するのが、言葉や行動です。

 物の考え方を変えても、それと逆の言動を行っていれば、それは相矛盾してしまいます。たとえば、常に怒鳴りまくっている人が、穏やかな心を培うことができないことは、皆さんも容易に推察できると思います。
 
 このような理由で、仏教開祖のゴータマシッダルーダ(釈迦)は、

正しい見解(正見)、

正しい考え方(正思惟)、

正しい言葉(正語)、

正しい行動(正業)、

正しい生活の在り方(正命)

 などが、心の安定のために必要だと説きました(八正道という教え)。
 
 
   さて、次にポイントとなるのは、心の持ち方が容易に変えられない背景として、何らかのものに執着している、とらわれているということがあります。言い換 えると、自分の考え方、心の持ち方が悪いと分かっていても、もう一方で、それを変えたくないという執着心・とらわれがあるということです。
 
   簡単に言えば、苦しみはなくしたいけども、苦しみの原因となっている執着・とらわれは捨てたくないという心の働きです。これは、二兎を追っているような ものです。

 ですから、本質的に言えば、心を変えることができないというのは、変えたい心と変えたくない心の間で、迷っているので、結果として、変えら れない状態だと思います。
 
 精神病やその手前の状態の人の一部には、執着・とらわれを捨てれば、心が安定し、薬もいらなくなるのだけれども、いまのところ、捨てる決断までができてい ない人がいると思います。

 他人から見ると、自分の心身の健康が第一だから、まずは、執着・とらわれを捨てることを優先して、心身の状態を安定させるべきだと思われます。それを土台と してこそ、その先に、より良い自分の未来がやってくると考えるのが現実的・合理的です。

 しかし、どうもこうした考え方が、十分にうまくできない場合があり、そのために、メンタルを病んでいる人がいるように思います。とはいえ、すべてに合理的に対処することができないのが人間でしょう。
 
 よって、「これ以上執着を捨てないと、自分が(さらに)おかしくなってしまうという状況を感じ取って、それを捨てる決断をすることができればと思います。執着・とらわれより、自分の心の安定・健康の方が大切だと理解することです。
 
   私が思うに、これを精神病になる直前に理解する人と、その一歩手前=強いストレスの状態で理解する人がいます。いずれにせよ、人が執着を捨てる状況とは、捨 てない方が捨てるよりも苦しいと理解した時かもしれません。

 釈迦も、自分自身の体験もあって、人は、苦しみの経験があって、正しい教えに向かっていくと いう考え方をしていたようです。
 
 さて、このブログを読んでいる方には、日常のストレスを和らげて安定した心(不動の心)を得たい方、自分は、鬱などの精神病の一歩手前ではないかと思う方、さらに、鬱などの精神病とされている方など、いろいろな方がいると思います。
 
 既に鬱病などになっている方も、執着・とらわれを捨てた方が、本当の自分のためになることをを改めて考えてみて、それに気づくな らば、決して遅くないと思います。

 また、いったん罹患して、それから回復したとしても、再発を予防するには、根本原因である執着・とらわれについて考えて みることは、非常に重要だと思います。
 
 これは、自分のライフスタイル・人生目標を現実に適応できるように、変えることを意味するかもしれません。精神的な脱皮です。

 ニーチェは、「脱皮できない蛇は死ぬ」と言ったそうです。これは、心の健康にも当てはまると思います。
 
 さて、このテーマに関しては、書かなければならないことがたくさんあります。しかし、ありすぎて、全部は書けないので、取りあえず、自分や自分の知っている人の経験からして、重要だと思うことをまず書きました。
 
 次回に続きます。