信越化学は昨年までAI関連ということもあり人気を集めていました。半導体製造に欠かせない
ウエハは世界シュアは1位です。また前工程に欠かせないフォットレジストも手掛けています。
中国メーカーが今や世界の8割を握っているというと言われているネオジウム磁石ではプロテ
リアル(旧日立金属)、大同特殊鋼とともに中国以外では有力メーカーです。米中の貿易戦争
で中国側が輸出を制限したことで米国が慌てたことで関税交渉で中国側の切り札となっている
ことがハッキリしました。

それでも信越化学の主力事業はウエハと塩ビ事業です。塩ビ事業は米国の安価な天然ガスを利
用することで原料から製品までの一貫生産体制を整え利益率は2割を超える優良事業です。しか
し、米国での住宅需要の低迷と中国メーカーの過剰生産で輸出市場は採算が悪化しています。
4~6月期の業績が市場予想に届かなかったのは主に塩ビ事業の不振が原因です。

日本企業は半導体事業の専業メーカーは製造装置を除けば数は多くありません。日本企業の強み
が原料やウエハやフォットレジストなど素材品が多く化学メーカーなどが高付加価値事業として
手掛けているケースが多いからです。当然AI関連ともてはやされても半導体材料の専業メーカー
ではないので他の事業環境がどうなっているのかチェックは重要です。

また半導体メーカーと言っても製品は広く日本企業の得意としているのはアナログ半導体やパワー
半導体です。特に高成長が期待されていたEV向けのパワー半導体はEV市場の伸び悩みや中国企業
との競争激化で失速しました。ルネサンスが赤字転落したのは米国のパワー半導体基板メーカーの 
ウルフスピードが経営破綻したことです。ここでも中国企業との競争激化が破綻の一因になりまし
た。

エヌディディアは高値更新後も上値追いを続けていますが、世界一の半導体製造企業であるアプ
ライドマテリアルや東京エレクトロンのライバルであるラム・リサーチは追随できていません。
製造装置ではアドバンテストを除くと昨年高値には大きく届きません。

関税合意のサプライズでこれまで低迷していた自動車や機械株は今週急騰しましたが、どうも
このセクターの株高は売り方の買戻し一巡で幕引きになりそうです。AIデータセンター関連で
フジクラなど電線3社は今週高値更新し勢いが感じられますが、指数に影響の大きい値がさの
半導体銘柄が上値を追えないようだと一段の上値追いは難しくなりそうです。

決算発表で再度エンジンに火をつけられるのかがポイントです。大手半導体製造装置メーカーの
スクリーンHGが25日発表された決算は純利益が8%減少しました。AI向け先端分野は好調でした
が、高収益が見込める中国向けの減少をカバーすることは出来ませんでした。信越化学意外に
ガイダンスリスクが広がるのか週明けのスクリーンに対する市場の反応が気になります。

次回の更新は29日を予定しています。