上司である女部長が、

私の夫・光良の精神科受診に同行すると言い出した。

しかも当日の朝に、である。

私・純子はテンパって精神科医に電話した…。


このシリーズのお約束と過去記事はこちら。
http://ameblo.jp/joyblog/entry-10020580503.html



私自身、鬼縞部長の不意打ちにかなり動揺していたので、

とにかく精神科医に相談してみようと思い電話。



呼び出し音数回のち、受付嬢さんが出る。



「はい、消原メンタルクリニックです」


「あの、

今日の昼に予約を入れた●○の妻ですが、

上司が今朝になっていきなり彼の診察に

同席すると言いまして。


彼は上司だから断れないそうなんですが、

ほんとうは緊張するしいやなんです。

こういう場合、どうすればいいでしょうか」


「はい…少々お待ちくださいね」


保留音。


のんきなメロディとうらはらに、

私はもう、泣きそうだった。


鬼縞部長は、職務熱心な人なのだろう。


でも、

その熱心さこそが彼を追い詰めていることに、

どうして気づかないんだろう。


診察日当日にいきなり上司が来るなんて言ったら

動揺するというのに。


保留音がとぎれ、


「もしもし」


…この声は!!


ドクターだー!!!



けっこういつもこんでいるクリニックなのに、

診察待ちの患者さんが列をなしているようなところなのに、


光良の主治医は、電話に出てくれたのだった。


まさかドクターが電話かわってくださるなんて…

驚きと感激に打たれる。


状況を説明すると、ドクターは


「彼はそこにいますか?

電話に出られますか」


と言う。


彼に電話を代わると、しばしドクターと話して、

電話を切った。



「…どうなった?ドクターなんだって?」


「おれと部長が同席しないように

してくれるって。

別々に話するようにするって」



「…よかった…」



ほかならぬドクターの指示だ、

部長も従わざるをえないだろう。


私は安心のあまり、居間に座りこんだ。



鬼縞部長の気まぐれ(?)で、どっと疲れた朝…

だが、それでも朝、なのだ。

長い一日はまだこれからである。


私は光良と、消原メンタルクリニックへ向かった。(つづく)