鬼縞部長との会談を終えたわれわれ。
われわれというのは、妻・純子…すなわち私と
夫・光良の母である志麻代さんは、帰途につくことになった。
志麻代さんの「常識がない」発言…
しかも、共通の敵であるはずの鬼縞部長の前で、私のことを
そんな風に言うなんて…にショックを受け、
ムードはサイアクである。
このシリーズはヤバ目の内容を含むためフィクションとして
お読みください。実はほんとのことですが過去記事一覧はこちら
http://ameblo.jp/joyblog/entry-10020580503.html
私は家で心配している光良のため、携帯から電話をかけた。
「もしもし、終わった。書類もらってきたから」
横にお義母さんもいることだし、自分の感情は極力おさえたつもりだったが
「どうしたの?なに怒ってるの?」
…光良め、私の感情のキビを携帯電話からも読み取るようだった。
うれしいやらいらつくやら…。
「帰ってから詳しく話すよ」と答えてお義母さんに電話を代わり、
2,3こと話して電話は終了した。
…銀山支店から駅まで、行きはタクシーだった。
寒風吹きすさぶ会社の前で、タクシーを今から呼び出して待つのはつらい。
なにしろ会社のまわりには、入れるような店がみわたすかぎり、ない。
せいぜいガソリンスタンドくらいだろうか…。
4年ぶりに光良のため団結したとはいえ、話題もないふたりである。
吹きっさらしで道路前に立っていても間がもたない。
しかし駅から610円とワンメーターだったこともあって、
「近いようですし、駅まで歩きましょうか?」
と提案してみた。言ってしまってから、チラとお義母さんを見て
みれば、パンプスである。しまった…!!
私の足元はコレである。
歩行正常化サンダル…歩きやすいことこの上なし。
だがお義母さんは、パンプス。
歩こうなどと言ったらイヤミになってしまうかも?!
私がパニクっていると、お義母さんは
「ええ、歩きましょ。今日歩きやすいクツで来たから」
と、のたまわった。
ひとまずほっとする。
しかしベテランの女性と言うものは、
5cmヒールのパンプスでも歩きやすいのな。
3cmヒールでも不安になる私にはムリだ。
…ひたすら歩き続けたが、
二人とも道を知らなかった。
いいトシしたオトナが二人そろって、道を覚えてなかった。
タクシーではすいーっと来たので近いと思ったが
クルマの数分は徒歩では数十分。
あまり健脚とはいえぬ私とお義母さんは道に迷った。
そこへ、現地の方が通りがかった。
お義母さんはがしっとその人の肩をつかむと、
「ねえおばちゃん、駅はどっちへ行けばいいの?」
とほがらかに尋ねた。
おお、人見知りな私にはないテクだ…!!
しかもいきなりおばちゃん呼ばわり…すげえ私にはできねえ…
お義母さんのおかげで道がわかり、てくてく歩き始めた。
夕方なので、風の寒さは格別だった。
コートのすそはためく寒さであった。
昼間が晴れていてなまじあったかかったので、つい秋のコートで
来た私は、早くも歩きにしたことを後悔した…。
教えてもらった駅への光は、坂道であった。
坂道をえんえんとのぼる。
互いに運動不足なのか、ふうふうと息を切らしながら。
すると、左手に停車している電車が見えて来た。
「ここよ!駅よ、電車があるもの!」
喜ぶお義母さん。
だが、そこには「ピクニックルート」の文字があり、
看板に「小山鉄道記念館」と書いてあった…。
そう、その電車はもう走っていない列車を一両だけ記念に飾ってある
だけだったのだ。
そこの道に入ったら、
したくもない嫁姑地獄ピクニック
になってしまう。
どうも駅じゃないみたいです、と言ってまたとぼとぼ坂を上りだした。
足が痛くなってくるころに、やっと駅が見えた。
いやー、直線距離なら近いと思ったが坂道は誤算だった。
行きはタクシー代を払っていただいたので、今度は私が電車代を出す。
それもくだらぬ意地である。
私は消原駅でお義母さんと別れ、帰宅した。
嫁姑関係がコナゴナになる出来事が起こるとは、まだ知るよしもなかった
(つづく)。