夫・光良の別の精神科への転院が決まった。
ほんとに彼は、入院するほどの状態なのであろうか。
妻・純子の悩みはつきない…。
「××との戦い」は危険な描写を含むため、たてまえ
フィクションということになっています。もくじはこちら↓
http://ameblo.jp/joyblog/entry-10020580503.html
一月ほど通院した市立病院から、
入院設備のある開業医へ紹介された光良。
精神科から出ていたクスリを急にやめるのも心配なので、
徐々に減らしていくことにしたのだ…が。
その夜、お風呂に入るときのこと。
光良「おーい、ここかゆいんだけど
診てくれない?」
純子「どれどれ?」
…彼の胸のあたりに、プツプツと発疹が。
要するにできものが。
いきなり吹き出ていたのである…
もしかして、薬疹?
クスリは即刻、全種類やめさせることにした。
もう金曜深夜だし、もし治らぬようなら休日診療をしている
皮膚科へ行かなくては。
彼がお風呂に入っている間、私は悩み考え続けた。
本を読んでいて思うのは、彼の症状がうつとは違うということ。
確かに、うつ病によく見られる不眠や肩こりは、ある。
しかし意欲の低下や、自分が無価値であるという気持ちはない。
かえって自信過剰なくらいの人だ。
原因がはっきりしていて、
すなわち銀山支店…
毎年のように、心をいためて休職する人が出るという
すさまじい職場…に異動してから、彼は毎日少しずつ
疲れ、気持ちすりへらし、そして今休んでいるのである。
うつの鑑別診断を調べた。
・正常範囲の悲哀反応
身近な人を亡くすなどの悲しい出来事で、気持ちが落ち込むというもの。
彼は落ち込んではいないので、これはあてはまらない。
・統合失調症
うつと似たような抑うつ症状を示すこともあるとか。
・適応障害
原因がはっきりしていて、それを除去すれば問題ないもの。
学校でイジメにあっている学生が、登校すると具合が悪くなるが
休校すれば調子はよく外に遊びにも行ける、みたいな。
私は、彼がこれだと思うのだ。
だが、そこに陥穽はないか?
私は夫が、
不安定な私をずっと支えてくれていた強くて明るい夫が、
うつ病になってしまったと信じたくなくて、
うつである可能性を無意識に見落とし、
うつでないように見える点だけをクローズアップしているだけ
なのではないか。
だいたい、プロの精神科医が入院が必要と言ったのだ。
でも私は入院するような状態だとは思えない。
現役医師でもないのにそれに逆らうなんて。
クスリも全部中止した。
だが、もし彼がうつの初期ならば、
薬による治療は大切なものだ。
彼の貴重な治療機会を、
私の思い込みで奪うことがあってはならない。
私情を廃せ。
医学部時代つちかった、
科学の目で
冷徹にものごとを見るんだ。
審判は、次回の精神科で出る。
私が愚かな鬼嫁なのか、それとも…。(つづく)