夫・光良は動悸のため病院を受診したが、内科的に問題ないとして
精神科を紹介された。
そこで出されたある薬を飲み始めたところ、彼に異変が…。
妻・純子は悩むが…。
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三度三度、まじめに精神科から出された薬を飲む光良。
それは、治りたい一心だったに違いない。
彼は服薬しながら仕事に行っていたが、
後輩の指導にあたるとき、
手のふるえを感じたという。
うーん、副作用…?
そして、
彼は変わった。
変貌した。
たった数日でなんとなくシルエットが丸くなってきたことにも
驚いたが、一番変わったのは、内面だった。
服薬すると、彼は異様にハイになってしまうのだった。
飲んでから数時間がピークで、
多弁(やたらしゃべる)が出たり、いらいらしやすくなったり。
服薬以前は、そんな人ではなかったんだが…。
市立病院の主治医を信じたい、
という光良の意志を尊重して私は折れた。
だが、また疑問の芽がめぶき始めていた。
主治医の出した条件は、三度三度指定された薬を飲むこと。
だが、薬を飲むたびに、
光良は変わっていった。
ちょっとしたことで、
お店などにクレームをつけたりするようになった。
もちろん、クレームするだけの理由はある、
だが以前の彼であれば、「まったくしょうがないね~」
で済んだはずなのだ。
家に帰ってから、クレーム電話をする彼のとげとげしい声が、
今まで聞いたことのないような彼のそんな声が、
私にはつらくて、
もう聞いていられなくて、
私は電話のある今を離れ、アパートの別室にひそんだ。
耳をおさえて。
彼は、明らかに以前の彼と違ってしまっていた。
抗うつ薬ということは、
抑うつ気分から明るい意欲的な方向へシフトさせるということ
だろうか。
すると、もともと抑うつがさほど無かった…
肩こり・不眠・動悸など身体症状だけだった光良には、
このお薬では強すぎるんではなかろうか。
そんな彼を見るのが、私はつらかった。
でも、目をふさぐわけにはいかない。
治療が間違っているのか正しいのか、判断する知識が私には
足りない。
かつて医学部生時代に精神科実習をしたとはいえ
(そして第一志望が精神科だったとはいえ)、
せいぜい私の知識は数年前の、しかも医学生レベルでしかない。
そこで、少しでも病態の理解をしようと思い、一般向けの書物を
読んでみたのだ。
- 福井 次矢, 川島 みどり, 大熊 由紀子
- あなたの家族が病気になったときに読む本 うつ病
彼の変貌、つづく。