いろいろな科でカルテの記述は英語だったけれど、


産婦人科だけはカルテに

ドイツ語が使われていた。


産婦の医学用語…器官や疾患名をドイツ語で読み書き。


単語など要所要所がドイツ語なだけで、

ドイツ語で文章を綴ることまではしなかったが…。



なぜ産婦人科だけ

英語化の波にのまれなかったのかは

わからないけれど、

ドイツ語を好む伝統かなにかなんだろうなあ。



教授回診なども、ドイツ語(単語)が盛んに飛び交うので


病棟実習の5年生たちは医学部1・2年で学んだけれど

埋もれて忘れかけているドイツ語知識を必死で掘り起こさないと


会話の内容についていけなかったほどだ。



学生病棟実習…いわゆるポリクリで、産婦人科をまわって

いた時のこと。



ドイツ人の女性が、

患者さんとして来院した。



あわてたのは病棟のドクターたち。



学生たちに、ドイツ語を披露してきたけれども、

所詮それは日本語化したドイツ語である。


発音が違う!って注意されたらどうしよう~


回診の内容が全部わかっちゃうと言いにくい…


そんな会話が、ドクターたちの間で交わされていた。



しかしドイツ人女性(…仮にDさんとする)

Dさんは、たいへん優しく穏やかな方で、

発音をたしなめたりなんてことはなさらなかった。



教授はよい機会だとばかりに、

Dさんに自分の単語の発音を聞いてもらい、


ケルンキールン、みたいな発音だと思ってたけど

本場の発音だとケルンでいいんだ!!」


と感激なさっていたりした。




ここまでなら日独交流、よい話で終わったのだが…。



(それはないでしょサベツでしょ??につづく)