今日はシリアスタッチで、苦い思い出を書く…。
実在の誰かを攻撃しようという意図ではない。
ただ、こんなことがかつてあったという記録である…。
医学部では、ポリクリは6人班でまわり、その中でさらに
3人ずつの小班に分かれて実習するのであるが、
名字が50音の終わりの方だったこともあり、
人数が足らず班員5人、そして3-2に分かれたのであった。
女子2人、男子3人の班であったが、その中にガリベン君がいた。
ガリベン君は、勉強が好きで好きで仕方ない人であった。
当時の私は「親との闘い」に書いたとおりの、
「NO」の言えない子。
私とガリベン君は、名字の五十音順で隣り合っていたために
1年半以上にもわたる病棟・外来実習を二人組でまわることに。
女子が二人いるんだから、男-女で分ければいいのに…
とは思ったが、なにしろNOも言えないし思うことも言えない自分。
5人班で好きなように分かれて、というときもあったが、
なぜか、班を自由に分けよと先生にいわれた瞬間、
私とガリベン君以外の3人が、驚くべき速さでサッとまとまって
しまい、いつも私と彼が二人組になってしまうのだった。
そして二人組になってみて、なぜガリベン君が避けられていたのか
わかった。
事実のみを簡潔に記すと、彼は完璧主義だったのである。
だから採血でも、一度刺してとれなかったらひたすら
グリグリと針先で血管を探り続ける。
彼の練習相手であるところの私は、迷走神経反射を引き起こし
徐脈で倒れてしまったり…。
彼は内科志望だったが、
他科の手技も学生のうちに全て身につけたいと熱望していて、
それを私相手に練習するのだった。
志は立派なのだが、常につきあわされる私は苦痛であった。
うまくいかないと彼は理想と違う自分にいらだち、
そのいらだちが練習相手である私に向くからである。
たとえば、眼科の時は光学機器で比喩でなく1時間以上も
網膜・眼底をのぞかれて(他の班員は5分ほどでやめて帰宅)、
学校の帰りには、目の前がチカチカ光って見えないくらいになった。
その後、眼科の診察器具も使い方によっては光で目を痛める
ことを知り、憂鬱になったものである…。
私も親に逆らえない奴隷体質で育てられているので、
いやと言えない。
「他のひととやって」
その一言が言えない。どうしても言えない。
かつて解剖の時、私が心身症で休みまくり迷惑をかけたという
負い目があった。普通に考えれば解剖は解剖、
ポリクリはポリクリで別なものなのだから彼の自主練習に私が
付き合う義理なんて無いのである。
なのに私は、
常に自分が悪いんだという認知のゆがみがあったので、
おわびに彼の言うことはきいてあげなくてはという思いにとらわれていた。
そのうち、
カルテをいっしょに二人で読もう、
と言われ始めた。
NOと言えない自分なので、諾々と従うのだがこれが実に
効率が悪かった。
読む速度が違う二人が共に読むのは、一方に負担を強いる
ことになる。私は速読な方なので、隣で彼の息づかいを感じながら
カルテを読むというのがいやでたまらなかった。
だから次の日からは、
ガリベン君がカルテを一緒に見ようぜと言っても
黙ってうつむいて彼を避けた。
ガリベン君は怒って
カルテをドスン!と音をたててラックに入れたりして
私はそれが、粗野な父親にだぶってびくびくしていた。
そして、ポリクリの実習中はずっと二人きりということもあり
よく食事に誘われた。
(暗いけどつづきます)