劇団青年座に所属して俳優だった頃

 

ぼくは世界の巨匠黒澤明監督

『まあだだよ』

という映画に出演しました。

 

 

映画の冒頭のシーン。

 

主人公内田百閒の

大学での最後のドイツ語授業。

ぼくはその50人近い生徒のうちの一人。

 

生意気を承知で・・・その頃の

とんがって自信過剰でオレ様的なぼくとしては

「エキストラみたいなそんな役やってられるか」

と普段なら憤慨していたことでしょう。

 

でも、

 

なんといっても憧れの黒澤組の仕事。

ぼくにとっては夢のようなチャンスです。

 

 

 

黒澤組は、どんなに小さな役でもエキストラは使わずに

プロの役者を使います。

 

ワンシーンのみの教室にいる50人の生徒の役も

二次審査、三次審査と・・・

何度もオーディションを受けてやっとつかみ取れる役でした。

 

リハーサルも含めて4日間の仕事でしたが

そのときのエピソードだけで

本一冊は書けてしまうくらい内容の濃い

衝撃の連続の4日間でした。

 

本当に一瞬一瞬がエピソード。

是非また別の機会に書きたいです。

 

びっくり

 

とにかく

 

黒澤監督と出会ってぼくは大いに影響を受けたのです。

 

ぼくはこの映画ののち、

自主映画を何本か撮ることになったのだけど

 

間違いなくぼくの映画チーム石井組は

生意気にも黒澤組の影響を勝手に受け、

その流れをしっかり引き継いだ映画集団となりました。

そうして出来たのが『オトコタチノ狂』であります。

 

イメージングのエンターテイメントステージ

イメージングライブだって

黒澤監督の影響を色濃く受けています。

 

 

とにかく

 

ぼくの考え方、生き方すべてに影響を与えた

黒澤監督との時間でした。

 

 

このブログでも時々出てくる

 

イメージング的生き方

 

その根底に流れているものにも

しっかりと黒澤監督の思想が存在しています。

 

 

どんなものもエンジョイするビックリマーク

 

イメージングの代表的考え方です。

 

 

 

生徒役のぼくらの出番が終わり

次のシーンのために現場を組み直しているときのことでした。

 

百名近い黒澤組スタッフたちが

スタジオの中を片づけ

出演していた俳優たちもメークを落としに

楽屋へ引き上げていました。

 

でも、

 

ぼくは少しでも許されるなら黒澤監督のそばにいたい。

黒澤組の仕事ぶりを見ていたい。

と思いました。

 

その頃は

いまのジョイ石井ではありませんでしたから

 

セルフイメージUPの大切さも

 

あこがれ探しの意味も

 

何も知らないし、

意識もしていないわけでしたが、

 

他の俳優たちは楽屋に下がって

誰もいなくなった中

 

ぼくだけが現場に残って

好奇心いっぱいに少しでも監督のそばで

 

監督や黒澤組のスタッフたちと

せめてもう少しの間、同じ空気を吸いたいと思ってました。

 

とは云っても

 

俳優たちは本来もういないはずなのですから

 

極力目立たないように

教室のセットの裏側にこっそり佇んでいました。

 

 

さきほどのセット内で

照明のコードを巻いている若いスタッフがいました。

 

何十本とあるコードが

撮り終えたスタジオ中に散乱していました。

 

それを一本一本巻き取って所定の位置に戻すのです。

 

少し小柄なそのスタッフがそれをひとりでやっていました。

 

照明のコードは

太くて、長くて、まとめると結構重くなります。

 

そのスタッフにとってもなかなかの重労働のようでした。

時々小さくため息交じりにコードを巻き取っていました。

 

そのとき、セットの裏側にいるぼくの耳に

黒澤監督の声が聞こえました。

コードを片付けていたそのスタッフに話かけているのです。

 

 

「なあ、きみ、うちの組だろう?

だったらもっと楽しんで仕事したらどうなんだい。えぇ?

楽しくないなら、やめたほうがいいんだよ」

 

 

監督から突然直接声をかけられて

そのスタッフは極度に緊張してしまった様子でした。

 

ぼくも監督の太い声を聞いて同じく緊張しました。

黒澤監督は当時82歳だったと思います。

でも、身長も180センチを超えていて

声なんかもすごく大きく響くのです。

 

その監督がため息交じりにコードを巻いているスタッフを見て

楽しくないなら、やめたほうがいい」と云ったのです。

 

ぼくは瞬間こう思いました。

 

スタッフ一人一人のそんなところも見逃さない。

厳しくもあり、細かくもある。

さすがたくさんの名作を残している監督は違う、と

ただ関心していました。

 

でも、

 

時間が経つほどに・・・

 

そのとき監督の云われたその言葉が

俄然ぼくの中で輝き出したのでした。

 

 

「楽しくないなら、やめたほうがいいだ」

 

 

その後、監督が書かれた本などを読み漁るうちに

ぼくは監督の真意を確信しました。

 

 

黒澤監督の修業時代を知る人は

使い走りをしていた

助監督の黒沢青年のことを異口同音に評しています。

 

 

コマネズミのように

朝から晩まで本当によく動いていた

 

 

映画を撮るという仕事を本当に楽しんでいた

 

 

映画を作るためのすべての努力を

愛おしんでしていた

 

 

 

黒澤監督は「映画を完成させる」という

夢を叶えるために

 

しなければならない事

 

すべき事はどんな小さな事でも

 

どんなつまらい作業でも

 

いつも心から楽しんでやっていたのです。

 

 

だってそれは

 

自分の夢に

 

一歩ずつ近づいていくことになるのですから。

 

厭なはずはない、

 

楽しくないはずもないのです。

 

 

 

人は楽しんで物事に取り組んでいるとき

 

そのものに興味を持っていると云えます。

 

興味、好奇心で

そのものを見ることが出来るとき

 

人は想像力が広がり、

工夫も凝らせ、

そのためのアイディアも

泉のごとく湧き出してくるのです。

 

 

「どうしたらもっと良くなるだろう?」

 

「どうしたら、もっと効率よく出来るだろう?」

 

 

コードを一本ずつ巻いていく作業も、

 

無駄なくきれいに、効率よく巻き取っていくには

どうしたらいいだろうか

 

そんなふうに考えを広げ

工夫を凝らしていったら

とても面白く、やりがいのある

大切な仕事となるでしょう。

 

そんな限りないイメージの広がりが

どんな仕事にもあるのです。

 

 

 

どんなものでも楽しんでやらなければ

それをやる意味がない。

 

良い仕事だって

厭々やってて出来るわけがない。

 

 

 

そんなふうに考えていくと

 

そもそも楽しくないものなんて

この世界には存在しないんじゃないかとなりますネ。

 

 

 

ぼくは書籍やCDにサインを求めらたとき

 

Enjoy! 

 

と書くことがあります。

 

 

 

楽しもうよ

 

とにかく楽しもう!

 

そうしていれば

 

自ずと潜在意識は力を与えてくれる。

 

 

 

そう想いを込めてサインしています。

 

 

以前はよく

 

Enjoy Being Yourselfビックリマーク

 

とも書いていました。

 

 

自分でいることを楽しんじゃえ!

 

 

という意味です。

 

 

 

楽しくないことを

 

楽しくないままやってはいけない

 

 

ぼくは黒澤監督からそう教わったと思っています。

 

 

どんなにつまらなそうなことも

 

どんなに大変なことも

 

自分次第でいくらでも楽しむことができる

 

 

監督はそんなこと教えたつもりはないでしょうが

 

ぼくは確かにそう教わったのです。

 

 

そして、

 

どんなことも楽しむという姿勢が

 

潜在意識を動かすイメージングにも

 

とても大事なことなのです。

 

 

そもそも

 

ぼくがアメリカでJOYという名を授かったのも

 

ぼくがどんなときも

どんなことも

ENJOYする青年だったからです。

 

爆  笑

 

 

黒澤明監督は平成10年9月6日に亡くなられました。

 

ぼくに無限のインスピレーションを与えてくれる

創造の神様たち。

そのひとりが黒澤監督です。

 

 

監督はいま天国でどんな映画を撮っているのでしょう?

 

その映画創りを

また心から楽しまれているのだろうネ。

 

 

 

グラサン