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終わりある旅

過去、現在、そして未来へ続く人生の旅。一人の人間が日々思うこと。泣いて、笑って、楽しんで。

ドラマは予想外の展開で結末を迎えた。

柏サポーターからして見れば、

この結果を予測することは容易だったのかもしれない。


ついに最後の戦いの火蓋が切って落とされた。

甲府の選手たちには、立ち上がりから

初戦のような硬さは見られなかった。

今まで積み上げたものをそのまま表現するだけ。

そんな自信がチーム全体に漲っていた。

ホイッスルが鳴り、僅か10分で試合は動く。

長谷川が右サイドから中央に上げたクロスを

一度は柏DFに弾き返されるが、

そのボールを杉山がダイレクトで中央へ折り返す。

それを待ち受けていたバレーがワントラップでディフェンスを交し、

落ち着いてゴールへ流し込んだ。

その後は一進一退の攻防が続くが、

再び流れが甲府に傾き掛けた前半26分。

石原がドリブルでペナルティエリアに進入し、

柏ディフェンスの間に割って入ると倒されてPKを得た。

これをバレーが冷静に決め、柏にとって痛い追加点を奪う。


後半開始直後、甲府にさらに追い風が吹く。

アライールに激しいタックルを浴びせた柏DF永田が、

この日2枚目のイエローカードを受けて退場となった。

初戦と合わせて3点のビハインドとなった柏は、

一人少ない状況でこれを打開せざるを得なくなった。

ようやく火の付いた柏は甲府ゴール前で泥臭く繋ぐと、

その狼煙を上げるべくレイナウドが1点を取り返した。

だが、意地のゴールを奪って喜んだのも束の間。

甲府のキックオフで試合が始まると、

柏の選手は一度もボールに触れられないまま、

あっさりとバレーにハットトリックとなる3点目を献上してしまう。


J2でも並々ならぬ強さと速さを見せ付けて来たバレー。
完全復活したバレーを止められる選手など誰一人としていない。

この試合はバレーの独壇場となった。

柏ディフェンスは得点を奪いに行くために前掛かりとなり、

そこに出来たスペースを甲府は容赦無く攻め続ける。

バレーをフリーにすることで、柏は予想以上のリスクを負った。

勢いに乗ったバレーは、畳み掛けるように2得点を重ねる。

柏は甲府DFのクリアミスを流し込み一矢報いたが、

最後にはバレーがダブルハットトリックとなる6ゴール目を決め、

気付けばJの公式記録をも塗り替えてしまった。

試合はそのまま終了し、甲府は見事J1昇格の偉業を成し遂げた。


柏にとっては散々な結果だった。

試合開始から、攻撃も守備もどこかチグハグで、

チームとしてバラバラだったことは否定出来ない。

土壇場になってのシステム変更とチームに愛着の無い外国人の投入は、

今年の柏を象徴していたようだった。

それに対し甲府の選手たちは攻守に渡り出足も速く、

それぞれが同じ意識を持って常に連動していた。

柏の選手たちは、そんな甲府の勢いに終始圧倒され続けた。

体力的にも、精神的にも、チームとしても、

完全に甲府の方が勝っていた印象だった。


甲府の大木監督は言う。

「サッカーはエンターテイメント。」

最後の試合で、今まで築き上げて来た

サッカーの集大成を見せてもらった。

来年はJ1の強豪が相手であっても、

その力を存分に見せてくれるに違いない。


おめでとう!ヴァンフォーレ甲府!



試合結果


柏 2-6 甲府

【柏】レイナウド52、宇野沢86
【甲府】バレー10、27=PK、53、68、69、87

一時は存続の危機すら味わったチームが、

気付けばJ1に届きそうな域にまで高まった。

迎え撃つ柏は去年に続き2度目の入れ替え戦。

果たして、どのような結末が待ち受けているのだろうか。


前半の立ち上がりから、またしても甲府の悪い癖が出る。

柏はフリーキックのチャンスを得ると、

大野がピンポイントでレイナウドの頭に合わせ、

試合開始早々に先制点を奪った。

まるでJ2リーグの最終節、京都戦を見ているような展開だ。

J1のチームに一点ビハインドとなり、果たして

甲府はリーグ戦と同様に逆転など出来るのか。

だが、その不安を払拭させる精神的な強さが甲府には培われていた。

固さを見せていた若干数名の選手を含め、

甲府は吹っ切れたかのようにらしさを見せ始める。

その高い攻撃力はどちらがJ1なのか

分からないほど素晴らしいものだった。

早いパス回しで柏ディフェンスを翻弄し、ゴールを脅かすほどの

波状攻撃を何度も繰り返す。

柏の選手たちは、甲府がまさかこれほどだとは

誰も予想していなかったのではないだろうか。

その流れのままに甲府は同点ゴールを奪う。

スローインからアライールがファーに大きなクロスを上げ、

それをバレーが中央に落とし、

中央でキーパーと競り合った倉貫がゴールした。

ここ数試合で感じていたことだが、

アライールのロングキックの精度はかなり高いように感じる。


柏は16位とはいえ、やはりJ1のチームだ。

一つ一つのプレーの精度や個人能力のレベルが高いことは間違いない。

だが、甲府の選手たちのポテンシャルはそれを上回っていた。

そして、J2のタイトなスケジュールをこなして来た甲府は、

スタミナに関しても柏より上だということを実証しただろう。

これ以上の失点を免れれば、この試合は勝てるかもしれない。

それを感じさせるほど優位に立っていたのは甲府だった。


そして、その期待を甲府は裏切らなかった。

後半開始早々、ゴール前の混戦から倉貫が落とし、

バレーが低い弾道でゴールに突き刺し、ついに逆転した。

この日のバレーはここ数試合と比べても見違えるような動きで、

復調を感じさせるには十分なものだった。


その後、柏の攻撃に何度かピンチとはなったものの、

甲府は決定的な場面を集中したディフェンスでことごとく粉砕した。

試合のロスタイム前にスタジアムが長い時間停電となり、

後味の悪いものとなってしまったが、

甲府は2-1で初戦をものにした。


だが、これを手放しで喜んではいられない。

次は柏のホームに乗り込んでの最終戦が待ち受けている。

スタジアムは黄色一色で染まるだろう。

そして、柏の心臓である明神や平山の参戦も噂されている。

柏の選手たちも、ホームで無様な試合など出来ない。

甲府はその只ならぬ雰囲気に、未だ経験したことのない

強烈なプレッシャーを感じることだろう。

だが、そのプレッシャーにさえも打ち勝った時、

運命の扉は自ずと開かれる。

選手たちにはまたと無いチャンスに人生の全てを賭ける気持ちで、

悔いの残らない戦いをしてもらいたい。



試合結果


甲府 2-1 柏

【甲府】倉貫25、バレー48
【柏】レイナウド11

試合前からスタジアム上空に架かっていた虹は、

この奇跡を予感させていたのか。

いや、これは決して奇跡などではなく、これまでコツコツと

積み上げて来た結果に過ぎなかったのだろう。


静かな立ち上がりで始まった試合は早々に動く。

前半9分、京都がコーナーキックから

田原の鮮やかなヘディングシュートで先制した。

今の甲府の選手たちには、点を取られても

取り返せる自信があるのだろう。

その先制点にも全く動じない。

勝たなければならない試合にも関わらず、

その落ち着き振りにはどこか物足りなささえ感じた。


そんな中、ただ一人虎視眈々と京都ゴールを狙う男がいた。

開始直後から、京都DFリカルドには軽率なミスが目立っていた。

前半40分、そのリカルドがセンターサークル付近で

ボールを受けると、それを狙っていたかのように視界の

外から現れた長谷川がボールを奪った。

そのままスピードに乗ったドリブルでゴール前まで持ち込むと、

キーパーの動きを見て、冷静にゴール右隅に流し込んだ。

今期の長谷川を象徴するような値千金の同点ゴールだった。


後半に入ると、早々に福岡-仙台の試合が動く。

福岡が先制したことで、甲府にとっては願ってもない展開となる。

だが、京都の守備はとても固く、なかなかチャンスが訪れない。

前節の福岡戦同様、頼みのバレーも明らかな不調だった。

甲府が決定的な場面を作り出せないでいると、

仙台の試合が再び動いた。

仙台は意地を見せ、甲府と同じく同点に追いついた。

甲府か仙台か、試合に勝利した方こそが

入れ替え戦の切符を手にするに相応しい。

そんなドラマを予感させるような展開となっていた。


試合時間も残り20分に差し掛かる。

勝たなければならない試合で、

そろそろ選手起用も考えなくてはならない。

そんなことを俺が感じていた矢先だった。

甲府の大木監督は石原に代え、須藤を投入する。

これは俺の思い浮かべた采配と同じだった。

試合は均衡を保ったまま残り10分を迎え、そこでドラマが起こった。

フリーキックを得た甲府は、藤田の蹴ったボールに

アライールがバックヘッドで合わせると、ついに逆転に成功した。

しかし、そこから京都の猛攻が始まる。

いつゴールされてもおかしくないような怒涛の攻撃に

甲府はギリギリの状況で耐え凌いでいた。


そして、試合はついにロスタイムを迎えた。

だが、これでドラマが終わることはなかった。

京都がディフェンスラインから前線へ放り込んだボールを

甲府DF杉山と京都のFWが二人で追い掛ける。

杉山がスライディングで足を伸ばすと、

2人はペナルティエリアの中に倒れ込んだ。

審判の笛がなり、その手はペナルティスポットを指差したように見えた。

会場は騒然となり、ピッチ上も慌しくなる。

見ている方も気が気ではない。

杉山はレッドカードで一発退場となった。

フリーキックなのか、PKなのか。

両チームの選手が審判に詰め寄り、激しく小競り合いを始めた。

ロスタイムにしては、随分と長い時間が経っていた。

主審は線審と確認を行い、判定はペナルティエリア外からの

直接フリーキックとなった。

だが、胸を撫で下ろしたのもつかの間。

ボールと壁の位置を見る限り、直接決められても

おかしくないような危険な臭いが漂った。

キッカーの鈴木悟は短い助走から強烈なキックでボールを蹴り出す。

鋭い弾道で飛んだボールは一歩も動けないGK阿部の横を通り抜け、

何とそのままポストを直撃した。

ポストから跳ね返ったボールを何とかタッチラインへ弾き返す甲府。

それを祈るように見つめていた杉山の目には涙が溢れていた。


そして――


ようやく試合終了を告げるホイッスルが高らかと鳴った。

甲府にしてみれば、何とも劇的な勝利だった。

福岡-仙台も引き分けで終了。

甲府が奇跡の大逆転で入れ替え戦の切符を手に入れた。


甲府の大木監督は言う。

「我々はまだ何も手に入れてはいない。」

J1の残り一つの席を賭けて、甲府は柏と激突する。

気持ちの強い方に女神は微笑むことになるだろう。

甲府にはどうかこの偉業を成し遂げてもらいたい。



試合結果


京都 1-2 甲府

【京都】田原9
【甲府】長谷川40、アライール80

前々節、甲府は札幌を相手に敗戦濃厚な1-2で

後半のロスタイムを迎える。

誰もが諦めかけたその時、奇跡は起こった。

僅か数分という短い時間で立て続けに3得点を挙げた甲府は、

終わって見れば4-2という結果で、奇跡の逆転劇を演じて見せた。


そんな甲府も、前節ではJ1昇格が決定した

福岡に対して5点もの失点を重ね、

一矢報いることも出来ずにあえなく敗戦する。

今期のウィークポイントとなっている

守備の弱さが露呈された内容だった。

だが、3位の仙台も同じく敗れたため、

入れ替え戦出場を賭けた甲府と仙台の争いは、

明日の最終節まで縺れ込むこととなった。


守備の安定しない要因として挙げられるのは、

監督の選手起用にあるのかもしれない。

俺の見る限り、ディフェンスラインに入るのは秋本より青葉。

中盤の底に入るのは山本より奈須の方がいいように思う。

ここ数試合で、監督は突如として、この2枚の構成を変えている。

その理由は定かではないが、監督の意向というものがあるのだろう。

秋本はルーキーということもあり、やはり経験不足が否めない勘がある。

最終節ではこの2枚をどうするかが一つのポイントになるに違いない。


そして、サッカーでは得点を奪わずして勝利は生まれない。

福岡戦でのバレーは恐らく誰が見ても不調という感じで、

パワーもスピードも完全に影を潜めていた。

さらに途中出場した須藤の起用にも思ったような効果は得られなかった。

攻撃陣で唯一安定しているように見えるのは長谷川。

今期は特に成長が著しい選手だ。

だが、その長谷川でさえ、決定的な場面を作るものの

得点を奪うには至らなかった。

無意識の中でも、かつて感じたことの無いプレッシャーが

選手たちの歯車をどこか狂わせている。


こんな苦しい時にも、経験豊富な小倉が使われることはないのか。

明日の最終戦、甲府がさらに上に行くためには勝つこと以外に道はない。

土壇場になってパワープレーに出る可能性もあり、

俺は最終戦での小倉のベンチ入りを熱望していた。

そんな中、突如として悲しいニュースが飛び込む。

その小倉が来期はチームと契約しないということが明かされた。

これにより、最終戦と入れ替え戦での小倉の出場は

完全に閉ざされたと言っても過言ではない。

正直、とても悲しくて残念に思う。

それでも、甲府には小倉が共に汗を流し闘って来た仲間たちがいる。

ここまで来たら、甲府には是が非でもJ1の舞台に上がってもらいたい。

例え、そのフィールドに小倉が立つことが無くとも…。


明日の試合は甲府の運命を賭けた集大成となるだろう。

その相手はJ2リーグの中でも一つ群を抜いた

力を見せて来た首位の京都。

ここまで甲府は京都に対し、3戦全敗している。

勝つことは思う以上に難しいだろう。

だが、J1に上がりたいという気持ちを選手全員が持った時、

きっと再び奇跡は起こるに違いない。

その選手たちの雄姿を俺はしっかりとこの目に焼き付けたい。


あの人の心が俺から離れて行くのを感じる。

どこか突き放しているようにも聞こえるあの人の言葉に、

もはや苦しみさえ感じない。

俺は納得し始めたのかもしれない。

俺とあの人の未来が繋がってはいないことを。


あの人と携帯が繋がらなくなった理由。

それは俺の想像通り、携帯を替えたからというのが事実だった。

あの人も教えるべきかどうかは、とても悩んだようだ。

「教えるのは嫌じゃないよ。」

そう言いながらも、あの人は何かと理由を付けて、

俺の要求には応えてくれなかった。


ここ数ヶ月、あの人は何故かずっとテンションが低い。

俺に会いたいと言わないのも忙しいのが一番の理由ではなく、

自らの意志だということが分かり始めて来た。

ずっとテンションが低いのも、気持ちを押し込めようとしている自分に

少し無理をしているからなのかもしれない。

「あなたの幸せのために、会わない方がいいような気がする。」

自分の気持ちで伝えようとしない言葉に、心の裏側が見え隠れする。

もしかしたら、もう一度会って歯止めが利かなくなる

自分自身が本当は怖いのかもしれない。

これまで離れようと思っても、完全に突き放すことが出来なかった

あの人の行動がそれを裏付ける。


俺は勇気を振り絞って、自分の意志を伝えた。

「前にも言ったと思うけど、

 離婚したとしても絶対に再婚はしない。」

俺を突き放すように、あの人はそう言って退けた。

「諦めてるの?」

離婚を否定しないことに違和感を感じ、俺は尋ねた。

「そうかもね。」

そんな風に平然と言えるあの人が、俺はとても悲しかった。

あの人も世の中や自分に諦めを持っている人間の内の一人なのか。

俺の力で変えてやりたい…心の奥が熱くなる自分を感じた。

あの人にとっては、俺との生活すらも

夢に描けないほどに価値の無いものなのだろうか。


今の俺には、この距離感を埋めることが出来ない。

そんな虚しさが、熱い気持ちを心の奥深くへと押し込めて行く。

あの人との記憶も、少しずつ思い出に変わり始める。
全ては遠い昔のことであったかのように。

楽しさが何であったのかも忘れかけている日々の中で、

誰に触れても埋めることの出来ない虚無感が

暗く深い闇の中へと俺の心を誘う。

それでも、今はただ時の流れに身を任せて、

何かが変わるのを待つことくらいしか俺には出来ない。