消費税は預り金ではないが、「預り金的性格を持つ」という財務省の答弁は詭弁だと前回の記事で言ったが、日本ではこの種の詭弁が蔓延している。

だいぶ前にネットの一部で話題になった話なので、いまさらであるが、その一つがこの牛乳である。

「明治おいしい牛乳」新パッケージは実質値上げ? 「筋肉への負担が約1割軽減」にツッコミ殺到 明治の狙いは

 

【従来製品に比べてパッケージの横幅を5ミリ小さくしたことや、内容量を1リットルから900ミリリットルに変更したことで、「手が小さいお子さまや握力が弱い高齢者でも持ちやすい」「従来品に比べ、筋肉への負担が約1割軽減」と説明されています】

 

 

筋肉の負担が約一割軽減?

ギャグなのか本気なのか分からないメリットだが、明治乳業の公式の説明なので、どうやらギャグではないらしい。

価格は据え置きで量は減ったのだから実質値上げで、消費者にとってデメリットしかないのだが、本質ではないメリットを挙げて本質から目をそらしけむに巻く、まさに詭弁である。

コンビニ弁当はリニューアルのたびに量が減っていたりするが、その理由は「女性に配慮し女性が食べやすい量にしました」となる。

とにかく日本の企業はしなくていい配慮をするのが好きらしいが、要は詭弁を弄し国民をけむに巻くのは政府だけではなく、民間企業も同じことをやっている。

 

 

例えば、一昔前ではよくあったことだが、お年寄りが携帯を契約しようとショップに行ったとしよう。

そこで店員が複雑な料金体系を説明し、このオプションをつければ安くなりますよ、なんて話をするのだ。

年寄りはそんな話は分からないから、うーん、良く分からないから、任せるわ、なんて一任してしまう。

 

すると最初の一か月だけは無料の、年寄りが使いもしない有料アプリを契約させられる。

年寄りは中身をよく知らないし解約なんてできないから、有料アプリは継続され無駄な金を継続して支払わされるのである。

 

これは一つの例に過ぎないが、通信費というのは今や生活になくてならないインフラで、継続して払うものだから、ある意味税金に似たところがあると思う。

その制度設計をわざと複雑にしてけむに巻き、余計に徴収するという手法はインボイスと同じで、これもまた詭弁の一つだろう。

 

 

しかし一番の詭弁が憲法第九条だろう。

「戦力はこれを保持しない」と書かれているので、普通に条文を読めば自衛隊なんて持てないはずなんだが、しかし自衛権は否定されていないという謎の理屈が自衛隊の法的根拠となった。

自衛隊がいけないという話ではない。

こうした現実と言葉の間の矛盾を本当に解消する努力はせず、適当な嘘で上っ面だけ取り繕ってやってきたわけだ。

そもそもの国のあり方が歪んでいるんだよな。

 

しかし、「言葉は軽く、現実は重い」のである。

戦時中撤退を「転進」、全滅を「玉砕」と呼んだ類の大本営発表は、結局は言葉の軽さが現実の重さに耐えきれず、いつかは破綻するのだろうな。