さて北朝鮮国境の丹東から大連に行き、出発便と同じフライトで日本(大阪)に帰るわけだが、なんでまた大連から帰ることにしたのかというと、フライトが探した中で一番安かったのもあるんだけど、今回の旅のルートがだいたい中国とその周りを一周するような形になったので、出発点に戻って帰れば旅がまとまりそうだと思ったからだった。


どこへ行こうと、どれくらい旅をしようと自由、つまり制限がないわけだから、旅を終える、つまり帰るというのは、なかなか踏ん切りがつかなかったりする。
大連から帰ろうと思ったのは、出発点から帰れば、中国を一周し終えたという区切りを付けて終えられると思ったからなのだ。


世界一周の時はニューヨークが終点だったんだけど、僕は最後の日の夜にブルックリン橋を渡ることにこだわった。それは僕にとって一種の儀式だったのだろう。


ブルックリン橋から見るニューヨークの夜景は本当にきれいで、それを見て歩きながら僕はこれまでの旅を思い出した。
そしていよいよ旅を終えるのだなと思うと、ちょっと泣き出したいような寂しさと、これで終わりだという満足感を同時に感じた。
あのとき見た景色と感じた感情はいつまでも忘れられない。


旅を終えるには気持ちの上で踏ん切りをつける必要があって、それが僕にとっては橋を渡ったり、一周して出発点に戻ることだったりするのだろう。



丹東駅から高速鉄道で大連へ。
所要二時間半程度、108元(約1800円)。


丹東駅は意外と警備が厳しかった。
この駅は入り口と高鉄の搭乗口の2箇所に荷物検査機があった。
僕は入り口の検査で、ここまでずっと見つからなかったナイフをとうとう見つけられ、没収されてしまった。
このナイフはアフリカで買った記念の品でもあったのでガックリ来た。しかもよりにもよって旅の終わりだというのに。
なぜ見つからずにいたのかというと、折りたたみ式のナイフで柄の部分がないように見えたからだろうと思う。サバイバルナイフみたいな物騒な見かけなんだが、僕は果物をカットしたりするのに使っていた。
パスポートの提示を求められ、パスポートとナイフを並べた写真を撮られた。こういうのも全部データベース化され、これまでの旅のルートと共に、僕の個人の記録として残るんだろうな。別に悪いことをしたわけじゃないのに、しっかり記録に取られて気分が悪い。


さらに噴飯物だったのは、もう本当に刃物は何も持ってなかったんだけど、二度目の検査でもまた引っかかり、今度は栓抜きを没収されたことだ。
この栓抜きは西の警備の厳しい甘粛省で一旦見つかったものの、担当者の判断で返されたものだった。こんなものすら取られるとは。
一つの駅で二度も荷物検査を求められ、二度とも没収されてしまった。中国ではどこへ行くにしても検査検査で、やはりこの国は監視国家なんだなと思ったし、正味2ヶ月もこの国を旅していると、流石に息苦しさと疲れを感じてきた。


さらに待合の席に座っている間、駅の職員か公安担当者と思しきスーツ姿の男が二人、僕のそばに座っていた。僕がトイレに立つと同時に彼らも立ち上がった。僕を監視していたのではないかと思った。物騒なナイフを所持していた、北朝鮮国境の街にいる日本人。これだけで疑う理由に充分なのかもしれない。中国で日本人が拘束されたなんてニュースがたまに出たりするけど、こんなことで拘束されたらたまらない。


それにしても丹東がこんなに警備が厳しいとは思わなかった。
高鉄は通常よりも警備が厳しくなるのはまあ当然だけど、これも地域差があって、例えば同じ東北地方の長春から丹東に行くときは一回の荷物検査で済んだもんな。
それは、ここが北朝鮮国境の街だからかもしれない。北朝鮮と中国は一応同盟国なんだろうけど、この厳しさは両国の関係の何事かを表しているように思える。


そして大連到着。


駅から出るために、ここでも切符と身分証のチェックのため人波が堰き止められ渋滞。
中国の駅が混雑するのは、人が多いからというよりも、公安のチェックが厳しいからだと実感した。


大連ユニロフトホステルというところに泊まった。
大連駅のすぐ近く(高鉄が主に止まる大連北駅からは離れていたが)で立地もよく、お洒落で清潔で作りのしっかりしたホステルだった。


ベッドもプライバシーにある程度配慮されていて、快適だったな。


東北地方最後なので、東北地方の名物餃子を食べた。10元だったかな。


店主がとてもフレンドリーな人で、スープをサービスしてくれた。
単に僕が日本人だというだけで、良くしてくれるなんて。中国人はなんだかんだ言って親切だ。


フライトは翌朝の8時だった。


格安航空並の料金で、短いフライトだけど一応機内食も出た。


日本が見えてきた。
監視されているような息苦しさを感じていたので、日本に帰れると思うとホッとしている自分がいた。


大阪はG20サミットの最中だったが、関空はそこまで警備が厳しいとは感じなかった。
もっとも、中国と比較しての話だが。


大阪ではまた西成のドヤ街のホテル東洋に泊まった。
ここは外国人向けのホステルとして改装された宿で、シャワーも洗面台もふんだんにあり、また清潔で居心地が良かった。一泊1500円くらいだったかな。


まあそれにしても西成という街はやっぱりひどいところで、僕は立ちションをしているおっさんを2度見かけたし、そのうちの一人がなんと、チャックからイチモツを露出させたまま歩いているのを見てしまった・・・笑
民度という点では西成は中国と大差はない。というか中国式の締め付けがない分西成のほうがアケスケで始末が悪いかもしれない。


あまり大阪で見たいものもなかったんだけど、天王寺動物園近くの公園を散歩したりした。


池に浮いた岩にカメ達が登って日向ぼっこをしていた。


黒門市場は外国人客で賑わっていた。
もちろん中国人が多かったんだけど、欧米人観光客も結構多かったな。
それにしても露店販売が結構高いんだが、中国人は平気で買ってて、まー金があるわな。


見るからに美味しそうだが、南寧あたりで同じようなものをもっと安く見て食べた自分としては、食指が動かなかった。


日本に帰ってきても中国人ばかりの黒門市場だった。
 

道頓堀近くの法善寺横丁は僕の好きな場所だ。


苔むした仏像がとても良かった。
日本では街なかの至るところに寺や神社があるけど、中国ではあまり見かけなかったんだよな。
やはり共産主義は宗教を抑圧する立場だからだろうか。日本のこういう生活と近いところに寺や神社がある文化というのは、やっぱりいいものだなと思った。